調査で判明、育成上手のマネジャーになるための「黄金ルート」とは?

2024年2月1日(木)4時0分 JBpress

「職場がゆるくて、成長実感がないから辞めます」。これまでの育て方が通用せず、会社を離れようとする若手社員に、上司はどう向き合えばいいのか?本連載は、リクルートワークス研究所の主任研究員が、独自調査を通じてZ世代の実像に迫り、効果的な育成ポイントを解説した『なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか』(古屋星斗著/日本経済新聞出版)から、内容の一部を抜粋・再編集。若手社員の定着・育成のヒントを探る。

 第3回は、若手社員の育成が「うまくいっている」と感じているマネジャーに見られるコミュニケーションの特徴について解説する。

<連載ラインアップ>
■第1回 超大手企業の花形部門で働く20代社員が発した「離れ小島」の意味とは?
■第2回 総合電機メーカー入社3年目の若手が、副業先の地方企業で得た手ごたえとは?
■第3回 調査で判明、育成上手のマネジャーになるための「黄金ルート」とは?(本稿)
■第4回 マネジャー歴10年、大手企業社員が気づいた、若手育成の重要なヒントとは?

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③褒めるだけでなくフィードバックする

 調査では、部下の若手を週に1回以上「褒めたりたたえたり」するマネジャーは67%に達していたが、それと比べて週に1回以上「フィードバックや指導をしている」マネジャーは同48%と限定的であった。 

 つまり、「たくさん若手を褒めたりたたえたりしているが、フィードバックや指導はあまりしていない」マネジャーが存在している。

 図表7—11に整理している。実に、フィードバックや指導が低頻度(月に1回程度以下)で、褒めたりたたえたりが高頻度(週に1回程度以上)のマネジャーが全体の30・4%存在していた。

 若手の部下とのコミュニケーション量という観点で、多くなれば褒めたりたたえたりもフィードバックや指導も増えるだろうから、両方低頻度(23・7%)、または両方高頻度(36・3%)が比較的多数存在しているだろうというのは予想がつくが、若手に「褒めたりたたえたり」だけが多いマネジャーがこれほど多いのは予想外だった。

 逆に、「フィードバックや指導」だけが多いマネジャーは少数派(9・6%)であった。もはや、“厳しい、師のような上司が最後の最後で褒めてくれたことに、若手がガッツポーズする”といった、漫画やドラマなどでありがちなシーンは日本の職場では希少なのだろう(正直、少し寂しい気もする)。

 そのスタイルの違いが若手育成の成功実感と関係している。

 育成成功実感率では、「両方高頻度」が22・1%とやはり最も高く、「両方低頻度」が9・0%と著しく低いが、「フィードバック低×褒める高」では14・3%と、「両方高頻度」と比べると大きな差がついている(1%水準で有意な差)。もちろん、褒めないよりは褒めた方がいいが、それだけでは十分ではない。若手育成の成功率で言えば、褒めるだけのマネジャー(14・3%)より、フィードバックや指導だけ(16・4%)のマネジャーの方が高いのだ。

 まず“褒める”。さらに、“褒めるだけ”から“フィードバックもしっかりする”マネジャーになることが若手育成上手のマネジャーになるための黄金ルートなのだ。それは特に、キャリア不安が大きいハイパフォーマー層の若手にとって重要なポイントになる。

 褒めるだけのマネジャーになっていないか。褒めることをフィードバックと勘違いしていないか

 これがいま浮上しているポイントなのだ。

 なお、若手の部下を褒めることもフィードバックや指導も、両方高頻度でしているマネジャーが具体的にどんな機会を活用して若手を育てているのか、参考になるデータを紹介する。

1位:業務で用いる、技能やスキルについての教育・訓練
 両方高頻度のマネジャーの59・5%が週1回以上実施、他方で“褒めるだけ”のマネジャーでは同18・2%。業務に関係するスキルで十分でないものがあれば指導のチャンスだ。スキルを獲得し業務で使えるようになれば、しっかり褒める機会にもなる。

2位:業界知識やビジネス教養といった社会人としての基礎知識の提供
 両方高頻度のマネジャーの51・9%が週1回以上実施、他方で“褒めるだけ”のマネジャーでは同17・0%。業務で用いる技能やスキルと比べれば少ないが、その会社・職場での経験が相対的に乏しいことは若手の共通点でもあり、業界知識が足りないと若手が感じたタイミングにもチャンスがある。

3位:人事評価に基づいた、仕事で改善すべき点についてのコミュニケーション
 両方高頻度のマネジャーの50・6%が週1回以上実施、他方で“褒めるだけ”のマネジャーでは同15・5%。3番目に活用されていたのが人事評価のタイミングだった。

4位:今後のキャリアづくりに関するアドバイス
 両方高頻度のマネジャーの34・1%が週1回以上実施、他方で“褒めるだけ”のマネジャーでは同10・6%。業務や評価を超えて、今後のキャリアづくりになるとアドバイスの難度がぐっと上がるのだろう、褒めてフィードバックもするマネジャーでも週1回以上実施率がぐっと下がっていた。

 この順位を考えれば、褒めるだけのマネジャーから、褒めてフィードバックもするマネジャーになるルートは、日々の業務に即した技能・スキルのフィードバックから始めて、最終的に今後のキャリアづくりに関するアドバイスまでできたら、かなりの育成力上級のマネジャーであると言えるかもしれない。

 いずれにせよ、心理的安全性もキャリア安全性も高い職場をつくるために、褒めるだけのマネジャーをどう脱出するのかがポイントなのだ。

× 褒めたりたたえたりするだけ
〇 褒めることとフィードバックは別物と心得たうえでフィードバックを行う(業務上のフィードバックから、若手育成上級者は今後のキャリアづくりに関するフィードバックへ)

<連載ラインアップ>
■第1回 超大手企業の花形部門で働く20代社員が発した「離れ小島」の意味とは?
■第2回 総合電機メーカー入社3年目の若手が、副業先の地方企業で得た手ごたえとは?
■第3回 調査で判明、育成上手のマネジャーになるための「黄金ルート」とは?(本稿)
■第4回 マネジャー歴10年、大手企業社員が気づいた、若手育成の重要なヒントとは?

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筆者:古屋 星斗

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