「赤ちゃんの肌は潤っている」は大間違い…医師が「子供のアトピー性皮膚炎を防ぐにはコレ」という方法

2025年4月15日(火)16時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Suzi Media Production

乳幼児のいる家庭はより細かな注意が必要なのが、季節を問わない感染症対策、そして肌ケアだ。小児・新生児・感染症診療のスペシャリストである医師の松永展明さんは、アトピー性皮膚の発症確率を32%下げる方法があるという——。

※本稿は、『プレジデントBaby 0歳からの知育大百科2022完全保存版』の一部を再編集したものです。


除菌編①

■風邪・感染症対策は何に気を付けたらいい?


例えば、赤ちゃんの風邪予防で一番重要なのは、家族が感染予防を徹底し、自宅にウイルスを持ち込まないことです。風邪は免疫が低下した体内に、ウイルスが侵入することによって引き起こされます。ウイルスは主に人を媒介して運ばれるので、赤ちゃんにウイルスを近付けないよう注意しましょう。


特に気を付けてほしいのが、満員電車や職場などで人との接触が多いお父さんやお母さん、学校や幼稚園、保育園に行っているきょうだいです。帰宅したら手洗いでウイルスを洗い流しましょう。手洗いをしっかりすることで、感染症はかなりの割合で防ぐことができます。コロナ禍によって、手洗い・マスク着用が浸透したことで、風邪やインフルエンザの感染者数はかなり減ったことが知られています。


写真=iStock.com/Suzi Media Production
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Suzi Media Production

帰宅時の手洗いは指の間や爪の先、手首回りなどもしっかり洗いましょう。手洗いにはウイルスを物理的に洗い流す効果が、せっけんにはウイルスの細胞膜を壊して無効化するといった効果があります。流水で15秒洗うだけで、手に付いたウイルスは100分の1に、ハンドソープを使い10〜30秒洗ってから流水ですすぐと1万分の1にまで減少します。


おうちの中でできることとして挙げられるのは、床やテーブル周りの除菌です。家族の唾液が飛んだり、手で触れたりしやすい場所ですし、赤ちゃんも比較的触りやすいので、アルコールシートなどで拭いておくといいでしょう。


また、換気もウイルスに対して非常に有効な手段です。窓と玄関などの2カ所を開けて風の流れをつくることで、屋内のウイルスを空気ごと外に流すことができます。


「窓を開けたら、外からウイルスが入ってくるのでは?」と心配される方もいますが、人からの飛沫によって感染するため、感染者が近くにいない限り大丈夫です。


換気する際には、必ず安全を確かめてから開けるようにしてください。近年、高層マンションから子どもが転落する事故が相次いでいます。3歳ごろになると、子どもの運動能力は親の予想以上のペースで向上します。ちょっとした柵や段差は簡単に乗り越えてしまうので、気を付けてほしいですね。ウイルスを持ち込まず、家が安全な場所になれば除菌も換気も普段通りで大丈夫です。


除菌編②

■外で遊ばせる際に気を付ける点は?


公園などで遊んだり、ちょっとお出かけをしたりする際には、遊具や水道の蛇口、ドアノブなど、ほかの人が触る場所にウイルスが付着している可能性があります。遊び終わった際には、手洗いをしっかりすることが大事です。また、携帯型のお手拭きやアルコールジェルなどがあると便利かもしれません。


新型コロナの影響や、赤ちゃんを日焼けから守ろうと、家にこもりがちになっているご家庭も多いかもしれませんが、日光にまったく当たらないとビタミンDが生成されなくなり、免疫力低下や「くる病」という骨が軟化する病気になることもあります。


新型コロナウイルス感染症の流行以前から、乳児の「くる病」が少しずつ増加しているので、適度な日光浴も大切です。日中に1日15〜20分くらいは外に出て日の光を浴びさせてください。


除菌編③

■手洗いやマスクを嫌がりますどうしたらいいの?


