通夜の前に祖父の顔見に行った帰り道、歩道に座り込むずぶぬれの高齢男性を保護「運命だったのかも…」
2025年5月20日(火)15時0分 読売新聞
浅野署長(左)から感謝状を受け取る渋谷さん(8日、富山県警射水署で)
ずぶぬれのまま歩道に座り込み、震えて動けなくなっていた高齢男性を保護したとして、富山県警射水署は射水市、会社員渋谷千奈さん(21)に感謝状を贈った。渋谷さんは「人として当然のことをしただけ」と謙遜した。(吉武幸一郎)
渋谷さんは4月20日午後10時25分頃、自宅近くで母親が運転するミニバンに同乗中、市道交差点の角にあるコンクリート塀に、ぐったりともたれかかる男性を見つけた。この日は夕方に雨が降り、当時の気温は10度ほど。だが、男性はサンダル履きの上下スエット姿で、傘もなく、全身がぬれていた。
「えっ、大丈夫かな」。すぐに男性に近寄り、「大丈夫ですか?」「家どこですか?」と声をかけた。男性は目を開け、必死に口をパクパク動かすが、寒さで震え、まったく声が出せない様子だった。
母親はすぐに110番し、渋谷さんは「寒いよね、暖かいおうちに帰ろうね」と声をかけ続けた。母親は車に積んでいた寝袋を持ち出し、男性の体を温めた。
同署によると、男性は70歳代で市内在住。渋谷さんが見つける2時間前、家族が近くの交番に「行方がわからなくなった」と届け出ており、無事に家族の元に帰ったという。
8日の感謝状贈呈式で、浅野健一署長は「命に関わる状況だったので、早く見つけ、保護していただいて本当にありがたい」とねぎらった。
渋谷さんは「実は男性を見つけた前日の4月19日に父方のおじいちゃんが亡くなり、お通夜の前にもう一度顔を見ようと、おじいちゃんの家に寄った帰り道の出来事だった」と明かした。「優しくてみんな大好きなおじいちゃんだったからこそ、あの日に会いに行った。男性はおじいちゃんと雰囲気も似ていて、運命だったのかもしれない」と話した。
今回の出来事を踏まえ、渋谷さんは「困っている人がいたら、声をかけるのは当たり前のこと。とにかく無事でよかった。母親は車内の寝袋を持ってくるなど、迅速に対応していたので、私も相手の様子を見て、最善の判断ができる人になりたい」と話していた。