いつもの海苔と何が違う? 冬に出回る「新海苔」の秘密

2023年12月9日(土)5時10分 ウェザーニュース

2023/12/09 05:04 ウェザーニュース

最近おにぎりが大ブームとなり、おにぎりに巻く海苔にも注目が集まっています。海苔は海水温が下がってくると生長が進み、11月頃から収穫が始まります。
これからは収穫したての新海苔で作った乾燥海苔(乾海苔)や、それを焙煎した海苔(焼海苔)が出回り始めますが、旬や味の変化などについてはあまり知られていないようです。
いったい普通の海苔と何が違うのでしょうか。東京築地の海苔専門店、伊藤海苔店の四代目 伊藤信吾さんに、これからが収穫と加工の最盛期を迎える新海苔について伺いました。

海苔の歴史は1300年前から

日本人と海苔の歴史は古く、1300年前にはすでに税の一種として海苔が存在していたそうです。
「江戸時代になると東京湾で海苔の養殖が始まりました。しかし、海苔のライフサイクルがわからず、海苔の種を取る『採苗』も自然任せだったため、生産量が不安定で『運草』と呼ばれる状態でした。
その後、1949年に海苔のライフサイクルが解明されたことで、人工的に採苗し養殖する技術が開発されました。これにより全国各地で養殖が可能になり、安定的に大量に生産されるようになったのです」(伊藤さん)

「新海苔」は美味? ふつうの海苔との違いは?

網を持ち上げ海苔を刈り取る様子

養殖された海苔は11月頃から収穫が始まるそうです。
「海苔は種を海苔網に着生させてから、海水温が下がり始める10月頃に海苔網(秋芽網)を張って養殖を始めます。そして、全国的に11月から収穫が始まりますが、これが初摘みといわれる新海苔です。
新海苔は、通常出回る海苔より味が良いとされ、香り高く柔らかいものを味わうことができます。そのため、高級品として出回ります。
その後、何度か摘み取りを繰り返していくと、海苔の繊維がだんだん固くなっていきます。そこで収穫を終えた秋芽網を、冷凍しておいた網に張り替えて翌年の4月ぐらいまで摘み取れるようにします。
とはいえ、やはり張り替え前である、秋芽網の初摘みの新海苔は口に入れるとふわっととろけるように柔らかく、ほんのりとした甘味としっかりした旨味が感じられます」(伊藤さん)

今年の生育はおおむね順調

昨年は一大産地の有明海が大凶作だったそうですが、今年はどうなのでしょうか。
「昨年、有明海の海苔は降雨量が少なすぎて、海苔の生育に欠かせない川から流れる栄養が海にいかなくなり、また赤潮も頻発したことで大凶作となりました。
養殖量トップの佐賀県がこの状態だったため、海苔の価格も高騰しましたが、今年は今のところ順調に生育しているそうです。初摘みの新海苔が出回るのも間もなくです」(伊藤さん)
海苔は細胞壁が固く、加熱すると壊れるものの、生の状態だと日本人だけが持つ消化酵素でしか消化分解できないという不思議な食べものでもあるそうです。また食物繊維やビタミン類、タンパク質なども含む健康効果のある食品でもあります。
日本人が1000年も前から食べている海苔。これから出回る新海苔をじっくり味わってみませんか。
取材協力
有限会社伊藤海苔店(https://about.maruni-nori.com/)

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