親が絶対に知っておくべき「人と会うと元気になる子」と「一人の時間が必要な子」を分ける決定的な違い

2024年4月16日(火)15時15分 プレジデント社

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子供の気質的な特性に対して、親はどう対応するべきか。心理学者で遺伝学研究者のダニエル・ディック博士は「外向性の高い子どもは社交的ですぐに友達をつくることができる一方で、低外向性で特に情動性が高くない子どもは、あまり手がかからないという利点がある。しかし、物静かで親や先生との関わりも少ないので、『大人をあまり必要としていない子』という印象を与えてしまい、大人から必要な配慮を受けられないことがあるから注意が必要だ」という——。

※本稿は、ダニエル・ディック(著)、竹内薫(監訳)『THE CHILD CODE 「遺伝が9割」そして、親にできること わが子の「特性」を見抜いて、伸ばす』(三笠書房)の一部を再編集したものです。


■外向性と内向性は別物ではなくひと続き


本稿では、外向性の高い子どもから低い子どもまで、どのような特性を持つのかをお話しします。これは、あなたが自分の子どもをよりよく理解し、その子の外向性レベルが子どもの行動や親子関係に与える影響を理解するのに役立ちます。


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私たちは外向性と内向性を別物のように表現しますが、実際はひと続き(スペクトラム=連続体)であることを覚えておいてください。


研究の世界では、人間は外向性の高い人から低い人までさまざまであると考えます。ここでは「外向性」と「内向性」という言葉を、ひと続きの尺度の中で高いほうと低いほうに位置する子どもを表わす用語として使います。


ですが、子どもは必ずしも「どちらか一方」ではなく、幅広いグラデーションの中にいて、多くの子どもはその中ほどに位置すると覚えておくことが重要です。中程度の外向性の子どもは大人同様、外向性と内向性の特徴を併せ持つでしょう。


■外向的な子どもの「よい面」「望ましくない面」


私の3歳の息子が幼児用プールの縁に座っていると、同年齢の女の子が歩いてきて隣に座りました。


「こんにちは、私はサバンナよ。あなたの名前は? 私たち、お友達になれると思うの。プールっていいわよね。うちにもプールがあるの。いつか私の家に来てくれないかしら。ああ、楽しみ! ママたちに頼んでみましょうよ。おままごとだってできるし。あなたがパパで、私がママになるのよ。おもちゃもたくさんあるわ。どんなおもちゃが好き?」


息子は黙ってそこに座ったまま、その子をまるで宇宙からやってきた異星人であるかのように見つめていました。サバンナは完全に外向的な子どもで、内向的なうちの息子はどうしていいかわからずにいました。


外向性の高い子どもは、知らない人との出会い、初めて行く場所、新たな挑戦などを自然に楽しみます。そして、周りから元気をもらうことができるのです。


初対面の人とでも積極的に会話をしますし、おしゃべりです(私の幼少期のあだ名は「おしゃべりティリー」、母は「言い返し屋のリン」。典型的な外向的な家系です)。


外向性の高い子どもは思ったことをすぐ口に出す傾向があり、その日の出来事や思いついたことをすべて話したがります。さまざまな活動や出会いを好みます。注目されることに抵抗がなく、むしろ注目されたいと思っています。


■生まれながらに「人を惹きつける」能力を持つ


あなたが外向性の高い子どもを持つ親であれば、彼らにはいくつもの素晴らしい点があることをすでにご存じでしょう。外向性の高い子どもは社交的で、すぐに友達をつくることができます。


外向性の高い子どもを遊び場に連れて行けば、走っていって他の子どもたちと遊び始めるでしょう。近所でバスケットボールごっこが始まれば、すぐにその輪に入っていきます。


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外向的な子どもは愛嬌があります。自分の子どもが周りの人と触れ合うのを見るのは楽しいものです。甥(おい)のグレイソンが3歳のとき、浜辺でボールを投げている年上の子たちのところにトコトコ歩いて行き、「やあ、みんな、僕もやっていい?」と言ったのを覚えています。


あまりのかわいらしさに、年上の女の子たちがその日一日、グレイソンの相手をしてくれました(母親はしばらくグレイソンの後を追いかけ回さずに済みました)。


外向的な子どもは他人と容易に接することができるため、大人にも子どもにも好感を持たれることが多いのです。


知らない人と出会い、新しいことに挑戦する意欲は、子どもにとって成長と学習の機会を増やします。他の子どもや大人との交流が増えることで社会性が育まれますし、知らない場所へ行く意欲は、世界を見て学ぶ機会を増やします。


■話し方や身振りの一致は相手の好感度を上げる


このように、外向性の高さは、他者との交流や新しいことへの挑戦によってポジティブな感情を生み出し、このポジティブなフィードバックの連鎖が目標達成への意欲を高めると考えられているのです。


また、このタイプの子どもはもともとポジティブ思考で、それが困難に直面したときのクッションの役割も果たすと言われています。


外向性は学校、ひいては職場で有利に働く可能性があります。なぜなら、外向的な人は生まれながらのリーダーとして認識されることが多いからです。社会は典型的な外向性の特徴を高く評価する傾向にあります。


