1週間試しただけで睡眠の質が向上…ストレスに強い人が1日に行う「メールチェックの正しい回数」

2024年3月24日(日)17時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/anyaberkut

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仕事や人生で疲れない人は、どんな習慣があるか。心理学者の内藤誼人さんは「ちょっぴり心が苦しいなと感じたときには、メールやSNSを見る機会を減らすことも考えてみるといい。やりとりの回数を制限するだけで、心が晴れやかになる。ある実験でメールチェックを1日3回までに制限したグループでは、毎日のストレスが減り、ポジティブな気分を感じられるようになり、睡眠の質も向上し、仕事もたくさんこなせるようになった」という——。(第7回/全8回)

※本稿は、内藤誼人『イライラ・不安・ストレスがおどろくほど軽くなる本』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。


写真=iStock.com/anyaberkut
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■運動を習慣にするための仕掛けをつくる


福岡にある西鉄福岡(天神)駅には、非常におもしろい階段がありました。なんと、階段がピアノの鍵盤になっていて、踏む箇所によって音が変わるのです。


こういうおもしろい階段なら、運動するのが面倒くさい人でも、「今日は、階段を使ってみようかな」という気持ちになるのではないでしょうか。


肥満にならず、ストレスを感じにくい体質になりたいなら、運動をすればいいのですが、身体を動かすのは基本的に面倒くさいので、やりたくないという人も多いですよね。運動をするには、おもしろさや楽しさを感じられる仕掛けがなければ、長続きしないのです。


米国疾病管理予防センターのロビン・ソラーは、エレベータやエスカレータの横の階段に絵を描いたり、芸術作品を置いたり、音楽を流したりすることで、階段の利用者が増やせるのかどうかを検証した16の論文を総合的に分析してみました。


その結果、おもしろい工夫がなされているほど、エレベータでなく、階段の利用者が増えることがわかりました。おもしろい仕掛けがあるのなら、私たちは面倒くさがらずに階段を利用するのです。


これから運動をしようと思うのなら、運動するきっかけとなるような「仕掛け」をまず考えなければなりません。ただ苦しいだけでは、人は運動習慣を身につけることができませんからね。


■「健康によい」より「楽しい」と思えるか


ウォーキングが心身の健康によいといっても、ただ漠然とウォーキングを始めても、おそらくは3日もつづかないでしょう。


そんな人におすすめなのが、ウォーキング用のアプリ。


ウォーキング用のゲームアプリをダウンロードしておき、ゲームとしてウォーキングを始めるのなら、どうでしょうか。これなら楽しくウォーキングもできそうです。


ウォーキングするたびに、ゲームの主人公の経験値がアップしたり、お金がもらえたりするのなら、歩くモチベーションも高くなります。


「健康によいから」というだけでは、運動習慣は身につきません。


健康によいことは頭では理解していても、面倒くさいと思う気持ちのほうが強いので、なかなか運動の習慣を身につけられないのです。


この点は、勉強と同じです。楽しさを感じられないと、なかなか習慣化はできません。


運動習慣を身につけるには、まず自分自身が楽しいと思えるような仕掛けをつくることが先決です。


ゲームアプリのように、運動すると何かおもしろい特典がついてくるような仕掛けをつくっておけば、楽しく運動習慣が身につけられますよ。


■メールチェックは1日3回まで


みなさんは、フェイスブックやインスタグラムなどのSNSをやっていますか。いろいろな人とやりとりをするのは、単純に面白いですよね。とはいえ、やりすぎていると、疲れてしまうのも事実。


ちょっぴり心が苦しいなと感じたときには、メールやSNSを見る機会を減らすことも考えてみてください。やりとりの回数を制限するだけで、心が晴れやかになりますよ。


カナダにあるブリティッシュ・コロンビア大学のコスタディン・クシュレフは、コミュニティセンターにポスターを貼ったり、地元の新聞に広告を出したりして、124名(平均30歳)の実験参加者を集めました。


そして参加者をランダムに2つのグループに分け、片方のグループには「1週間、1日のメールチェックは3回まで」という指示を出したのです。


残りのグループには、今までと同じようにメールチェックの回数は無制限のまま、これまで通りの生活を送ってもらいました。


さて、1週間後にもう一度参加者にいろいろと尋ねてみると、メールチェックを1日3回までに制限したグループでは、毎日のストレスが減り、ポジティブな気分を感じられるようになり、睡眠の質も向上し、仕事もたくさんこなせるようになっていました。


