1.4倍の速さで問題を解いた人がテスト前に飲んだドリンクの特徴は…小コストで大リターンの脳力全開テク
2025年4月11日(金)11時15分 プレジデント社
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/designer491
※本稿は、内藤誼人『新版 世界最先端の研究が教えるすごい心理学』(総合法令出版)の一部を再編集したものです。
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■あなたはどれだけ家事をしている?
私たちは、自分がやっていることはよく覚えています。
何しろ、自分自身がやっていることなのですから。逆に他人がやっていることは、あまりよく覚えていません。
夫婦に対して、「あなたは家事全体のうち、何%くらいを自分がやっていると思いますか?」と質問すると、夫も妻も「自分がたくさんやっている」と答えるので、その数値の合計は100%を超えてしまうことが知られています。私たちは、自分がたくさんやらされていると感じやすいのです。
カナダにあるウォータールー大学のマイケル・ロスは、何十組かの夫婦に、20の活動リストを見せました。リストには、「朝食を作る」「皿を洗う」「家の掃除をする」「買い物をする」「子どもの面倒を見る」などと書かれていました。それぞれのリスト項目に対し、どれくらい自分がやっていると思うか、またパートナーはどれくらいやってくれていると思うかを推測させたのです。
その結果、20のうち16の活動で、「自分のほうがたくさんやっている」と答えることがわかりました。80%の活動で、自分がやっていることを多く見積もっているということです。この理由について、ロスは「自分がやっていることはすぐに頭に思い浮かぶからであろう」と解釈しています。
自分がやった事例についてはすぐに頭に思い浮かぶので、それだけたくさん自分がやっているのだと考えやすいのです。そして相手の事例はそんなに頭に思い浮かばないので、「自分ばかりがやっている」と感じてしまうのです。
私が自宅のトイレを使おうとすると、なぜかトイレットペーパーがなくなっていることが多いのです。そのため、私ばかりが、芯を外して新しいトイレットペーパーをセットしているような気がしていました。
「気がしていた」というのは、妻も私とまったく同じようなことを思っていたからです。私が何気なく、「トイレットペーパーの交換は、なんだか俺ばかりがやっているような気がするな」と口にしたところ、「えっ、絶対に私のほうが多いと思うけど」という返事が返ってきたのです。ようするに、お互いに「自分のほうがたくさんやらされている」と感じていたのです。
私たちは、自分ばかりがソンな目に遭っていると感じやすいものですが、それはまったくの誤解に過ぎません。現実には、ほかの人もみなさんと同じようなことをしてくれているわけで、自分では気がつかないだけです。自分ばかりが一方的にソンをしている、ということは通常ありません。
■誰もが「自分は平均以上」だと思っている
私たちがいちばん好きなもの、それは自分自身です。これは間違いありません。
「えっ、私は自分のことが大嫌いなんだけど?」という人もいるでしょう。
けれども、圧倒的多数の人は基本的に自分のことが大好きですし、自分自身を高く評価してしまう傾向があるのです。
スウェーデンにあるストックホルム大学のオーラ・スヴェンソンは、アメリカの大学生とスウェーデンの大学生の、運転免許証を持っている人を対象にして、自分の運転の技術を0点から100点で自己評価してもらいました。
すると、アメリカの学生の93%、スウェーデンの学生の69%は、「自分は平均以上の技術を持っている」と答えたのです。
またスヴェンソンは、「あなたはどれくらい安全運転していると思いますか?」という質問もしたのですが、アメリカの学生の88%、スウェーデンの学生の77%は、「普通の人より、自分のほうが安全運転」と答えていました。
私たちに自己評価をさせると、たいてい「自惚れた答え」が返ってくることが知られています。これを“平均以上効果”と言います。
私たちは、こと自分のことになると、評価の目が曇ってしまうというか、客観的に判断できなくなってしまって、「どんなに悪くとも、自分は平均以上だろう」と勘違いしてしまうものです。もちろん、そんな自己評価は誤りに決まっているのですが。
内藤誼人『新版 世界最先端の研究が教えるすごい心理学』(総合法令出版)
自動車の運転をするときには、「私は運転がうまい」と思うのは危険ですし、「自分だけは事故に遭っても助かるだろう」などと考えるのは、妄想に過ぎません。
なぜそんな風に判断が歪んでしまうのかはわかりませんが、ともかく「私たちは自惚れた自己評価をしてしまいがちなのだ」ということを知っておくだけでも、判断の歪みを修正することができるものです。
それを常に意識して、できるだけ安全な運転を心がけてください。そのほうが事故に遭う危険を避けることができるでしょう。
……などと偉そうなことを言っておりますが、私自身はどうかというと、自動車の運転をするときにはどうしてもスピードを出したくなるので困っています。自分には運転の技術もあると、根拠もないのに信じ込んでいたりします。人間の心は、なかなか自分の思い通りにいかないものです。
■「思い込み」で頭が良くなる
佐藤製薬が販売している「ユンケル」には、いろいろな種類のものがあります。元メジャーリーガーのイチロー選手がユンケルを飲んでいることは有名な話ですが、イチロー選手が飲んでいるユンケルは、「ファンティー」という、ユンケルシリーズの中でも最高クラスのものだそうです。
ユンケルを飲むと、本当に身体にエネルギーが溢れてくるらしいのですが、やはり飲むのであればイチロー選手を真似て、いちばん高いものを飲んだほうがいいのでしょうか。個人的には、価格によって成分が違うということはそんなになくて、ただの自己暗示の効果ではないのかなとも思っています。
「高いドリンクなんだから、効くはずだ!」という単なる思い込みによって、元気が出てくるのです。価格が2倍だから、身体が元気になる成分も2倍入っているのかというと、そんなことはないでしょう。
米国スタンフォード大学のバーバ・シッブは、125名の大学生に実験参加を要請し、「このドリンクを飲むと、頭が冴えてくるんです」と、エネルギードリンクを飲ませました。ただし片方のグループのドリンクには、「1.89ドル」という価格ラベルが貼られていて、もう片方のグループのドリンクには、「0.89ドル」というラベルが貼られていました。もちろん中身は一緒です。それからどちらのグループにも、ワード・パズルを解いてもらいました。
写真=iStock.com/vectomart
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/vectomart
すると、高い価格のエネルギードリンクを飲んだグループでは、解いたパズルの数の平均は9.7で、安いエネルギードリンクを飲んだグループでは6.75でした。
高いドリンクを飲んだグループは、「頭が冴えてくるはず」という思い込みが強化されたのか、本当に頭が良くなってしまったのですから、驚きの結果です。
ちなみに、薬についても「この薬は効くぞ」と思って飲めば、インチキな薬でも薬効が表れてしまうことが知られています。これは“プラシボ効果”と呼ばれる現象です。ユンケルの効果についても、ある程度はこのプラシボ効果によるものではないでしょうか。
「安いものより高いもののほうが効くはずだ」と思って飲めば、本当にエネルギーが身体に溢れてきてしまうのかもしれません。「もし効果がないなら、こんなに高いはずがない」と思って飲めば、本当に効くのです。
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内藤 誼人(ないとう・よしひと)
心理学者
慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。立正大学客員教授。有限会社アンギルド代表。社会心理学の知見をベースに、心理学の応用に力を注ぎ、ビジネスを中心とした実践的なアドバイスに定評がある。『心理学BEST100』(総合法令出版)、『人も自分も操れる!暗示大全』(すばる舎)、『気にしない習慣』(明日香出版社)、『人に好かれる最強の心理学』(青春出版社)など、著書多数。
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(心理学者 内藤 誼人)