航空自衛隊T4練習機の墜落から1週間、捜索続き観光や農業に影響懸念…原因特定は長期化の可能性も

2025年5月21日(水)17時2分 読売新聞

 航空自衛隊の練習機「T4」が愛知県犬山市の入鹿いるか池に墜落した事故から21日で1週間となった。現場では搭乗員2人と機体の捜索が続き、観光や農業への影響を懸念する声が出ている。事故機には高度や速度を記録する「フライトデータレコーダー」が搭載されておらず、原因究明は難航しそうだ。

 14日の事故後、空自などは24時間態勢で捜索を実施。21日は約480人で臨み、ダイバーや水中ドローンも投入する。これまでに搭乗員とみられる体の一部を収容したほか、機体の一部を回収。水中でエンジンとみられる部品も発見し、引き揚げ方法を検討している。

 影響は各方面に広がる。池に隣接する観光施設「博物館明治村」は捜索の拠点となり、21日まで臨時休業。修学旅行や施設内での結婚式もキャンセルされた。

 事故機から漏れた油の影響を心配する声も。入鹿池は全国最大規模の農業用ため池で、6月1日からは田植えで大量の配水が予定されている。防衛省は吸着マットやフェンスを使って油の拡散を防ぎ、水質検査も行う。地元で農業法人を営む小川素央さん(43)は「検査の結果が悪くないことを願う」と話した。

 空自は事故を受け、保有するT4約200機の飛行を見合わせている。T4を使う曲技飛行隊「ブルーインパルス」も対象だ。大阪・関西万博の開幕日(4月13日)に合わせた展示飛行が天候不良で中止になった後、地元の強い要望を受けて日程を再検討していたが、それも「見直しをしている」(中谷防衛相)という。

 T4は戦闘機や救難機の操縦士を養成する課程(約54週間)でも使われている。空自幹部は「飛行見合わせが長引けば教育課程に影響が出かねない」と漏らした。

 事故機は14日午後3時6分頃、新田原にゅうたばる基地(宮崎県)に向けて小牧基地(愛知県)を離陸。約2分後、約13キロ北東の入鹿池付近でレーダーから消えた。約1分間安定的に上昇した後、高度1400メートル付近で突然、高度を失い始めた。

 入鹿池の近くに設置されたカメラには、墜落直前の機体が映っていた。ほぼ垂直に落下し、その後、約45度の角度に針路を変えたように動いたという。直後、大きな水柱が上がった。

 緊急事態を知らせる交信や信号は確認されていない。戦闘機パイロットを務めた川波清明・元空将補は「無線で緊急事態を伝えるにも数秒はかかる。その余裕もないほどの事態が起き、機体の姿勢の立て直しに集中していたのではないか」とみる。

 空自は回収した機体の残骸を小牧基地に移して分析している。1989年に製造された事故機にはフライトデータレコーダーがついておらず、原因特定は長期化する可能性も。内倉浩昭・航空幕僚長は事故当日の臨時記者会見で「飛行経路や地上と航空機のやり取り(の分析)など、あらゆる手法を使って原因を追究していきたい」と語った。

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