「百日紅」はなぜ「サルスベリ」と読むの?

2020年9月11日(金)5時0分 ウェザーニュース

2020/09/11 04:57 ウェザーニュース

「猿も木から落ちる」という諺(ことわざ)がありますが、よりいっそう、猿が木から滑り落ちそうな木があります。その木の名前は「サルスベリ」。そのまんまですね。
花期は一般的には7〜9月なので、夏から秋にかけての花といえます。街路や公園、お寺や神社の庭などに植えられているので、なじみ深い樹木です。
サルスベリは、漢字では「猿滑り」「百日紅」「紫薇」などと書きます。「猿滑り」は、樹皮がツルツルしていて、猿ですら滑り落ちてしまいそうな木であるため、「紫薇」は「しび」とも読み、サルスベリの漢名です。
では「百日紅」は、どうして「サルスベリ」と読むのでしょうか。一説では、ある悲しい物語が関係しています。

「百日紅」に隠された、悲しい恋の物語

「百日紅」は「ひゃくじつこう」とも読みます。朝鮮半島のある村では、昔、ある風習がありました。龍神への生け贄として、若い娘が捧げられていたのです。
あるとき、その国の王子が村を通りかかります。娘が生け贄にされそうな姿を見た王子は、龍神と戦うことを決意します。王子は勇猛果敢に挑み、龍神を討ち取りました。娘を救い出すと、二人の胸の内には、恋心が芽生えました。
しかし王子は、ひとまず村を去らなければなりません。「百日後には必ず戻る」と言い置いて、王子は旅立っていきました。ところが、約束の日、村に戻った王子は愕然とし、たいそう悲しみました。娘が亡くなっていたのです。
嘆き悲しむ王子。しかし、娘は戻ってきません。
やがて、娘のお墓がある場所から、1本の木が生え、花を咲かせました。その花は、愛しき人を今か今かと待つかのように、百日間、咲き続けたといいます。
百日紅には、こうした悲恋の物語が隠されているのです。

サルスベリは百日間、咲き続ける!?

「百日紅」という名称は、この木の花がおよそ百日もの間、咲くために付けられたという説もあります。長く咲き続けるために、百日紅と名づけられ、和名では「サルスベリ」と読むのですね。
花の色は濃淡それぞれの紅や白、淡い紫などですので、そこから「百日紅」「紫薇」と名づけられたことも想像できます。
サルスベリの花言葉には「雄弁」「饒舌」「あなたを信じる」などがあります。「あなたを信じる」は上述の悲恋物語が由来です。
地域などによりますが、花が咲き誇っているサルスベリもまだたくさんあります。
通勤や通学、散歩や買い物の道すがら、花言葉などを思い出しながら、サルスベリの花々に目を向けてみてはどうでしょうか。いまだ続くコロナ禍ではありますが、少しの時間、花と物語の世界に入っていけるでしょう。

参考資料など

『ときめく花図鑑』(文/中村文、写真/水野克比古、監修/多田多恵子、山と渓谷社)、『花言葉・花事典』(編者/フルール・フルール、池田書店)、『想いを贈る 花言葉』(監修/国吉純、ナツメ社)、『色と形で見わけ散歩を楽しむ花図鑑』(監修/小池安比古、著者/大地佳子、写真/亀田龍吉、ナツメ社)、『散歩の花図鑑』(著者/岩槻秀明、新星出版社)

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