なぜ外向的な人が優位な位置に立てるのか、最近の研究では、意外なのですが、その理由として、相手の身振り手振り、話し方、動作などを無意識に「まねる能力」にたけていることが挙げられています。


これは「擬態」と呼ばれ、他人により関心を向けることから生じるものと考えられています。話し方や身振りの一致は相手の好感度を上げることが知られており、人々が外向的な人に惹(ひ)かれる理由の一つになっている可能性があります。


■「ありあまるエネルギー」が時にトラブルを招く⁉


外向性の高い子どもを持つと、素晴らしいことがたくさんありますが、一方で、あまり好ましくないこともあります。外向的な子どもは常に活発に動き回る傾向があります。


ともすると、活動的な彼らの欲求は、あふれんばかりのエネルギーとなり、親は、常に子どもに何かさせておかなければならなくなります。特に、外向性が低い親は、こうした活動で疲弊してしまいます。


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また、外向性の高い子どもは自制心(自己制御能力)が低いケースが多いのですが、自制心が弱い上にエネルギーにあふれているため、家の中のものを壊してしまうこともあります。


私の友人の一人は、「二人目(高外向性)の子どもが生まれるまで、こんなに多くの親が朝から外出しているなんて知らなかった」とよく冗談を言っていました。


上の子(低外向性)のときは、子どもがそばにあるおもちゃで遊んだり、レゴブロックを組み立てたり、パズルをしたりしている間、コーヒーを楽しむのが朝の日課だったそうです。


しかし二番目の子どもが生まれてからは、静かでリラックスできたはずの土曜日の朝は、子どもが目を覚ましてベッドから出る瞬間からカオスと化したのです。


■思春期になるとアルコールや薬物の使用の懸念も


もう1つの困難は、外向性の高い子どもは常に他人との交流を求めるため、正直なところ、時に失敗もあるということです。外向的な子どもは(私たちと同様に)自分の世界でのあり方しか知らないので、「自己認識」に欠けることがあります。


相手が子どもであれ大人であれ、誰もが常に仲間を求めているわけではないことに気づかない傾向があります。外向性の高い子どもは、トイレや寝室など、あなたがどこへ行くにもまとわりつきます。


夫がよく私に言うように、ひっきりなしに続く会話ですべての人が元気が出るわけではありません。


もしあなたが外向性の高い子どもの親なら、もう1つ気をつけなければならないことがあります。社交的な小さな子どもの頃は愛らしくても、ティーンエイジャーになると悩みの種になるかもしれません。


外向性の高い子どもは年齢が上がるにつれ、親にいろいろと難題を突きつける可能性が高くなります。同年代の仲間と一緒にいるのが好きなため、周りの影響を受けやすいのです。その社交的な性格から、他人の評価をより気にするようになります。


思春期になるとアルコールや薬物の使用など、危険な行動を取る可能性が高くなります。今はビヨンセの最新ヒット曲で踊りながらあなたの友人を楽しませているかわいい幼児も、15年後には大学のパーティで、テーブルに上がって踊りまくっている可能性が高いのです。


■内向的な子どもの「よい面」「望ましくない面」


夫の連れ子は、放っておくと一日中、家の中で遊んでいます。小さな食器を出してきては、しばらくの間、おままごとをします。それからお人形遊びをします。


本を取り出して読書用の椅子(いす)に座り、イラストを眺めます。それからぬりえをしたりパズルをしたりします。馬のおもちゃで遊び、空想の世界をつくり上げます。


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私たち夫婦は、10分ほどおままごとやお馬さん遊びをすると、もう髪をかきむしりたくなるほどうんざりしてしまいます。


外向性の低い子どもは、自分の考えや感情、遊びといった内面的な世界に深く入り込みます。一人の静かな時間が楽しいのです。絶えず活発に動き回ったり、冒険をしたり、人と接したりする必要は感じません。むしろ刺激が強すぎると圧倒されてしまいます。


大勢の人と過ごしたり忙しく活動をしたりした後は、充電のために静かな時間が必要になります。


内向的な子どもは、大人数よりも少人数で過ごすことを好みます。注目されることを嫌がり、初対面の人と打ち解けるまで時間がかかります。


外向的な子どもは広い交友関係を持ち、さまざまなことに興味を示しますが、内向的な子どもは少数の親しい友人とつきあうのを好み、何か一つに集中することを楽しみます。


しかし、一緒にいて心地よく感じたり、ある話題に夢中になったりすると、とてもオープンでおしゃべりになるため、「あの魅力的な子どもが、人といるときに突然無言になるのはどういうわけだろう」と思うかもしれません。


外向性の低い子どもは新しい活動や集団に参加する前に、まず観察することを好みます。


自分の意見を言えるように、また、積極的に発言できるようにサポートする必要があります。


■「静かな時間」が子どもの考える力を伸ばす


外向性が高いことによる優位性が注目されがちですが、外向性が低いことによる利点も多くあります。低外向性の子どもは(特に情動性が高くない場合)、あまり手がかかりません。


