1分、3分、5分の使い方を知っているか…和田秀樹「頭のいい人がやっている忙しい大人のための勉強法」

2024年3月1日(金)14時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ooyoo

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効率のいい勉強法は何か。医師の和田秀樹さんは「1日の中で有効に使われていない隙間時間は、実はかなりある。朝から晩まで自分がその時間に何をしていたかを記録すると、無駄な時間がたくさんあることが見えてくるので、そうした細切れ時間にそれぞれ何ができるかを考えるといい。例えば1分あれば、『簡単なメールの返信をする』『短い文章に目を通す』『単語をひとつ覚える』などいろいろなことができ、3分なら話すだけで400字詰め原稿用紙3枚分ほどの文字量になる」という——。

※本稿は、和田秀樹『頭がいい人の勉強法』(総合法令出版)の一部を再編集したものです。


■「ないように見えてある」時間の探し方


「時間がない」というのは現代人の口ぐせです。しかし、果たして本当に「ない」のでしょうか。


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仮に1日12時間働かされるブラック企業に勤めているとして、通勤に片道1時間かかったとすると、仕事にとられる時間は14時間。睡眠を7時間とったとしても、食事や風呂などの時間を差し引いて、1日あたり2時間程度は自由に使える時間があることになります。


さらに言えば、通勤の往復時間も活用することができます。


いまのご時世、スマートフォンやタブレットなどを使って、移動しながら勉強することは当たり前にできます。


通勤電車の中で勉強するのは無理ということなら、普段家で見ているテレビ番組などを録画しておき、スマートフォンやタブレットを使って電車の中で見るようにすれば、家でテレビを見ていた時間を勉強時間にスライドさせることもできます。


このように、時間は「ないように見えてある」ものですし、工夫しだいでつくれるものでもあります。


■勉強量を増やす2つの方法


勉強量を増やしたいなら、その方法は2つしかありません。


ひとつは単位時間あたりにできる勉強量を増やす、つまり効率を上げること。


もうひとつは、1日の中で勉強に組み入れられそうな隙間時間を見つけるなどして、時間そのものを増やすことです。


①時間あたりの効率を上げる

後述しますが、時間をつくるために睡眠時間を削ることは避けるべきです。必然的に、時間そのものをつくることには限りがあります。


意識したいのは、時間あたりの効率を上げることです。勉強時間を3時間から6時間に増やすのは至難の業ですが、3時間で6時間分の勉強をすることは、やり方しだいで可能です。


和田式の暗記数学は、1時間わからない問題を考えるのではなく、5分考えてわからなければ答えを見て覚えるというものです。そうすれば1時間で6問以上身につけることができる。つまり、1時間が6倍になるということです。このような工夫をしなければ、受験で勝つのは難しいのです。


大人の勉強においても、単位時間あたりの勉強量を増やすことを考える必要があります。大切なのは、勉強の時間より量なのです。


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■勉強量を増やす「休み」の力


また、「時間より量」を意識するなら、ぶっ続けで勉強するより、適度に休みを入れるほうが効率的です。


アメリカに留学したとき、私が驚いたことのひとつは、アメリカの医師は50分働いたら10分休みをとることでした。そのほうが50分の仕事の効率が上がると考えられているのです。


日本の学校でも、1時間弱の授業時間の合間に10分程度の休み時間を入れているのは、そのほうが集中力を保ちやすいということが経験的にわかっているからです。


1週間のうちに1日でも休みをとることも大切です。かつてのアメリカの奴隷制度においてさえ、奴隷には1週間に1日休みが与えられていました。休みなく働かせると心身を壊すリスクが高くなったり、作業効率が落ちて、相対的に労働量が下がったりするからです。


休みを入れることも含めて、効率的な時間の使い方を意識することが必要です。


②隙間時間を徹底的に探す

1日の中で有効に使われていない隙間時間は、実はかなりあります。その活用は、まず隙間時間を見つけるところから始まります。


そのヒントになるのが、2007年に話題になった「レコーディング・ダイエット」です。


評論家の岡田斗司夫氏が提唱したこのダイエット法は、朝から晩まで自分が食べたものをひたすら記録するというものです。それによっていかに自分が「無駄食い」をしているかを自覚し、食生活の改善につなげることができます。


同じように、朝から晩まで自分がその時間に何をしていたかを記録すると、無駄な時間がたくさんあることが見えてきます。


朝6時45分に起き、15分ダラダラして、トイレに2分、というように、分単位で逐一書き出します。これを数日行えば、おおよその傾向がわかります。この作業によって日々の無駄な時間が可視化され、その中で勉強に転化できる時間がどれくらいあるかもはかることができます。


■1分でも勉強はできる


次に、見つけた隙間時間でそれぞれ何ができるかを考えます。


たとえば1分、3分、5分、10分、30分といった細切れ時間があったら、それぞれ何ができるでしょうか。


「1分なんて何もできない」と思うかもしれませんが、実は1分というのは、思っている以上に長い時間です。


私はラジオ番組に出演していたとき、ラジオで時報まで1分くらいしか時間がなくても、ひとつの話はできました。テレビの場合はもっと短く、1分以上もコメントするのはまず許されません。


テレビの情報番組などを見ていれば、ほとんどのコメンテーターは1分もしゃべっていないことに気づくと思います。5分のコーナーで、そのうち2〜3分はVTRを流し、それを受けて4人のコメンテーターがそれぞれ話すとなれば、1人あたりの持ち時間はせいぜい数十秒というところです。


