ノートパソコンを机にベタ置きしてはいけない…仕事がデキる人がカフェでも「PCスタンド」を使う科学的理由

2025年3月14日(金)18時15分 プレジデント社

出典=『逆腹筋の教科書 人体の構造的に正しい腹筋運動の新標準』(KADOKAWA)

疲れやすい人は、体のどこに問題があるのか。理学療法士の中村尚人さんは「アライメント、つまり『骨の配列』が何よりも重要だ。体の条件を整えることで、成果は大きく変わってくる」という——。

※本稿は、中村尚人『逆腹筋の教科書 人体の構造的に正しい腹筋運動の新標準』(KADOKAWA)の一部を抜粋・再編集したものです。


■パフォーマンスを最大化する条件


私は常々、「人間の体は『アライメントファースト』だ」と言っています。


アライメントとは、靭帯や関節によって結合されている、骨の配列のことです。


人間の体は骨や関節が正しい位置関係にあることで理想的な姿勢を保つことができ、かつ体のさまざまな機能が担保されます。人間の体は、アライメントが整い正しい位置関係にあるという条件においてのみ、すべての筋肉や関節が良い状態になり、正しく働くという法則があります。


逆に姿勢が悪いと、人間としての機能を十分に発揮できません。これは、テントをピシッと美しく張るには、安定した場所で正しくポールを組み立て、正しい位置に固定することが大事であるのと一緒です。


アライメントがどれだけ機能に影響するのかは、呼吸に意識を向けると簡単に体感できます。


まずは、前回記事で紹介した方法で、姿勢を整えましょう。


その後、両腕を下ろし、姿勢を保ったまま静かに呼吸を続けてみてください。


次に、上半身の位置を、左右どちらかにほんの少し、ずらして呼吸をします。


どうでしょう?


とたんに胸が詰まったようになり、呼吸が浅くなりませんか?


体はとても繊細です。このように、ほんのちょっとアライメントが崩れただけで、あらゆる機能が低下するのです。


■“悪い姿勢”を放置してはいけない


歩行もそうです。直立二足歩行は、私たちホモサピエンスだけが持つ、素晴らしい機能です。ところがアライメントが崩れると、体がうまく使えないので、歩行の質も下がります。


出典=『逆腹筋の教科書 人体の構造的に正しい腹筋運動の新標準』(KADOKAWA)

猫背の人は猫背の姿勢での最高のスピードでしか走れませんし、ひざや股関節が曲がったり、偏平足だったりすると、高くジャンプできません。また、ひざが外側に倒れている人は、地面から受ける反力がまっすぐ脚に伝わりません。そのため、推進力に欠けて歩行が遅くなったり、足の外側ばかりが張ってきてO脚になったりします。


このまま放置すれば、アライメントはどんどん崩れていく一方です。姿勢が悪いと、人間が長い歴史のなかで獲得してきた素晴らしい機能を発揮できなくなります。関節や筋肉が偏った使い方になり、一部の関節や筋肉、靭帯などに負担がかかることで痛みや不調も生じます。ただ日常生活を送っているだけで、いわゆる「機能障害」が起こるのです。


体の条件が良ければ、結果は変わります。


つまりアライメントという人間の条件が整えば、関節はスムーズに動き、筋肉にかかる負担も消え、今悩んでいる姿勢の悪さや体形の崩れ、さらには痛みや不調からも解放されるのです。


■“正しい姿勢”のつくり方


過去に姿勢の指導を正しく受けた経験がないと、アライメント(骨の配列)が整った“ニュートラルな姿勢”という状態がわからないと思います。


もちろん逆腹筋を行うとニュートラルな姿勢に整いますが、背骨のS字カーブや骨盤の向きなど、骨格は自分の目で確認できないので、「本当に姿勢が整ったのかな?」と不安になりますよね。そこで、「理想的な姿勢」とはどんな感じかを、簡単な方法で体感してみましょう。


鏡の前で行うとイメージしやすいのでおすすめします。手順は以下のとおりです。


① 天井から1本の糸で頭頂が引っ張られるイメージで、頭を高く引き上げる。
② 肩と腕の力を抜き、両腕をブラーンと自然に下ろす。


出典=『逆腹筋の教科書 人体の構造的に正しい腹筋運動の新標準』(KADOKAWA)

イメージは「操り人形」です。あるいは、ドラえもんの四次元ポケットから出てくる、「タケコプター」でつられているイメージ。


ポイントは、とにかく頭が引っ張られる感覚を維持すること。頭のてっぺんから糸でつるされ、体を固めず、首や肩の力を抜きながら、フワフワッと上に引っ張られている感覚のまま姿勢を作ります。


重要なのは、足元から骨が積み上げられて直立するのではなく、上から引っ張られ、ブラーンとぶら下がっているイメージを持つことです。


■日常生活に「ある動作」を加えるだけ


遠くを見渡し、視野を広くすることは、腹筋を遠心性で使い、正しい姿勢を維持するうえですごく大切です。


実は日常生活の動作を少し変えるだけで、「逆腹筋的」体の使い方ができる場面は多々あります。習慣が姿勢に与える影響は非常に大きいので、ちりも積もれば山となる、の言葉通り一つ一つの動作や行動を変えれば、確実に姿勢は変化します。


