フジ問題は中居正広の悪事だけで終わらない…テレビ局の常識になった「接待文化」「献上文化」の深すぎる闇
2025年4月5日(土)8時15分 プレジデント社
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Grafissimo
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■「性接待はある」元テレビマンの告白
某週刊誌の知人から、「芸人さんの遊びについて取材させてほしい」という連絡が来た。
2024年の春ごろのことだ。彼は、私がプライベートでも大阪の芸人と親しくしていたことを知っている。きっと松本人志氏のスキャンダルをきっかけに芸人の遊び方を記事にしたいということだったのだろう。
2025年に入ると、今度は中居正広氏をめぐって、フジテレビのプロデューサーが介在した性接待疑惑が持ち上がった。そのタイミングで再び同じ知人から「テレビ局員として知っていることがあれば教えてほしい」というメールがあった。
今、テレビ業界の裏側、そしてテレビプロデューサーの裏の顔が世間の注目を集めている。
週刊誌用にコメントを短くまとめられたのでは私の意は伝わらないし、友だちとの思い出を売るようなことはしたくないので、彼からの依頼は丁重にお断りした。だが、実際にネタはいくらでもある。
私は1980年代に、大阪のテレビ局「テレビ上方(かみがた)※」に入社して以来、プロデューサーとして情報番組や報道番組、バラエティー番組などの制作に携わった。その中で多くのタレント、芸人とも知遇を得た。
芸人と一緒に飲んでいると、先輩の指示で、後輩が女の子をナンパしに行くことがよくあった。しばらくして後輩は女の子を連れてきて、先輩に“献上”する。そこからどうするかは先輩の腕次第。先輩が逃してしまった女性を、先輩の目を盗んで後輩がこっそり“お持ち帰り”なんてシーンも目にした。
当時、心斎橋筋2丁目劇場の出演者たちは、グリコの看板で有名な通称「ひっかけ橋」でナンパをしまくっていた。それはファンのあいだでも有名だったから、ナンパされにくる女の子もたくさんいた。その中には「昨日、○○とHしてん。笑うぐらい下手くそやったわ。××のほうが全然うまかった」などと自慢している子もいた。あっけらかんとしたものだった。
芸人の悪さばかりが追及されるが、芸事の磁場に引き寄せられ、彼らに誘われたいと熱望していた女の子がたくさんいたのも事実で、現在の価値観で断罪することに意味があるとは思えない。
「接待」といえば、某タレント事務所の女性社長が、自社の女性タレントをスポンサー筋にあてがう現場も目撃した。
そして、そうした芸能界と二人三脚で疾走してきたのがテレビ局だったのだ。
※筆者注 登場するテレビ局名や番組名、タレント名については一部を仮名にしている。またプライバシー保護の観点から、登場人物の特定を避けるため、キャラクターを改変したり、脚色を加えた部分がある。
■「テレビのありのままを記したい」
20余年にわたりテレビ局に勤務し、ある事情で退社したあとも業界の周辺で禄(ろく)を食(は)んできた。本書にあるのは私が実際に目撃し、また体験したことである。
深刻ぶった話ばかりではない。間抜けな話やしょうもない話も数えきれないほどある。むしろそんな話のほうが多いくらいだ。どこからどこまでが「表の顔」で、どこからどこまでが「裏の顔」なのかももはや判然としない。
テレビ局とはどんなところで、テレビプロデューサーの仕事とはいったいどんなものなのか?