1分あれば、「簡単なメールの返信をする」「短い文章に目を通す」「単語をひとつ覚える」など、いろいろなことができます。


3分ともなると、さらにいろいろなことに使えます。3分話すだけでも、400字詰め原稿用紙3枚分ほどの文字量が必要になりますから、かなり大変です。結婚式のスピーチでも、5分話されたら相当長いと感じるはずです。


文章を読むスピードでいうと、1分でだいたい原稿用紙2枚分(800字)の文章が読めるはずです。週刊誌1ページの文章量が1200字程度ですから、1ページを読むのに1分半はかからないと思います。4ページの特集でも、5〜6分もあれば読めるでしょう。


このように、短い時間にできることは、思いのほかたくさんあります。もちろん個人差はありますが、それぞれの時間に自分は何ができるかをつかんでおくと、時間が空いたときにそこに組み込んでいくことができます。


まず、使える時間がどれぐらいあるかを知り、次にその使い道を考えます。たとえば、朝の通勤時に電車を待っている時間が毎朝5分あるなら、新聞でも週刊誌でも、その5分で読めるものを用意して読む。


あるいは資格試験の勉強なら3問解くとか、前日にやったことの復習をする。10分の空き時間があれば企画書の手直しをする、30分あれば本を20ページ読む、というふうに、隙間時間を有効利用することを考えてみてください。


■「朝の脳」と「夜の脳」を使うタイムリー勉強法


たとえば朝と夜に1時間ずつ勉強時間がとれたとして、どちらも同じことをすればいいかというと、そうとは言えません。


最近の脳科学の研究で、人間の脳の特性は時間帯によって違うことがわかってきています。朝と夜では脳の働き方が異なるので、それに合わせた勉強をするのが合理的です。


まず明らかなのは、疲れれば疲れるほど脳の働きは悪くなるということです。脳がもっとも疲れていない時間帯といえば、睡眠をとったばかりの朝です。


しかし、多くのビジネスマンは、この時間帯に満員電車で体力を消耗してしまい、せっかくの「朝の脳」のよさを活かせていません。


通勤で疲れないようにするために、職場の近くに住むことができれば理想的ですが、それが現実的ではないのであれば、朝早く起きて通勤前に勉強することをすすめます。


早く起きるためには、早く寝ることに限ります。昨今のテレビは遅い時間にバラエティ番組が多く、わざわざチェックする必要のある番組も少ないので、23時に寝ることにしても不都合はあまりないはずです。


23時に就寝すれば、6時間睡眠をとったとしても5時には起きられます。7時半に家を出るとしても、2時間ほど勉強ができるわけで、それを週5日行えば10時間ですから、かなりの勉強量になります。


朝は、パッと布団から出てしまいましょう。起き抜けのルーティーンを決めるのも有効です。コーヒーを飲む、シャワーを浴びる、軽い運動をするなど、睡眠からの切り替えを大切にします。


写真=iStock.com/TuiPhotoengineer
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脳が疲れていない朝は「頭がさえている」状態ですから、それをうまく使って「考える勉強」をします。「資格試験の問題を解く」「難しい思考を伴う読書をする」「企画のアイデアを練る」といったことを、朝に行うといいでしょう。


■朝食は必ずとる


考える勉強は、脳のエネルギーを消費します。朝起きたらまず、脳の栄養であるブドウ糖を摂取しておきたいものです。


パンやごはんなどの主食のある朝食をとるのが望ましいですが、バナナ1本でも食べるようにしたほうがいいでしょう。


「百ます計算」で知られる教育者の隂山英男先生が提唱されているように、「早寝早起き朝ごはん」は、学習効率を高める生活スタイルの基本です。


勉強のための食生活という見地から言えば、炭水化物などの摂取を制限する「糖質抜きダイエット」は、絶対に行うべきではありません。


摂取したエネルギーの2割は脳が消費しているのですから、しっかり勉強して頭を使っていれば、多少食べていても太ることはまずありません。


東大合格者数トップの女子校では、スラリとした生徒ばかり見かけましたし、私自身も受験生のころはガリガリにやせていました。勉強こそが最高のダイエットなのです。


■「夜の脳」は記憶型の勉強に最適


夜は「記憶型の勉強」をするのに向いています。


人間の脳は、夜寝ている間に情報を整理し、記憶を定着させる作業を行うので、寝る前の時間帯に勉強すると記憶に残りやすいとされています。


夜に覚えたことと朝に覚えたことを比べると、1週間後に記憶に残っている量は前者のほうが倍ほども多いということが、実験でも明らかになっています。


次のグラフは、アメリカの心理学者のジェンキンスとダレンバックが行った眠っているときと目覚めているときの記憶保持率の比較です。


出所=『頭がいい人の勉強法
出所=『頭がいい人の勉強法

和田秀樹『頭がいい人の勉強法』(総合法令出版)

この実験では寝ている間のほうが目覚めているより、記憶の保持率が高いとされています。


記憶は夜が最適といっても、一度の勉強だけでは時間が経てば、当然忘れてしまいます。


夜に記憶したことの定着率を上げるために、私は翌朝に起き抜けの復習を行うことが効果的と考えています。このとき、ただ読み返すだけではあまり頭に残らないので、できれば書いて復習するほうがいいでしょう。一番理想的なのは問題を解く形式で復習をすることです。


大人の勉強における最大の敵は、復習をしないことです。覚えたことを無駄にしないために、必ず復習することを意識してください。詳しい復習の方法は、本書(『頭がいい人の勉強法』)でご紹介しています。


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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」
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(精神科医 和田 秀樹)

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