ホテル・レジャー事業で驚異の営業利益700%増の鉄道会社が5位…平均年収が高い「陸運業」ランキング2024
2025年4月16日(水)9時15分 プレジデント社
■1位はヤマトホールディングスの1191.7万円
プレジデントオンラインは、東証33業種の「陸運業」に分類される企業62社の平均年収ランキング(2024年版)を作成した。
基にしたデータは直近の年次決算期における有価証券報告書(2023年10月期〜2024年9月期)。データ抽出では、経済・金融データサービスの株式会社アイ・エヌ情報センターの協力を得た。
今回調査した陸運業に属する企業のうち、トップ10社の従業員平均年収額は865.6万円だった。表にしたランキング62位までの従業員平均年収額は627.4万円。ちなみに全国平均(3744社)は652.2万円となっている。
■物流業界が年収アップしているワケ
陸運業を営む企業の「給料トップ」はヤマトホールディングスだった。平均年収は前年から49.7万円増加し、1191.7万円。全62社のうち、唯一1000万円台に達している。
ただ、同社は持株会社なので、一般的に従業員数が少なく役職者や幹部クラスが中心となるため、平均年収が高くなりやすい。
ヤマトホールディングスの2024年3月期業績は、営業収益が前年比420億円のマイナスとなる1兆7586億円。営業利益、当期純利益もともに前期比でマイナス成長だった。
有価証券報告書を見ても、平均年間給与が上昇している一方で従業員数は減少している。単純に「従業員数×平均年間給与」で計算すると、2022年度は2億3983万円だったのに対して2023年度は2億1452万円。総支払額は2500万円ほど減少している。
陸運業界の平均年収2位は、NIPPON EXPRESSホールディングス。前年からの上昇幅は全62社中で最も大きく117.0万円で、平均年収は937.7万円となった。
こちらもヤマトホールディングス同様、業績は前年度から減少している中での給与アップだ。ただ、こちらはヤマトホールディングスと異なり従業員数×平均年間給与で算出した総支払額が1億円近く増加している。
物流業界の大手が厳しい業績でも賃金アップを実現している背景には、深刻な人手不足がある。少子高齢化で業界を問わず働き手が不足している中、特に物流業界は厳しい。
帝国データバンクによると(※)、2024年度に人手不足による倒産(法的整理、負債1000万円以上)が起きた件数は350件。業種別にみると建設業の111件が最多で、続いて物流業(42件)となる。
(※)出典=帝国データバンク「2024年度の人手不足倒産2025年4月4日報」(参照=2025年4月9日)
■「線路が短い」鉄道会社が上位に
3位以降は鉄道系の企業がランクインした。
3位の相鉄ホールディングスの平均年収は、前年から52.9万円増加して901.4万円。グループ内の中核企業である相模鉄道は、大手私鉄の中で最も営業距離が短い。現在、最も営業収益を稼いでいるのはスーパーマーケットなど流通業だ。
相鉄本線を走行する特急列車(2019年4月29日 星川駅—天王町駅間)(写真=長門早苗/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons)
4位は阪急阪神ホールディングスがランクインした。前年比で42.2万円増加して、平均年収は870.9万円。傘下の阪神電気鉄道は、相模鉄道に次いで大手私鉄のうち2番目に総営業距離が短い。阪急阪神ホールディングスの稼ぎ頭は不動産セグメントで2023年度は3182億円。その他、阪神タイガースや宝塚歌劇団といったエンタテインメントセグメントも大きな特徴といえる。
5位は西武ホールディングスで、平均年収は834.2万円。前年からは23.0万円増加した。池袋を拠点に都市交通・沿線事業を手掛けるだけでなく、ホテル・レジャー事業に強みを持つ。同事業の2023年度の売り上げは、新型コロナウイルス感染症の5類移行など追い風もあって前年比17.7%増となる2292億円で、営業利益にいたっては驚異の707.1%増となった。
6位は京阪ホールディングス。前年から58.1万円増加して平均年収は803.7万円だった。売り上げ・利益ともに不動産業が突出しており、2023年度はホテル売却やマンション販売といった販売面が好調だった。
■東急の虎視眈々
7位のカンダホールディングスは、1943年に東京・神田区内の運送会社16社が統合して生まれた企業だ。現在は総合物流企業として幅広い品目を扱っており、最も多いのは「医療・薬品・HBC」で全体の3割ほどを占める。2023年度の平均年収は785.5万円で、前年から18.9万円増加した。トップ2のヤマトホールディングスおよびNIPPON EXPRESSホールディングスと異なり増益を果たしている。
8位は近鉄グループホールディングス。平均年収は、前年から67.9万円ふえて780.1万円だった。1910年に大阪・上本町と奈良を結ぶ奈良軌道として設立し、過去には野球事業として大阪近鉄バファローズを保有していた。祖業の運輸業も営みつつ、現在の稼ぎ頭は「国際物流事業」だ。
9位は東急。沿線開発に強みを持ち、ここ数年は渋谷の再開発を積極的に進めている。2023年度は売り上げが2ケタ成長しているだけでなく、営業利益は前年比112.8%増の949億円。しかしながら、平均年収はトップ10企業のうち唯一前年比マイナスとなっている(20.2万円減の776.7万円)。
有価証券報告書を参照すると、前年から従業員が40人ほど増加し、平均勤続年数が下がっている。総支払額自体は3000万円ほど増えていることから、業績好調に伴う人員拡大によって、相対的に平均年収が押し下げられている、健全な状態といえそうだ。
10位はAZ-COM丸和ホールディングスがランクインした。「桃太郎便」ブランドを展開しており、物流センター業務をコアに持つ。平均年収は774.1万円で、前年から30.8万円増加した。
全企業の平均と比較し、今回集計した陸運業界の平均年収は低い。ただ、食品量や自動車業界の平均年収の増額が10万円台にとどまったのに対し、陸運業では20万円超となっており、今後も人手不足を背景にした賃上げ圧力は収まりそうもない。各社の「経営努力」が問われる局面が続く。
(プレジデントオンライン編集部 図版作成=大橋昭一)