テレビ業界を離れ歳月を経て、テレビプロデューサーとしての仕事を書き残しておきたいと考えた。恥ずべきことも誇らしいことも含めた“ありのまま”の姿を記したいと思う。
写真=iStock.com/Yuzuru Gima
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■番組づくりにおけるプロデューサーの仕事
プロデューサーから見た番組の成り立ちは大きく分けて2種類ある。自分で書いた企画書が採用されるケースと、この枠でこんな番組を作ってくれという大筋が提示されるケースで、後者が一般的だ。
企画の大筋をもとに、プロデューサーは、自分の意図をよく理解してくれる構成作家やディレクターを選び、彼らと番組の内容を考え、制作会社その他のスタッフを決め、予算を弾き出し、編成と交渉する。それと同時にタレント事務所と交渉し、タレントのブッキングを行なう。
このとき、いつも懸案となるのが予算だ。予算次第で、番組の内容も変わるし、使える機材やスタッフ、もちろん起用できるタレントも違ってくる。
テレビ上方では、60分番組で500万円ほどの予算だったが、このくらいの金額だと制約も多くなる。技術費を切り詰めるのは難しいので、タレントの格を下げ、人数を減らし、VTRを削る……。
やりすぎれば番組は安っぽくなるから、プロデューサーは経営幹部に根回ししたり、編成担当に社内接待したりして、1円でも多くの予算を確保しようとする。
それもプロデューサーの力量なのだ。
■予算確保を狙った「商品開発ドキュメント」
番組予算の少なさに不満を抱えていた私はある着想をした。
番組を会社登記し、その番組(会社)で商品開発と販売を行なう。そして、商品販売であげた利益を番組制作費に還元する。これならば、編成部にゴマをすって予算を回してもらわずとも自らの力で予算を確保できる。
系列局では「浅草橋ヤング洋品店」としてスタートしたバラエティー番組が「ASAYAN」と名前を変え、オーディション番組として大成功していた。番組は、一般公募でタレント志望の参加者をつのり、オーディションでふるいにかけていく様子を半年から1年がかりで追いかけ、ドキュメンタリーとして放送した。
オーディションから這い上がったタレントが艱難辛苦(かんなんしんく)を乗り越え、デビューする。視聴者は彼ら彼女らを応援するため、CDを購入する。番組から誕生した「モーニング娘。」や「CHEMISTRY」のデビュー曲は大ヒットした。番組コンテンツ全編がそのまま楽曲やタレントを売るための仕掛けになっているのだ。
写真=iStock.com/Charday Penn
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地上波で1時間まるまる使い、半年以上にわたって放送する露出効果はすさまじい。CM換算すれば信じられない金額になるだろう。
私のアイディアは、この番組の仕掛けを商品開発と販売に利用しようというものだった。番組で商品を開発・製造する様子をドキュメントでたっぷり見せてから、一般発売する。「ASAYAN」の商品版だ。
■気難しい大御所へのお伺い
テレビ上方上層部と古本興業との相談で、メインMCに大御所落語家・柱六枝師匠を使うことは早々に決まった。また、六枝師匠のご指名で、勢いのある飯山愛さんをアシスタントに起用することも決定。リクエストどおり、飯山愛さんがブッキングできたことを伝えると、「愛ちゃんは、ええで〜」と六枝師匠もご機嫌だった。
残すは、もう1人進行を補佐する男性タレントだ。大阪ローカルの番組で制作費が限られており、大阪の芸人から数名をピックアップする。ただ、六枝師匠ほどの大物になると、こちらで一方的にキャスティングするわけにもいかない。
意見をうかがいに、古本興業のなんばグランド花月の楽屋に師匠を尋ねた。このとき、私は六枝師匠と初対面であった。若き日の明石家いわしが六枝師匠にいじめられた話は耳にしていたし、知り合いの芸人からも六枝師匠の気難しさを聞いていたので緊張しながら楽屋に入る。
こちらで携えてきた候補の名前をあげてみる。
「男性アシスタントですが、師匠と同門の大枝さんを候補に考えております。いかがでしょうか?」
