「先輩後輩の関係がしんどい…」ANA vs JALでCA中途採用の“仁義なき空中戦”が始まった

2025年4月17日(木)18時0分 文春オンライン

「昨年秋、仕事を休む社員がすごく多い日がありました。ちょうど、JALの中途採用の最終面接の時期だったので、職場では、『大量に転職するのではないか』と噂になりました」


 こう語るのはANAの若手客室乗務員(CA)だ。


◆◆◆


インバウンド需要の急増で黒字化


 国内航空会社の2大大手であるJALとANA。コロナ禍では旅客数の減少で、収益が大きく低迷した。


 経済部記者が解説する。


「2022年3月期まではともに巨額の赤字。ですがその後はインバウンド需要の急増も手伝い、黒字化を経て、現在は業容の“拡大期”に入っています」


「JALに移ろうかな」という声が多い


 業界関係者が語る。


「今、航空業界は人材の取り合い。厚遇を提示する会社には、どんどん人が流れます」


 こうした中、冒頭のANAのCAが続ける。


「コロナ禍の直前の19年度に新卒採用された世代を中心に、『JALに移ろうかな』という声が多い。20年度以降、しばらく採用を停止していたので、この世代はずっと“下っ端”のまま。さらにコロナ後は新規路線の開設が相次ぎ、異常に忙しくなりました」





 不満の背景には、“社風”もあるようだ。


「よくANAは『体育会系』と言われますが、先輩後輩の関係がしんどい。同期がお局CAに目をつけられ、海外のフライト先で1人だけ食事に誘ってもらえないことがあった。若手の間では、こうした先輩の情報をクラウド上に共有し、参加者は自由に書き込んでいる。それに比べJALはのほほんとした印象です」(同前)


JALとANAの待遇の差


 別のANAのCAが言う。


「待遇面で言うと、基本給に加え搭乗中の『フライト時給』というものがありますが、ANAは新人が500円からスタートするのに対し、JALは700円から。フライト時間は私たちが月90時間程度飛ぶのに対し、JALはもっと少ないと聞きます。それにJALは寮や借り上げの社宅があるのに、ANAでは9900円の住宅手当しか出ません」


「ANAが羨ましい点もある」


 こうした憧れには“隣の芝生は青い”面もあるようだ。JALの中堅CAの話。


「確かに私たちのフライトの平均は80時間ぐらい。ただ、昨年、CA出身の鳥取三津子社長が就任してから、CAは『リードキャビンアテンダント(LC)』に昇格がないままエコノミークラスの責任者を担当させられる制度に変わった。大きく給与が上がるLCに上がらないまま責任者となるため、これが不満で辞めた人もいます。借り上げの住宅に関しては入社時に申請しないと後からは入れません。住宅手当は貰えませんからANAが羨ましい点もある」


 別のJAL関係者は、


「ANAのほうが社員の給与が安いとされるが、それは平均年齢が若いからで、同世代であまり差はないと思う。上下関係は向こうのほうが厳しいとは聞きますが」


ANAグループとJALグループ間でのCAの転職


 JALは10年に経営破綻し、巨額の債権放棄と公的資金注入を受けた。


「1度倒産したJALのほうがANAより有利子負債が軽い分、オープンに施策を打ち出せる印象です」(金融関係者)


 両社の関係者に取材したところ、ANAグループとJALグループ間でのCAの転職は、昨年度に限ればどちらも15名程度。コロナが落ち着いてからは、キャリアアップ転職も含めそれぞれ50人前後の“大移動”があったという。


 あらためてJAL広報に聞いてみると、「(転職者の)前職についての回答は差し控えます」。ANAの広報は「我々は転職先を把握しておりません」と述べるにとどめた。


 仁義なき空中戦は続く。


(「週刊文春」編集部/週刊文春 2025年4月10日号)

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