ビジネスの成功に必要な能力がすべて手に入る…脳科学者が「これだけはやっておけ」と力説する朝習慣

2024年2月23日(金)13時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

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ビジネスの成功には何が必要か。脳科学者の茂木健一郎さんは「身体を鍛えるのがいい。職責やプレッシャーに耐えられるメンタルを形成し、論理的思考力、判断力などを養うことができる」という——。(第3回/全3回)

※本稿は、茂木健一郎『一生お金に困らない脳の使い方』(リベラル社)の一部を再編集したものです。


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■ビジネスでは「知人の知人」が大事なワケ


お金に関する人間関係は、関係性の頻度、相互性、強さ、親密さなどからストロングタイ(強い結びつき)とウィークタイ(弱い結びつき)に分類することができます。


不況を乗り切って経済が成長したり、新しいお金を生み出すためのイノベーションを起こすためには、家族や親友、あるいは同じ職場の同僚のような強いストロングタイよりも、ちょっとした知り合いであったり、「知人の知人」のような弱いウィークタイのほうが重要なのです。


ウィークタイ理論においては、自分とは異なる文化や業界に属している人たちと、いかに薄く広くつながっていられるかということが、実はその人のポテンシャルになるといわれています。


私は最近、ビジネス関係の会議に行ったときに居並ぶ立派なおじさんたちに聞いていることがあります。それは、「皆さんの中で、AKB48のメンバーを直接知っている方はいらっしゃいますか」というものです。しかし、今まで「私はAKB48を直接知っています」という人に巡り合ったことはありません。


■脳がワクワク感を演出する


もし、そのような人がいたとすれば、私はこういおうと思っています。それは、「あなたが二つのコミュニティを結ぶ補助線になることができるのです」ということです。そのようなところから何か新しいものが生まれる可能性があるわけです。


多くの仕事が、ウィークタイの結びつきから生まれるものです。社会的に強いコミュニティや同じようなゾーンにいると、そこの中で脳が満足してしまいがちです。これが「安定」と呼ばれているものです。


ところが、ちょっと離れた人であったり、まったく違う分野の人と仕事をすることで脳は「ワクワク感」を演出し、その結果として、新しいお金を生み出したりイノベーションを起こすことができるようになるのです。


■成功者ほど運動を好む脳科学的理由


成功者たちの共通点の一つに、「フィジカルストレングス(身体的な強さ)」というものがあります。お金を稼げば稼ぐほど、その職責やプレッシャーも大きくなるわけですが、それに耐える心の強さを支えているのが強靭な体なのです。


脳科学的な知見から述べれば、運動やトレーニングは脳に良い刺激を与え、神経伝達物質のバランスを整えてくれます。体が常に健康であることで得られるメリットには、次のようなものが挙げられます。


・沈着冷静で平常心を保つことによって論理的思考力が身につく
・いざというときの選択や決断を誤らない判断力が身につく
・自分の体験やイメージを正確に蓄えることができる記憶力が養われる
・自分が逆境の立場に置かれても粘り強く前向きに考えるポジティブ思考が身につく
・エネルギッシュでアクティブな行動力が芽生える


これらの特性をひと言でいえば、「脳のセルフコントロール力が高まる」ということです。運動やトレーニングの効果はこれだけではありません。


脳の注意システムが活性化することによって、ストレスから解放され、やる気と集中力を高めてくれるのです。


写真=iStock.com/baona
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私自身、できる限り毎朝ジョギングをするように心がけているのですが、ジムに通わずとも自分のペースでできるトレーニングから始めるのも一つの方法です。


日々のトレーニングは確実に脳と体を活性化して、あなたのお金に対する鋭い感覚を高めてくれるはずです。


■働きがいを高めるために必要なこと


ある、脳科学的におもしろい実験があります。それは、「認知的不協和」というものです。


この認知的不協和とは、自分の気持ちや経験にそぐわない状況に置かれた場合、居心地の悪さを避けようとして、自分を納得させられるように自分の状態を正当化するということが起きる状況を表す社会心理学用語です。