六枝師匠は目も合わさずに聞いている。少し間が空く。
「お〜い、お茶を替えてくれ」
こちらには目もくれず、弟子にそう呼びかける。これは違うということなのだろうか。なんとなく違和感を覚えて次の名前をあげる。
「それでは、漫才師の大平ロクローさんでしたら、どうでしょうか?」
考えているのか、考えていないのか、反応はない。また弟子に向かって言う。
「おい、ちょっと暑いな。楽屋のドア開けてくれ」
やっぱりダメということなのだろうか。次の名前をあげる。
「新喜劇の岩田清君はどうですか?」
さきほど弟子が淹れたお茶に少しだけ口をつけると、「羽織とってくれるか?」……。こんな感じでこちらが持参した候補タレントにはすべて手応えがない。
■大御所の「鶴の一声」
ここまで来ると、鈍感な私もこちらからいくら提案してもダメなのだと察する。
「師匠は誰がやりやすいでしょうか?」
今までのやりとりなどなかったように、直截に聞いてみる。
「そうやな、遠枝くんとかはどうかな?」
待ってましたとばかりの即答。
柱遠枝さんは、先代の分枝師匠の弟子で、六枝師匠とは兄弟弟子にあたる。師匠にとって、これまで名前の上がった誰よりも気楽に仕事ができる間柄だということは間違いない。
ただ、遠枝さんと六枝師匠との組み合わせはよろしくない。というのも、遠枝さんが兄弟子の六枝師匠に気をつかいすぎ、緊張感のないゆるい雰囲気になりかねないからだ。遠枝さんとは一緒に仕事をしたこともあり、優しく遊び好きで良い人ではあるものの、テレビカメラにチラッと目線を送るクセがあり、それも今回の番組のテイストにそぐわないように思える。
私はそのことを六枝師匠に伝えるかどうか躊躇して揺れた。
「どやろ?」六枝師匠が念押しするように言い、機先を制された私は、「いいですね。承知しました」と思ってもいないことを口にしてしまう。
初対面の六枝師匠の意向に逆らうこともできず、“鶴の一声”でキャスティングは決まってしまった。
それにしても楽屋であんなに持って回った小芝居をしなくても、最初からはっきり言ってくれれば、不毛なやりとりをしなくて済んだのに……。そんなことを思いながら、なんばグランド花月をあとにした。
■ガラガラと崩れていく番組企画
番組の概要と、主要キャストとスタッフ繰りも決まり、あとはどんな商品を開発するかを決めればよい……はずなのだが、初回の打ち合わせで六枝師匠の個人事務所に行ったときのことだった。
「北君、ちょっと考えてたんやけど、中小企業の社長っぽく、僕がヅラを被るっちゅうのはどうかな?」
席に着くなり、六枝師匠が提案してくる。企画意図はドキュメンタリー番組だ。
きちんとした商品を開発し、それを販売していくことを主眼に考えているのに、MCがヅラではコントになってしまう。どうやって断ろうかと考えていると、
「いいですね! さすが師匠!」
同席していた岩貞ディレクターが合いの手を入れる。おいおい、なに言うてんねん! 心の中でツッコんだが、遠枝さんのキャスティングをやすやすと受け入れてしまった私も他人のことは言えない。大御所タレントを目の前に追従してしまうのはテレビマンの性(さが)なのかもしれない。
「そやろ」六枝師匠もまんざらでもなさそうで、ヅラは既定路線になってしまった。
その後も師匠の個人事務所に打ち合わせに行くたびに、
「北君、ハムの絵が描いてある皿ってどやろ? これ使えば、レタスだけ乗せたらハムサラダになるんや。名づけて“ハム皿ダ(ハムサラダ)”。ええやろ」
「北君、携帯電話かけるときの帽子で、片一方の耳に耳当てみたいなのがついてるねん。これは名づけて“電磁波帽子(防止)”、どう?」
師匠のアイディアが出るたびに、
「それは面白い! 最高です! 絶対売れますよ!」
岩貞ディレクターが必ず太鼓持ちのようにヨイショをし、私は軌道修正もできぬまま、隣で苦笑いするのだった。
写真=iStock.com/Masafumi_Nakanishi
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■バカ売れ「究極のお好み焼きソース」
そして、番組がスタート。記念すべき第1弾は、広島のオカメソースと組んで開発した究極のお好み焼きソース「大真打」だ。
