EV車造りとは  「eAxle」と 水中写真家からの考察

2024年3月11日(月)17時5分 財経新聞

Photo: 当時の給与ベースから換算すれば50数万円した愛機 ©sawahajime

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●はじめは写真技術の話から
 最近は、カメラを持ち歩かずとも、スマホで写真は撮れるが、昔はまともな写真を撮るにはそれなりの性能のカメラと、撮影技術レベルが求められた。

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 昨今のカメラは、たとえど素人が扱っても、そこそこの写真が撮れるが、昔はそんなに簡単なものでは無かったのは事実である。

●昔のスポーツカメラマン
 相撲の写真も、今なら一瞬の決め技を「連写」で逃す事無く撮れるし、そこで残って、逆転して勝負が決まっても、再度連写すれば、リカバリーも可能だ。

 しかし昔の土俵際の相撲写真は、一発勝負だった。

 当時のカメラマンは、スピグラ(スピードグラッフィク)と言うカメラを土俵下で構えていた。

 1升マスの一回りぐらい大きな箱型カメラで、ボディの横に家庭用電球位のサイズのフラッシュ球(閃光電球)を備えた、アレだ。

 ストロボと違って、閃光電球は1回発光のみだ。「決まり技だ!」とシャッターを切ったところ、土俵際で残されて逆転した場合には、「決定的瞬間」を逃してしまう。

●その頃の水中写真
 そんなカメラ技術が必須だった頃に、水中写真家になるには「ダイバーに写真術を習得させる」のか、「写真家に潜水術を学ばせるのか」が、議論になった事がある。

 何故こんな議論を引合いに出すのか?

 自動車メーカーがEV車を開発するのは、理にかなっているが、自動車製造経験が無い企業に、まともなEV車は造れない理由を説明したいからである。

 当時の水中写真の場合、経験豊富なダイバーに、写真術を習得させるのが理にかなっていると思う。それなりのカメラ技術を持っていても、危険を伴う潜水技術を十分習得する方が困難を伴う筈だ。

●ここからが本論
 ガソリン車やディーゼル車の様な、「内燃機関搭載車」を製造した経験を持つメーカーは、いろいろな失敗経験を積んでいる。

 『「コロナ」の名誉回復が必要だ(2020年3月19日)』でも触れたが、トヨペットコロナのボディ剛性のケースを見てみよう。

 初代のコロナRT10(1957年〜1960年)は、「ダルマ・コロナ」と呼ばれた。

 RT20/30(1960年〜1964年 通称「ティアラ・コロナ」)は、初代のスタイルを一新して、優れた操縦性と乗り心地を実現した。

 しかし、当時未舗装が多かった地方の道路でタクシーとして酷使されると、耐久性不足が露呈した。

 ピラーが細くスマートなボディも強度不足が指摘され、ボディ剛性不足の為、ガラスがはみ出すとまで酷評された。

 しかし、RT40/50の3代目コロナ(1964年〜1970年)になって、ボディ剛性の問題も解決し、クラストップ銘柄となった。

 1つの車種が完成するまでには、経験を蓄積するそれ相当の期間が必要なのだ。

●自動車造り経験が無いと
 思い出すのは、テスラのフロントボンネットフードが突然開いて、前方視界を失う事故。

 自動車造りの経験不足で、1960年代のボディ解析能力しか無い事を露呈したのだ。潜水技術が未熟なまま潜った水中写真家と言うべきだろう。

 自社で内燃機関搭載車を設計段階から製造可能なメーカーは少ないが、ノックダウンや受託生産の経験があるメーカーなら、少なくとも50年以上も昔のレベルである訳は無い。

 つまり潜水技術が、或る程度身に付いたカメラマンなのだ。あとは、機材の性能でカバーすれば良い。

●EV車メーカーへの近道
 前提条件として、委託生産であっても、自動車製造の経験がある事は必須だ。あとは、心臓部の構成をどうするかである。

 「eAxle」というディバイスがある。eAxleとは、内燃機関車両のエンジン、ミッション部分に相当する、EV車の心臓部である。

 「モーター、インバーター、ギヤ」といった、走る為の必要な主要部品を1つにまとめ、パッケージ化したものだ。

 安直にEV車メーカーになるには、ニデック(旧・日本電産)の様な実績があるモーターメーカーから、この「eAxle」〜ニデックでは「E-Axle」と表記〜を購入して来れば良い。

 ニデックが供給してくれるかは不明だが、購入可能なら、これで心臓部が確保出来る。

 次に車載電池。日産リーフ等の国産車を除くEV車には、発火事故がつきものだが、テスラも発足当初はパナソニック製の車載電池を装備していたので発火事故とは無縁だった。

 しかし、他国の電池を採用して以降、昨今は発火事故の常連となっている。

 ここでも、供給を受けられるかは不明だが、もし安心出来る車載電池をパナソニックから調達出来れば、これで「一定性能の動力源」と「安心な車載電池」が揃う。

 そこそこの車体であっても、このモーターと電池を組み合わせれば、EV車は完成するだろう。

 動力源が何であれ、あとは「自動車造り」の経験が左右するのだ。

財経新聞

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