世襲の解釈、まず議論…元衆院議長・大島理森氏
2025年5月20日(火)5時0分 読売新聞
おおしま・ただもり 1946年生まれ。慶大卒。83年に衆院旧青森1区で初当選し、自民党幹事長、副総裁、衆院議長などを歴任した。2021年に政界引退。
[提言 皇統安定のために]<下>
衆院議長時代、江戸時代の光格天皇以来、202年ぶりとなる天皇陛下のご退位を実現する特例法の制定に関わった。
現在は未婚の女性皇族の方々が5人おられるが、今の皇室典範では、結婚されると、皇室を離れなければならない。そういう状況の中で2017年6月に特例法が成立し、付帯決議が行われた。付帯決議は、「安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等」の検討を求め、これに基づき、与野党が今議論を行っている。決議の最も大事な点は、安定的な皇位継承の確保を図ることだ。それが共通の認識であり、その基本を大事にしてほしい。
現在の議論を見ると、まず天皇陛下から秋篠宮皇嗣殿下、そして悠仁親王殿下への皇位継承はゆるがせにしないという合意はおおむね形成されていると思う。これについては私も同じ思いだ。
その上で、女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持することには賛成だ。ただ、配偶者と子どもが皇族の身分を持たないとなると、お立場が夫婦で別になる。本当にそれでよいのか、慎重に考えてほしい。
一方、養子縁組で旧宮家の男系男子を皇室に迎える案も議論されているが、「国民の理解が得られるだろうか」という思いを持つとともに、一般国民として長い間過ごされてきた方々に「皇族のお立場になってください」と言っても、すぐに対応できるだろうかと思慮する。
日本の皇室の伝統は「世襲」にある。憲法2条は「皇位は、世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する」としている。皇室典範は皇位継承資格を男系男子に限定しているが、憲法自体がそれを定めているわけではない。
憲法に規定されている世襲とは何なのか、各党で共通認識を持つために議論すればいいのではないか。世襲についての憲法解釈を冷静に話し合い、合意形成を図る努力をしてみてはどうだろうか。
石破内閣は、この問題にどう対応したいのか、明確な意思が見えてこないと感じている。議論がまとまり、皇室典範を改正することになれば、議員立法ではなく、政府が法案を提出する。最後は内閣が責任を負うということだ。自民党総裁である首相が、何らかのメッセージを衆参正副議長の下で行われている与野党協議に送ってもよい時期なのではないか。
天皇制は日本国としてのあり方を考える時に大事な柱であるという認識は、これからも維持していかねばならない。参院選が控えているが、ぜひ議論をまとめてほしいという思いで見守っている。