逆腹筋にプラスして日常生活のなかでこまめに実践し、理想的なアライメントを形状記憶していきましょう。


写真=iStock.com/Mariia Vitkovska
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Mariia Vitkovska
実践①デバイスは「目の高さ」に持ってくる

スマホにタブレット、そしてパソコン。これらのデバイスを使うときは、顔を画面に近づけるのではなく、画面を自分の視線の高さに合わせます。


姿勢は頭の位置で決まります。


私自身もすべてのデバイスを視線の下がらない高さで操作しています。


■「PCスタンド」を活用するのも手


特にデスクワークの方はパソコンに長時間向き合う必要があります。ノートパソコンの高さを変えられるスタンドや、高さを自由に調節できるスタンディングデスクなどを活用してみてください。


出典=『逆腹筋の教科書 人体の構造的に正しい腹筋運動の新標準』(KADOKAWA)

最初こそ疲れやすいと感じるかもしれませんが、ニュートラルな姿勢でいることがもっとも筋肉に負担がかかりません。慣れてくれば、とてつもなく快適になります。


さらに、休憩をかねてイスに座ったままできる逆腹筋(※)を行うと、その都度、姿勢がリセットできます。ついでに腹筋強化もできて一石二鳥です。


※筆者註:詳しくは拙著『逆腹筋の教科書 人体の構造的に正しい腹筋運動の新標準』(KADOKAWA)で解説しているので、手に取ってみてください。


「移動中やカフェで、スマホをそんなふうに高く持つのは恥ずかしい」と思われるかもしれませんが、周りの人はあなたの健康や美のことまでは気遣ってくれません。気になるのは、きっと最初だけ。ぜひ継続してみてください。


■「伸び」を常に意識する


実践②よく使うものは「目線より上」に収納する

日常のちょっとした動作のときも、常に「伸び」を意識する。これだけでアライメントが修正でき、逆腹筋的な運動効果が期待できます。


出典=『逆腹筋の教科書 人体の構造的に正しい腹筋運動の新標準』(KADOKAWA)

両腕を頭よりも上にこまめに伸ばす人のお腹は、目線よりも下にあるティッシュを取ろうとした瞬間からつぶれます。


家のなかの収納を少し工夫して、腕を伸ばす機会が増えるレイアウトにするのも手です。



中村尚人『逆腹筋の教科書 人体の構造的に正しい腹筋運動の新標準』(KADOKAWA)

例えば、よく使う食器やタッパー、ラップやアルミホイルなどは、あえて戸棚の高い位置にしまう。ワイパーなどの便利なアイテムを使わずに、雑巾を持って手で窓ふきをしたり、高い場所ははたきを使ってほこりを落とすなどもよいでしょう。


腕を大きく使うと、肩甲骨が動きます。肩甲骨は鎖骨を介して胸骨とつながっているため、腕をよく使えば前かがみ姿勢で縮こまり硬くなった胸がほぐれて、しなやかさを取り戻します。


また、腕の動きは体幹の筋肉とも連動しているため、腹筋もよく使うようになるのです。


■いまこそ復活してほしい…昭和の健康器具


ちなみに床の雑巾がけも、肩甲骨をしっかり使えるうえ、姿勢を作る抗重力筋の一つ、前鋸筋を鍛えるので効果的です。


出典=『逆腹筋の教科書 人体の構造的に正しい腹筋運動の新標準』(KADOKAWA)

もっと言うと、時々、本当にぶら下がれるといいですね。


公園にある鉄棒でもいいし、懸垂バーや、ぶら下がり健康器が家や仕事場にあったら最高です。


休憩時間にぶら下がるだけで姿勢がリセットされますし、腹筋も遠心性収縮で鍛えられます。ぶら下がり健康器は昭和時代に一世を風靡した健康器具ですが、いつの間にか物干し代わりになり廃れてしまいました。


しかし、今の時代こそ一家に1台、必要な健康器具だと思います。もう1回流行らせたいくらいです。毎日ぶら下がれば、皆、健康になってしまい病院に行く人もガクンと減ってしまうだろうなと思います。


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中村 尚人(なかむら・なおと)
理学療法士・ヨガインストラクター
理学療法士、ヨガインストラクター。逆腹筋メソッドの考案者。Studio TAKTEIGHT(タクトエイト)主宰。1999年より理学療法士として大学病院から在宅まで12年間幅広く臨床を経験。その中でヨガと出会う。2011年に予防医学を実現するために独立。解剖学への深い理解と、医学に基づく安全な指導に定評があり、日本最大のヨガイベントYoga Fest、オーガニックライフ東京には毎年招聘されている。現在は、医療とボディーワークの融合、予防医学の確立を目指し、日々患者や生徒と向き合っている。これまでに、理学療法士として姿勢や運動機能に問題を抱えた1万人以上の患者と向き合いつつ、ヨガやピラティスの指導者として2000人以上のインストラクターを養成。著書はロングセラーの『ヨガの解剖学』(BABジャパン)をはじめ、テレビやYouTubeで話題になった『「そる」だけでやせる 腹筋革命』(飛鳥新社)など多数。NHK『きょうの健康』『おはよう日本』をはじめ、全国ネット局に番組への出演実績多数。
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(理学療法士・ヨガインストラクター 中村 尚人)

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