地球温暖化のウソ? ホント?(1)本当に地球は温暖化している?

2023年12月3日(日)5時10分 ウェザーニュース

2023/12/03 05:20 ウェザーニュース

今年の夏(7月から9月)は3か月連続で、日本の月平均気温が1898(明治31)年の統計開始以降で最も高くなりました。
2023年の高温は日本だけでなく、世界各地で報告されています。EU=欧州連合の機関であるコペルニクス気候変動サービスによると、地球の平均気温は6月から10月まで5か月連続で記録的な高さとなっています。
これはやはり「地球温暖化」による現象の一つなのでしょうか。気候変動問題の専門家である江守正多さん(東京大学 未来ビジョン研究センター教授/国立環境研究所 上級主席研究員)に、Q&A形式で質問してみました。

Q1/地球は本当に温暖化しているの?

◆A/地球は温暖化傾向にあります。
1950年以降の世界平均気温のデータを見ると、世界の平均気温は上がったり下がったりしながらも、上昇傾向にあることが確認できます。
「世界平均気温」といっても、ヒートアイランド現象で、都市部の気温だけが上がっているんじゃないの? と思う人もいるかもしれませんが、そうではありません。

産業革命前から現在までの世界の気温上昇分布図を見ると、データのあるところは、太平洋、大西洋、インド洋などの海上を含めて、世界中のほとんどの地域の気温が上がっています。
こうしたことから、地球全体が温暖化傾向にあるといえます。

Q2/地球は大昔から寒冷期と温暖期を繰り返していて、そのうち自然に寒冷期が来るんじゃないの?

◆A/地球は今、間氷期(かんぴょうき)で、次に氷期(ひょうき)に入るのは5万年後と予測されています。
地球は過去100万年ほどの間に、寒い「氷期」と暖かい「間氷期」を繰り返してきました。(「氷河期」という用語が使われることもありますが、地球の一部に氷河がある「氷河時代」の意味との混同を避けるため、ここでは「氷期」という言葉を使用します)。
寒冷で氷河が大規模に拡大する時期が氷期で、氷期と氷期の間の暖かい時期は「間氷期」といいます。南極の深部にある氷を調査することなどで、過去の地球の氷期と間氷期の歴史を知ることができます。
上記の方法で過去およそ60万年間の地球の気温を調べたところ、地球は氷期と間氷期の変動を約10万年単位で繰り返していることがわかりました。現在の地球は間氷期です。

氷期と間氷期が一定のリズムで起こる原因は「ミランコビッチ・サイクル」とよばれる天文学的な現象です。この現象を解明したセルビアの地球物理学者、ミルティン・ミランコビッチ(1879〜1958)にちなむ名称です。
氷期と間氷期がなぜ起こるかというと、一つには、地球の公転の仕方が関係しています。地球は自転しながら、太陽の周りを回っています(公転しています)ね。その軌道はやや楕円形を描いていますが、10万年から数十万年の周期で、その楕円形が強まったり弱まったりしています。弱まる時期は完全な円形に近づく時期です。
また、地球の自転軸は傾いていますが、その傾き度合いと、どちら側に傾いているかという向きが、それぞれ数万年単位で変化しています。
これらの効果で地球が受け取る日射が変化することが引き金となり、地球は氷期と間氷期を繰り返しています。
じゃあ、まもなく氷期になって、地球全体が寒くなるんじゃないか、と考える人もいるかもしれませんが、ミランコビッチ・サイクルの計算から、次に氷期に入るのは5万年後と予測されています。人の一生を考えると、果てしないほど、遠い未来ですね。

Q3/地球の気温って、どうやって決まるの?

◆A/太陽エネルギーの吸収と赤外線の放出のバランスによって保たれています。
地球には、太陽からエネルギーが届いています。そのうち、およそ7割のエネルギーを地球は吸収しています。ただし、吸収したエネルギーとほぼ同じ量を、赤外線の形で宇宙に放出しています。
基本的には、太陽エネルギーの吸収と放出のバランスによって、地球の気温は決まります。
赤外線を放出する際に重要な役割を担っているのは、温室効果ガスです。地球の表面を温室効果ガスが覆っていることで、赤外線が宇宙に逃げにくくなり、地球は生物にとって、住みよい環境になっています。

もし温室効果ガスがまったくなければ、世界の地表の平均温度は約−19℃になると考えられていますが、温室効果ガスがあることで、14℃ほどに保つことができています。過去1万年間ほど、地球の気温はおおむね平均14℃前後で推移しています。
温室効果ガスというと、二酸化炭素(CO2)を思い浮かべる人が多いでしょう。ほかには、メタンガスやフロン類を思い浮かべる人もいるでしょう。
しかし実は、二酸化炭素以上に温室効果のあるガスがあることがわかっています。それは、水蒸気です。
水蒸気や二酸化炭素などの温室効果ガスのおかげで、生物にとって、地球は住みよい環境が保たれていますが、近年、地球の気温は上昇しています。その主な原因は人間の活動にあるのですが、それについては、次回以降に詳しく解説していきます。
————————
長い間、大きく変わることのなかった地球の気温が、この100年ほどで明らかに上昇していることは、私たちの日常生活からも実感できます。未来の地球を守るために、まずは気候のしくみに関心を持ち、ウェザーニュースといっしょに考えていきませんか?
監修/江守正多
東京大学 未来ミジョン研究センター 教授。国立環境研究所 地球システム領域 上級主席研究員

ウェザーニュース

「地球」をもっと詳しく

「地球」のニュース

「地球」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