まず、タレントが広島にあるオカメソースまで行き、工場で原料を混ぜ合わせ試行錯誤している様子をリポートする。同時に大阪・下町にあるお好み焼きの名物店にも赴いてソースの配合の秘密を聞き出し、オカメソースの開発担当者にフィードバック。さらに、大型スーパーに陳列してもらうための交渉に行き、その模様もドキュメントで追いかける。「ASAYAN」と同じように、商品開発から販売準備までの様子を毎週刻々と視聴者に伝えた。
こうして迎えた発売当日。日曜日の午前中の番組では、最後の一押しで煽りに煽りまくる。
放送の直後から、取材カメラを向かわせたスーパーには番組を見て「大真打」を買いに来る人が殺到し、店頭の在庫はあっというまに即日完売となった。さらに他店でも、こちらの目論見どおりに売れ続け、製造した10万本はその日のうちに無事に完売となった。
商品代金300円、ロイヤリティーが5%の1本あたり15円という設定だったので10万本で150万円の収入だ。これを番組制作費に回すことで、潤沢な資金でより充実した番組作りが可能だ。
1回作って1回売っただけでこれだけの儲けが出たのだ。継続して作っていけば、より大きな利益を得られる。私はこの成果を見て、この番組まるごと商品開発&告知パターンは可能性があると確信した。
写真=iStock.com/hirohito takada
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■予算確保の目論見は外れた
ところが、ここで予期せぬ誤算が生じる。
1つ目の誤算はお金の配分だ。当初はこのお金を番組制作費に回せると踏んでいたのだが、この会社の株主になったテレビ上方から「制作費と、この会社の利益をごっちゃにするのは税務上、問題がある」という指摘が入った。
最初の話と違うじゃないかと思ったものの、もともとこの会社が儲かるなどと誰も予想しておらず、本社経理部門も税務上の考慮などしていなかったのだ。上層部の説明にいちプロデューサーである私が逆らうわけにはいかない。泣く泣く了承せざるをえなくなった。
2つ目の誤算は六枝師匠だ。六枝師匠は作った商品を売り続けることより、新しい(面白い)商品を開発することに興味があった。一度番組で扱った商品は再プッシュされることなく、そのまま放置されることとなった。
■「役員報酬、回してくれへんかな」
その後、番組では、きつねうどん味の飴の中に1つだけ辛い一味唐辛子が入っている「新しい大阪土産・キツネの涙」や、すごい刺激で思わず目がさめる「高速道路ガム」などを開発して、それなりのヒットとなった。
あるとき、開発した商品が売れていることを知った六枝師匠が言った。
「北君、代表取締役(番組内での役割であるとともに登記上の役職)の僕にも、役員報酬ちょっと回してくれへんかな」
「師匠、すみません。お金は全部、“上”に巻き上げられてるんです」
本音まじりの冗談でかわしたが、その後も何度か六枝師匠にお金を回すように持ち掛けられた。
そもそも高いギャラを稼いでいる六枝師匠がこの程度の小銭の話をするのは冗談だと思っていたのだが、事情通でもある共演の遠枝さんいわく、「六枝師匠の奥さんが厳しくて、お小遣いが少ないといつも愚痴を言ってるねん」とのことだったので、「ちょっと回してくれ」は意外と本気だったのかもしれない。
肝心の視聴率はといえば、可もなく不可もなくといったところ。その時間帯の過去の平均視聴率よりはややよかったが、それも誤差の範疇で、半年(2クール)がすぎても上昇の兆しが見られなかったことから、ちょうど1年を節目に終了となった。
YouTubeなどのSNSなど影も形もない時代、テレビは最高のインフルエンサーだった。テレビを利用して商品情報の拡散に継続して取り組めば、もっと大きな放送外収益が上られたはずだ。その試みはちょっと早すぎたのかもしれない。
■「月20万円でどうや?」
「北さん、『どんき〜こんぐ』のきびだんご君から困った話を聞いちゃったんですけど……」
長坂ディレクターが声を潜めて話しかけてきた。古本興業所属の漫才コンビ「どんき〜こんぐ」は私のプロデュースする番組の出演者だ。