例えば、単調な仕事を報酬の高いグループと報酬の低いグループに同時にやらせると、次第に報酬の高いグループが不平不満をいい始めるという研究結果があります。


報酬の低いグループは自分の中で「なんでこれだけしかお金をもらっていないのに、こんなにつまらない仕事をやっているのだろう」と思います。すると、自分がつまらない仕事をやっているという事実と報酬が少ないという事実が矛盾するわけです。


その矛盾を解消する方法としては二つしかありません。一つは報酬を上げてもらうこと。そしてもう一つは、この単調でつまらない仕事をおもしろいと思うことです。


しかし、報酬を上げてもらうということは現実的に難しいので、「自分がやっているこの仕事は価値があることなんだ」と思うようになるのです。


■報酬が高くても不満は出る


一方で、報酬の高いグループは「自分はこれだけのお金をもらっているからこのつまらない仕事を我慢してやっているんだ」というように考えてしまうので、不平不満を平気で口にしてしまうのです。


このようなことからも、お金がいくら儲かったかというのは結果でしかないということを理解していただけたのではないでしょうか。


いい仕事をしたという満足感が先にあって、その後からついてくるものとしてお金があるのです。雇用を生み出す企業側にとっても、ただ給料を上げることだけで従業員の満足が得られるわけではありません。


お金だけではなく、従業員の働きがいということを考えて、仕事の設計や職場のあり方を追求していくことがすごく大事なことのように感じます。


■仕事の満足度はお金では買えない


いつの時代においても、人材育成は経済成長戦略の核になっていきます。一般的な経済学の理論で雇用を考えれば、普通は皆、より報酬が高い職業につきたがると思われがちですが、世の中の雇用の仕組みというのはそれほど単純ではありません。



茂木健一郎『一生お金に困らない脳の使い方』(リベラル社)

アニメーターというのはすごく給料が低いものです。それでも皆、やりがいを持って喜んでやっているわけです。


一方で、伝統的に金融はすごく給料が高いといわれています。実際にファンドマネジャーをやっている人はボーナスが何億円から何十億円という世界です。ところが、皆が皆ファンドマネジャーをやるかといえばそうではないのです。


人間の脳の中では、仕事のやりがいに対する満足度指数があります。必ずしもたくさん稼げるだけがやりがいだと感じるのではありません。アニメーターや芸術家などは、貧乏でもやりがいに対する満足度が高いので、脳は不幸やストレスをあまり感じないのです。


東京芸術大学では、例えば油画専攻は倍率50倍の狭き門なのですから、アートというものはやはりそれだけの魅力というか、魔力があるのです。


彼らはピカソとか、今の若者の憧れでいえば会田誠さんや宮崎駿さんを目指して入っていくわけです。ビートルズにしても、最初はバンドでお金を稼げなかったのですが、自分が熱狂できることをただひたすら追いかけているうちに、あれだけのトップスターになったということを歴史が証明してくれています。


■お金よりも大事なのは「熱狂」


現在では、研究の分野でも、いくら博士号を取ったからといっても、引く手あまたの就職先があるわけでもありませんし、一流大学に「栄光の頂点」のような感じで入学しても、将来が約束されるわけではないのです。


このようなことからも、仕事の満足というのは決してお金で買えるものではないということを認識するべきだと思います。


仕事のおもしろさ、やりがいというものは自分で決めるものです。関連産業まで含めれば、自分の夢をかなえる選択肢はたくさんあるわけです。


一人ひとりの仕事の選び方においては、お金も現実的には大事ですが、それよりも自分が熱狂できることは何かということを基準にしたほうが、結果としていいことになると私は信じています。


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茂木 健一郎(もぎ・けんいちろう)
脳科学者
1962年生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学院理学系研究科修了。クオリア(感覚の持つ質感)を研究テーマとする。『脳と仮想』(新潮社)で第4回小林秀雄賞を受賞。近著に『脳のコンディションの整え方』(ぱる出版)など。
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(脳科学者 茂木 健一郎)

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