他人のプライバシーを尊重する傾向があり(つまり、あなたも一人の時間を持てるかもしれませんね!)、学校では、それほど人にまとわりつかず、過度に騒いだりしません。


流行や仲間に影響されにくく、自分なりの視点や考えを持とうとします。物事を深く考えてから決断し、行動に移す傾向があります。


物理学者のアルバート・アインシュタイン博士は内向的な性格の持ち主として有名で、「静かな生活の単調さと孤独が創造的な精神を刺激する」と述べているほどです。


内向的な人は創造的で、思慮深く、より意識的であることが多いようです。人と深くつながることを好み、量より質を重視します。また、プライベートを大切にする傾向があるため、自立心が旺盛(おうせい)です。


■疲れやすく、繊細な一面も


内向的な子どもは、新しいことに挑戦させるのには説得が必要なことが多いようです。自分の居心地のよい場所を好むので、初対面の人や初めて行く場所では疲れてしまいます。


そのため、少し背中を押されないと、未知の世界を探検したり、知らない人に会ったりしたがりません。社会的な場面は彼らにとってストレスになりがちです。


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情動性が高い場合、苦手な状況に置かれると、かんしゃくを起こしたり暴れたりすることがあります。


他人と接することで消耗するので、活動後に多くの休息時間を必要とします。十分に休息できないとイライラしたり機嫌を損ねたりします。


低外向性の子どもは、物静かであるために見過ごされる危険もあります。外向的な子どものように注目されることもなく、発言することもあまりありません。


親や先生との関わりも少ないので、「大人をあまり必要としていない子」という印象を与えてしまうこともあるでしょう。そのため大人から必要な配慮を受けられないことがあるのです。


また、自立心が旺盛で自分で考えることができるため、周囲の影響を受けにくく、仲間からのプレッシャーに強い反面、指示に素直に従えないという欠点もあります。自分の考えに満足し、返答に時間がかかるため、頑固に見られやすいでしょう。


発言や即断を迫られたりするとストレスを感じたり固まってしまったりすることもあるため、外向的な子どもに比べて意固地で、要領が悪いと誤解されることもあります。


さらに、自分は他の子どもたちのように好感を持たれるのだろうか、頭がいいのだろうか、それとも何か問題があるのだろうか、といった疑問を持つようになることもあります。


■「内向的」と「内気」は違う


内向的な子どもは「内気」と表現されることがありますが、実は内気と内向的であることは別物です。この2つが混同されるのは、どちらも集団行動に参加したがらない、他の子どもと一緒に遊ばないなど、似たような行動を示すからです。



ダニエル・ディック(著)、竹内薫(監訳)『THE CHILD CODE 「遺伝が9割」そして、親にできること わが子の「特性」を見抜いて、伸ばす』(三笠書房)

しかし、低外向性の子どもは一人でいることが好きで少人数のグループを好むという点で、内気な子どもと大きく異なります。内気な子どもは、集団の一員になりたいけれども人づきあいに神経質(極端な場合は社交不安障害)になりがちです。


内気な子どもは、外向性の尺度で言えばどの位置にもあてはまります。外向性が中程度から高度である場合、他の子どもと接することに神経質であるわりには他人と一緒にいたいという気持ちも強いため、孤独感にさいなまれることがあります。


一方、外向性の低い子どもは他の子どもとの交流に問題はなく、ただ単に交流しないことを選択しているだけなのです。


自分の子どもが外向性が低いのか内気なのか、そこを見極めるのは親であるあなた自身です。自分に問いかけてみてください。お子さんは一人でいるのが嫌な様子ですか。他の子どもたちと一緒にいたいけれど、不安で一緒にいられないのでしょうか。


もしどちらかの答えがイエスなら、あなたの子どもは内向的というよりむしろ内気で、社交性を高めることが重要なのかもしれません。


人見知りは(ほとんどのものがそうであるように)遺伝的な影響もありますが、それ自体はいわゆる気質的な特性ではなく、親がサポートすれば克服できるものであることは確かです。


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ダニエル・ディック
心理学者、遺伝学研究者
ラトガース大学ロバートウッドジョンソン・メディカルスクール教授。インディアナ大学で心理学博士号を取得した後、アメリカ国立衛生研究所(NIH)の研究資金を獲得しながら心理学と遺伝学の境界領域の研究を続け、数々の学術賞を受賞。TEDx Talks、TIMEはじめ大手メディアのインタビューなど、広く一般向けの講演活動も積極的に行なう。
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竹内 薫(たけうち・かおる)
サイエンスライター
1960年、東京都生まれ。東京大学教養学部教養学科(科学史・科学哲学専攻)、東京大学理学部物理学科卒業。マギル大学大学院博士課程修了(高エネルギー物理学理論専攻)。理学博士。大学院を修了後、サイエンスライターとして活動。物理学の解説書や科学評論を中心に100冊あまりの著作物を発刊。物理、数学、脳、宇宙など、幅広いジャンルで発信を続け、執筆だけでなく、テレビやラジオ、講演など精力的に活動している。
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(心理学者、遺伝学研究者 ダニエル・ディック、サイエンスライター 竹内 薫)

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