「じつは六枝師匠がアシスタントの白木さんを口説いているらしいんですよ。『月20万円でどうや?』って言ってるらしいのですが、彼女はそんな気はないみたいで……」
大御所・柱六枝師匠は女好きで知られているが、ついにわが番組のアシスタントにまで手を伸ばしてきたか。
写真=iStock.com/justocker
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「師匠があんまりしつこいようやったらやんわり遠回しに話すけど、でもなんできびだんご君からそんな話が出てくるねん」
「じつはきびだんご君と白木さんができてしまっているらしく……。白木さんが『師匠がしつこくて嫌やねん』って、きびだんご君に愚痴ってるらしいんですよ」
つまり、六枝師匠がアシスタントの白木さんを口説く→白木さんが彼氏のきびだんご君に伝える→きびだんご君が長坂ディレクターに報告→長坂ディレクターが私に伝える……厄介な伝言ゲームがあるものだ。
「『白木君もこの世界で生きていくならいろんな経験をしたほうがええで。どんな経験でもすべて芸の肥やしになるし、とくに年の離れた男とつきあうと、いい意味で色気が出てくるんや』って口説いてきたらしいですよ」
長坂ディレクターが六枝師匠の口調を真似て言う。一緒に番組をしている長坂ディレクターの師匠のモノマネは絶品だ。
■アシスタントの彼氏も浮気
しかし、私には気になることがあった。じつはこの少し前、きびだんご君自身からもうすぐ結婚するという報告を受けていたのだ。
「きびだんご君、近々、結婚するって言ってなかったっけ?」
「はい、来年、大手ディスカウントスーパーのご令嬢と結婚するらしいです。それなのに白木さんとねんごろになっちゃって、マズイですよね」
こちらとしては六枝師匠に注意して、「なんで知ってるねん」とでも言われたら、答えようがない。私は六枝師匠には何も言わず、そのまま知らないふりをしていた。
結局、白木さんが断り続け、六枝師匠もあきらめたようで無事(?)解決したのであるが、この話には続きがある。
北慎二『テレビプロデューサーひそひそ日記』(三五館シンシャ)
漫才コンビ「どんき〜こんぐ」のきびだんご君は予定どおり有名ディスカウントストアの令嬢との結婚話が進んでいた。ところが、白木さんとの関係が奥さんにバレてしまったのだ。
浮気を知った奥さんは彼に漫才師を辞め、芸能界からも身を引くよう勧めた。
そして、そのかわりに父親が経営するディスカウントスーパーの専務になってほしいと伝えた。
芸人以外の仕事にも魅力を感じていたきびだんご君はラッキーとばかり、この話に飛びついた。相方や古本興業の猛反対を押し切ってコンビを解散してタレントを廃業し、古本興業も辞めた。そのタイミングで、私のところにもあいさつに来てくれた。
「いろいろとお世話になりました。芸人を辞めて、嫁さんの実家の会社の専務になることにしました」
洋々たる将来を見据えてか、表情は明るかった。
■結婚式を挙げた翌日に三行半
しかし、女性のうらみは根が深い。結婚式を挙げた翌日、奥さんはきびだんご君にこう伝えたという。
「あんたの浮気はやっぱり許せない。離婚しましょ!」
きびだんご君は幸せの絶頂で三くだり半を突きつけられたのだった。
これがドラマの脚本なら、プロデューサーとして「だいぶできすぎた話やな。もうちょっとリアリティーが出るように考え直そう」と差し戻すところだ。が、こんなことが現実に起こるのだから恐ろしい。
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北 慎二(きた・しんじ)
元テレビプロデューサー
1959年、神戸生まれ神戸育ち。大学卒業後、関西の民放テレビ局に入社し、編成部、東京支社、制作部などに勤務。テレビプロデューサーとして数多くの番組制作に携わる。本書では、テレビプロデューサーの「表の顔」も「裏の顔」も洗いざらい描き出す。著書に『テレビプロデューサーひそひそ日記——スポンサーは神さまで、視聴者は☓☓☓です』(三五館シンシャ)がある。
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(元テレビプロデューサー 北 慎二)