東海国立大学機構と富士通、包括協定における宇宙天気予測の課題探索や技術開発を加速

2024年3月14日(木)14時17分 PR TIMES

富士通の説明可能なAIを活用し、膨大な組み合わせの中から太陽高エネルギー粒子の増加をもたらす太陽フレアの条件を見出す

国立大学法人東海国立大学機構 (本部:名古屋市千種区、機構長:松尾 清一、以下、東海国立大学機構)と富士通株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:時田 隆仁、以下、富士通)は、月・火星・惑星間空間(注1)での人類活動の安全確保を目指した、宇宙放射線の発生予測に関する共同研究において、富士通のAIプラットフォームであるFujitsu Kozuchiに搭載された説明可能なAIの「Wide Learning(TM)」を適用し、宇宙天気に影響を及ぼす太陽高エネルギー粒子(注2)の増加要因となる太陽フレア(注3)(以下、フレア)の発生条件を見出す成果を得ました。両者は今後も、宇宙天気予報の更なる高度化を通じて、人類の深宇宙への進出に貢献する研究を加速します。なお、これらの成果について2024年3月11日(月曜日)より開催中の日本天文学会2024年春季年会で発表します。

【背景】
東海国立大学機構と富士通は、2023年2月24日に締結した包括協定(注4)のもと、東海国立大学機構 名古屋大学宇宙地球環境研究所(所長: 塩川 和夫、以下、宇宙地球環境研究所)と富士通は、人類の活動圏が宇宙に広がる近未来を見据えた宇宙天気予報の高度化に関する共同研究を実施しています。宇宙天気は、宇宙での活動はもちろん、生活に関わる通信障害や衛星測位の乱れ、航空路決定などに影響を及ぼすため、国内外で宇宙天気の観測や高度化に向けた研究が進められています。

宇宙天気現象の中でも、特に人工衛星や、宇宙飛行士などの人体へも直接影響するものとして太陽高エネルギー粒子があります。太陽高エネルギー粒子は、フレアやコロナ質量放出(注5)に伴い突発的に形成され宇宙空間を伝搬する宇宙放射線(注6)の一種であり、宇宙空間において直接被ばくすると致死線量に達する場合もあります。そのため、今後さらに加速する人類の宇宙進出に向け、安全を確保するためには、太陽高エネルギー粒子の発生とその量の予測が重要となります。
[画像1: https://prtimes.jp/i/93942/268/resize/d93942-268-13f3c3cf76e6e4458a22-0.png ]

【手法と成果】
太陽高エネルギー粒子の増加をもたらすフレアの発生条件を導きだすために、富士通の説明可能なAIである「Wide Learning(TM)」を用いて、フレアの明るさや、発生位置、継続時間などの特徴である以下のデータを活用し、それらの膨大な組み合わせの中から、太陽高エネルギー粒子事象の発生につながる条件を分析し抽出しました。

利用したデータ
・米国海洋大気庁(NOAA)の宇宙天気予測センターが提供する過去の太陽高エネルギー粒子の増加事象およびフレアの明るさや継続時間、位置に関するデータベース
・米国航空宇宙局(NASA)のSolar Dynamics Observatory衛星(注7)が観測した太陽黒点周辺領域の太陽表面磁場データ
・宇宙地球環境研究所が開発したスキームを使い、名古屋大学情報基盤センターが2020年に導入した富士通製スーパーコンピュータ「不老」によって計算された黒点周辺の3次元磁場モデル(注8)

分析の結果、太陽高エネルギー粒子の発生において、フレアの規模と継続時間が重要であることに加え、フレア発生数が少ない黒点領域で発生する第一フレアが太陽高エネルギー粒子の増加をもたらしやすいことを見出しました。フレアはある黒点において連続して発生する傾向があるため、フレア発生の予測には直前に発生したフレアの履歴が利用されていました。本研究成果は、太陽高エネルギー粒子事象の予測において、前日のフレア活動が比較的弱かった黒点領域で発生する第一フレアの予測が重要であることを示唆しており、今後の宇宙天気予報の研究開発に新たな指針を与えるものになります。

なお、本研究にて構築した分析モデルでは、従来の太陽高エネルギー粒子の増加予測手法と同等の精度で予測を実現でき、加えて、黒点周辺の3次元磁場モデルに基づいた独自のパラメータを用いることで、さらに精度が向上することを確認しました。
[画像2: https://prtimes.jp/i/93942/268/resize/d93942-268-78626ee710039c9edf86-1.png ]

【今後の展望】
今後も両者は、太陽高エネルギー粒子事象の要因となる第一フレアの予測などに関する分析を進め、太陽高エネルギー粒子の発生の手がかりを提示する研究を加速すると共に、東海国立大学機構が持つ宇宙科学分野における知見と、富士通のテクノロジーを融合させることで、宇宙天気予報の研究開発と社会実装に取り組み、宇宙空間での安全な活動への貢献を目指します。

【商標について】
記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

【注釈】
注1
惑星間空間:
太陽系の惑星間にある空間のこと(https://astro-dic.jp/interplanetary-space/)

注2
太陽高エネルギー粒子:
(プロトン現象)太陽フレアやコロナ質量放出に伴って加速された高エネルギー粒子が発生する現象(https://astro-dic.jp/solar-proton-event/)

注3
太陽フレア:
太陽で発生する爆発的な増光現象(https://astro-dic.jp/solar-flare/)

注4
包括協定:
東海国立大学機構と富士通、SDGsやSociety5.0の実現に向けて、ウェルビーイング社会の創生と宇宙活動における課題探索や技術開発に関する包括協定を締結(2023年 2月24日 富士通プレスリリース)
(https://pr.fujitsu.com/jp/news/2023/02/24.html)

注5
コロナ質量放出:
太陽コロナのプラズマが突発的かつ大量に惑星間空間へ放出される現象(https://astro-dic.jp/coronal-mass-ejection/)

注6
宇宙放射線:
宇宙空間に存在する様々な放射線の総称(https://edu.jaxa.jp/contents/other/seeds/pdf/2_radiation.pdf)

注7
Solar Dynamics Observatory:
Solar Dynamics Observatory Mission (https://sdo.gsfc.nasa.gov/)

注8
黒点周辺の3次元磁場モデル:
Kusano et al. 2020 Science (https://www.science.org/doi/10.1126/science.aaz2511)

【関連リンク】
・Wide Learning(TM) について
(https://widelearning.labs.fujitsu.com/ja/)
・日本天文学会
(https://www.asj.or.jp/jp/)

【本件に関するお問い合わせ】
国立大学法人東海国立大学機構
名古屋大学 学術研究・産学官連携推進本部
電話:052-788-6150
E-mail:sangaku@aip.nagoya-u.ac.jp

富士通株式会社
富士通コンタクトライン(総合窓口)
0120-933-200(通話無料)
受付時間: 9時〜12時および13時〜17時30分(土曜日・日曜日・祝日・富士通指定の休業日を除く)
お問い合わせフォーム(https://contactline.jp.fujitsu.com/customform/csque04802/873532/)

プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容などは発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。

PR TIMES

「大学」をもっと詳しく

「大学」のニュース

「大学」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