住宅火災「3階に主人が」…近所の住民が駆け上がり、階段の前で倒れていた高齢男性を抱えて救出
2025年5月28日(水)15時34分 読売新聞
救出時の状況を振り返る小暮さん(右)と菅原さん(26日、川崎市役所で)
神奈川県川崎市宮前区で3月に起きた住宅火災で、建物内で意識を失っていた70歳代の住民を救出した男性会社員2人に26日、福田紀彦市長から表彰状が贈られた。市によると、人命救助の協力者への市長表彰は20年ぶり。
表彰を受けたのは、近所に住む小暮正樹さん(59)と菅原毅さん(44)。火災は3月18日夜、70歳代の夫と60歳代の妻が暮らす木造3階建て住宅で発生した。帰宅途中の小暮さんは異臭に気付いて周辺を見回し、3階の窓越しに炎が見えた住宅の玄関前に駆けつけた。
鍵がかかっていたためドアをたたいて声をかけたが、返事はない。何度も呼びかけているうちに3階の窓ガラスが割れ、煙が噴き出した。間もなく玄関の鍵が開かれ、意識がもうろうとした妻が出てきた。小暮さんが「まだ誰かいますか」と聞くと、「3階に主人が」と返事があった。
小暮さんが3階に駆け上がると、夫が階段の前で倒れていた。消火は諦め、引きずって運び出すことにした。そこに向かいに住む菅原さんが駆けつけ、2人で体を抱えて救出した。
火災は3階の約26平方メートルを焼く半焼で、電気のコンセントから出火したとみられている。夫は搬送時に意識はなく、気道に重度のやけどを負って3週間入院した。
市役所で行われた表彰状の贈呈式で、小暮さんは「助けなければという思いだけだった」、菅原さんは「お孫さんがよく訪ねてくるお宅なので、ほかにも人がいるのではないかと考えて駆けつけた」と話した。
福田市長は「2人の勇気にはびっくりした。尊い命を救っていただき、感謝している」とたたえた。望月広太郎消防局長は「救助する人に危険が及ぶ場合もあるので、状況を見極めながらできる範囲で行動してほしい」と話している。