ムーディーズが米国債の格付けを最上位「Aaa」から1段階引き下げ…関税政策による財政赤字の拡大懸念で
2025年5月17日(土)11時0分 読売新聞
アメリカ国旗=ロイター
【ニューヨーク=小林泰裕】米格付け大手ムーディーズ・レーティングスは16日、米国債の長期信用格付けを最上位の「Aaa」から「Aa1」へと1段階引き下げたと発表した。米政府の財政赤字の拡大を理由としている。米金利の上昇など市場の動揺につながる可能性がある。ムーディーズは16日の発表で、「今後10年間、米国の政府歳入がおおむね横ばいで推移する一方、社会保障支出が増加し、財政赤字は拡大すると予想される」と指摘した。
トランプ政権は、大型所得減税の恒久化などを含む法案の成立に向けて協議を進めている。実現すれば税収の大幅な減少が見込まれている。関税政策の影響で米景気が減速すれば、景気下支えのための財政出動を強いられ、短期的に財政赤字が拡大する懸念がある。
一方で、格付け見通しは「安定的」とした。米国経済は規模の大きさや高い平均所得があり、関税政策は長期的な成長に大きな影響は及ぼさないとも指摘した。
16日の米債券市場では米国債が売られ、米長期金利が上昇した。
ムーディーズは世界3大格付け会社の一つ。フィッチ・レーティングスは2023年に、スタンダード・アンド・プアーズ(現S&Pグローバル・レーティング)は11年に、それぞれ米国債の信用格付けを最上位の「AAA」から1段階引き下げた。