手洗いは、0歳児ならお父さんやお母さんがやってあげましょう。冬に冷たい水で洗うと嫌がることもあるので、少し温かいお湯で慣れさせてやるのがおすすめです。1〜2歳はイヤイヤ期なので、手洗いを嫌がる子も多いかもしれません。手洗い歌を歌うなどして、手洗いは楽しいというイメージを持たせることが大事です。


写真=iStock.com/monzenmachi
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/monzenmachi

どうしても手洗いを嫌がるようでしたら、手を拭くだけでも構いません。お母さんやお父さんが、ぬれたタオルなどで手のひらや指の間をサッと拭いてやることで、ウイルスへの感染リスクを減らすことができます。アルコールの入った除菌シートやスプレーなどは、肌が弱い子にとっては肌荒れの原因になりかねないので、手が荒れてしまうようであれば、無理に使わないほうがいいでしょう。


手洗いは非常に効果的な除菌方法ですが、無理に手洗いをさせようとすると、子どもは怖がったり、苦手意識を持ったりしてしまいます。親御さんには、神経質になりすぎず、手洗いには代替手段があるという心の余裕を持ってほしいですね。


マスクについては、幼児に着ける必要はありません。2歳未満は自分でマスクを外すことができないため、窒息のリスクがあることが指摘されています。


また、子どもによっては、マスクが気になってしまい、かえって頻繁に顔を触ってしまいます。鼻や口、目に触れることで、手に付着したウイルスが体内に侵入する可能性があります。マスクは“ひもを持って着ける”“表面部分は触らない”“口と鼻をしっかり覆う”という正しい着け方をしていなければ効果がありません。


こうした点を踏まえて正しく使える2歳以上の子であれば、屋外でマスクを着けるのは効果的です。就学までは、子どもにあった方法で感染対策をすることで十分です。


子どもは外気温の影響を受けやすく、熱中症になりやすいため、夏場に暑い環境に行ったときや、運動した後などは、マスクを外してあげてください。


保湿編①

■赤ちゃんの保湿は何のために必要なの?


赤ちゃんはみずみずしく潤っているというイメージをお持ちの方もいますが、実はまったく違います。


赤ちゃんの皮膚は大人に比べて半分程度の厚みしかなく、体積に比べて表面積が大きいのです。また、体温が高く汗もかきやすいことから、水分が蒸発しやすく、乾燥しやすいという特徴があります。そのためダメージを受けやすいのです。


赤ちゃんの肌を保湿してあげることには、大きく分けて二つの効果があります。


一つはおむつかぶれなどの皮膚トラブルの回避です。


もう一つはアレルギー予防です。近年の研究で、ぜんそくや食物アレルギーといったアレルギー疾患を保湿によって予防できるということがわかってきました。


身の回りの空気中や床などには、見えない細かなアレルギーの原因物質が存在しています。たとえば、朝食の牛乳を少しカーペットにこぼして、そのタンパク質がほこりと一緒に舞っているといった具合です。


このほこりが炎症を起こした皮膚から体内に入ると、体が入ってきた物質をアレルギー源だと判断し、アレルギー反応を起こしてしまうのです。


また、アトピーは遺伝しやすい病気の一つですが、生後1週間以内から毎日保湿をすることで、生後8カ月までのアトピー性皮膚炎の発症を32%下げるという報告があります。赤ちゃんの肌を保湿することで、皮膚の炎症を予防し、肌のバリア機能を高め、アレルギー反応を防ぐことができるのです。


お風呂から出た後はできる限り保湿することを心がけましょう。体を洗うと皮脂がとれてしまい、とても乾燥しやすくなります。


保湿は朝と夜の2回してやるのが理想的ですが、時間的に難しいようでしたらお風呂後の1回でも大丈夫です。肌が乾燥しやすくなる生後2カ月を過ぎたら、毎日の習慣として定着させてください。


保湿編②

■おすすめの保湿剤は? 部位によって変えたほうがいい?