ただメールチェックの回数を制限するだけで、いろいろな効果が得られたのです。


出典=『イライラ・不安・ストレスがおどろくほど軽くなる本

■SNSをやめると心がスッキリした理由


このように、クシュレフの実験ではメールのやりとりが制限されたわけですが、同じことはSNSのチェックにも当てはまると考えられます。


しょっちゅうスマホを確認して、SNSを見ている人がいますが、1日に何十回も確認することが心の健康によいわけがありません。


写真=iStock.com/Georgijevic
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Georgijevic

SNSをやってはいけないとまではいいませんが、午前と午後に1回ずつ、夜にもう1回、合わせて3回くらいの確認にしておくのがベターでしょう。


かくいう私は、一切のSNSをやめてしまいました。


SNSに自分の人生を振り回されているように感じることがわずらわしかったからです。不思議なもので、SNSをやめると心もスッキリしました。


仕事がらみのメールのチェックもあまりしなくなりました。メールの返信が少し遅れてしまうことがありますが、それはしかたがありません。


本当に急な連絡であれば、メールでなく、電話をかけてくるはずですので、気にしないことにしました。


もちろん、SNSを楽しくやっているのであれば、どうぞつづけてください。面白くてしかたがないのであればよい息抜きになるでしょう。


ただ惰性的に、何となく面倒くさいと感じながらやっているのであれば、1日に3回くらいにしておいたほうがいいのではないでしょうか。


自分が疲れない範囲で、ほどほどにやるのがポイントです。


■適度な「サボり」が大切


テクノロジーの発達により、コンピュータのモニタリング・システムで、上司は部下たちがきちんと仕事をしているのかを容易に監視できるようになりました。


仕事に関係のないネットサーフィンをしたり、サボったりしていると、すぐにバレてしまうわけです。


では、こういうモニタリング・システムは、仕事の効率を高めるのでしょうか。


イェール大学のB・アミックによりますと、むしろ部下たちは常時監視されていることにストレスを感じ、仕事の効率が悪くなってしまうことのほうが多いのだそうです。


仕事なのですから、もちろん手を抜いたりしてはいけませんが、人間はロボットではないのですし、そんなにずっと力を出しつづけられるわけではありません。


というわけで、ちょこちょことサボりましょう(笑)。


「ああ、このままでは私は壊れてしまう」と感じるほどに全力を出してはいけません。


そういう人は、ストレスが高じて“燃え尽き症候群”になってしまいます。うつになってしまうほどに頑張りすぎてはいけないのです。


■トイレの個室に入って、1、2分ほど目を閉じてくつろぐ


性格的に真面目な人には難しいかもしれませんが、自分を守るためにも、「適度なサボり」は絶対に必要です。「サボる」という言葉に抵抗があるかもしれませんが、スポーツ選手が練習の途中で、ちょこちょこと水分補給をするようなものだと思ってください。



内藤誼人『イライラ・不安・ストレスがおどろくほど軽くなる本』(明日香出版社)

そういえば私が中高生だった頃には、部活動の練習中には「水を飲むな」と指導されました。今とはまったく逆です。水を飲むと余計に苦しくなるからという理由なのですが、夏場の暑い日には水を飲まないと倒れてしまいます。


そのため、たいていの生徒はトイレに行くふりをして、こっそり水を飲んで戻ってくるということを当たり前のようにやっていた記憶があります。そうやって、ちょこちょこサボる技術を磨いていたのかもしれません。


もちろん、仕事をサボっていることがバレてしまうと勤務評定に響いてしまいますので、そこはうまくやる必要があります。


一番のおすすめは、トイレの個室に入って、1、2分ほど目を閉じてくつろぐこと。あるいは非常口の階段から出て、外の空気を吸うこと。ほんのわずかなおサボりですが、ストレス回復効果があります。


コーヒーやお茶を淹れるのもいいアイデアですね。その際、ついでに他の人の分までお茶を淹れてあげるようにすると、サボっているというよりは、気を遣っているような印象になるので、みなさんの評価も上がるでしょう。


出典=『イライラ・不安・ストレスがおどろくほど軽くなる本

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内藤 誼人(ないとう・よしひと)
心理学者、立正大学客員教授、有限会社アンギルド代表取締役社長
慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。社会心理学の知見をベースに、ビジネスを中心とした実践的分野への応用に力を注ぐ心理学系アクティビスト。趣味は釣りとガーデニング。著書に『いちいち気にしない心が手に入る本:何があっても「受け流せる」心理学』(三笠書房)、『「人たらし」のブラック心理術』(大和書房)、『世界最先端の研究が教える新事実心理学BEST100』(総合法令出版)、『気にしない習慣 よけいな気疲れが消えていく61のヒント』(明日香出版社)、『羨んだり、妬んだりしなくてよくなる アドラー心理の言葉』(ぱる出版)など多数。その数は250冊を超える。
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(心理学者、立正大学客員教授、有限会社アンギルド代表取締役社長 内藤 誼人)

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