赤ちゃん向けの主な保湿剤としては、ワセリン、ヘパリン類似物質含有製剤などのローションやクリームタイプ、昔からのパウダーなど、さまざまな種類があります。一般的に効果が強いものほどべたつきが強く、伸びにくいという傾向にあります。乾燥している部位には強い保湿剤を塗って、保護してやるのが基本的な考え方です。ただ、あまり厳密に考えず、保湿効果や使い勝手、子どもの好き嫌いも加味して選ぶのが、賢い使い方といえるでしょう。


ワセリンは保湿力が高いのですが、その分べたつく感覚があり、気持ちが悪いと感じる子もいます。乾燥がひどい子や、皮膚が荒れた子に一定期間使うという方法がいいでしょう。


ヘパリン類似物質含有製剤は保湿力が高いですが、ワセリンよりべたつきが抑えられており、伸びやすいのが特徴です。


乾燥が強い子には、個人的には保湿力が高く、肌のバリア機能を高めてくれるセラミド機能成分が入ったものもおすすめです。


パウダーは保湿性という点では少し劣りますが、ワセリンなどを塗った箇所をカバーするように塗るとべたつきを抑えてくれるので、べたべたを嫌がる子どもには効果的です。


写真=iStock.com/StockPlanets
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/StockPlanets
保湿編③

■赤ちゃんの保湿のコツを教えて


赤ちゃんの保湿は、日々の習慣として定着させてほしいです。毎日続けるのは大変だと感じる方も多いですが、赤ちゃんは体の表面積が小さいので、保湿剤を塗る作業は意外と短時間で終わります。赤ちゃんは飽きっぽく、同じ体勢で待たされるのを嫌がります。逃げられたり、ぐずられたりしないように、優しくかつ手早く、遊びながら塗ってやってください。スキンシップも兼ねられておすすめです。


大人の手のひら大の面積に対して、1円玉大くらいの量の保湿剤を塗ってやるのが理想です。


お風呂に入れる前に、あらかじめバスタオルを敷いて保湿剤を準備しておくなど、手短に終わらせる工夫も意識的に行いましょう。


お風呂はふだん見えにくい肌の状態などをしっかりチェックする良い機会です。お風呂で温まると、ふだんは見えにくい発疹が目立つようになります。多くの場合はお風呂上がりに涼しい所にいるとおさまりますので、慌てずに様子を見てやってください。発疹がなかなか消えないようでしたら、医師に相談してみてください。


■子どもにアレルギー検査を受けさせたほうがいいの?



『プレジデントBaby 0歳からの知育大百科2022完全保存版』

赤ちゃんが頻繁に頭や顔をかいてしまう場合、かゆみの原因の多くは乾燥によるものです。それ以外にはアレルギー、虫刺されといった原因が考えられます。


アレルギー検査は1歳以降でないと反応が出にくく、適切な結果を得られないことがあります。症状がひどい場合には医師に相談してください。


アレルギー検査は血液検査、アレルギー原因物質を肌に付着させる皮膚検査、アレルギー原因食品を食べさせる負荷試験などがあります。日本の子どもにアレルギーが多い原因のひとつに、「生活環境を清潔にしすぎている」ということがいわれています。免疫を獲得するうえで、子どものうちに、ほどよくばい菌などにも触れておくことが必要です。腸など正しいルートから食べ物なども含めて吸収させてください。また、子どもの健康を気遣うのは大事ですが、除菌や消毒に神経質なまでに気を使うのはおすすめできません。


ただ、弱った皮膚からばい菌が入ると「これは危ない」と反応してアレルギーになる可能性が高まります。保湿によって皮膚を守ることの重要性は、忘れないようにしてください。


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松永 展明(まつなが・のぶあき)
医学博士
2003年順天堂大学医学部卒業後、小児・新生児・感染症診療に従事。現在は国立国際医療研究センターAMR臨床リファレンスセンター臨床疫学室長。
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(医学博士 松永 展明)

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