「安心して食べられる国産野菜をつくりたい!」名古屋のゲーム会社が、魚といっしょに野菜を育てる“アクアポニックス”農場を始めるまで

2024年4月17日(水)10時0分 PR TIMES STORY

私たちスーパーアプリは、名古屋を拠点とするITベンチャー企業です。2010年に飯沼正樹が設立しました。

当初はモバイルコンテンツやゲームの開発から始まりましたが、最近ではゲーム開発で培った技術を活かしてスマートアグリ事業へ進出しました。具体的には、水耕栽培や魚の養殖において重要な、水質などの環境データをモニタリングできるIoT機器「マナシステム」の開発を行いました。

また、2022年には自社農場である「マナの菜園」を開設しました。この農場では、アクアポニックスという新しい農法を実践し、魚と野菜を一緒に育てることで、機器の有効性を実証しています。

私たちの事業内容を人に伝えると、「どうしてゲーム会社が農業を始めたの?」と驚かれることもありますので、ここで私たちの歩みをご紹介しましょう。

世界中の人々にひとときの娯楽を

創業時は、日本国内向けの携帯電話用のモバイルコンテンツやゲームの企画・開発を行っており、やがて市場のトレンドに合わせてスマートフォンへ移行しました。

現在、私たちが注力しているのは、Webブラウザ上で遊べるミニゲームプラットフォーム「Facebookインスタントゲーム」です。ここでは、「Super Bowling」などのスポーツゲームを中心に配信しており、累計プレイヤー数は1億9000万人を超えました。

Facebookなどの国際的なプラットフォーム上では、時間と場所を問わずコミュニケーションと娯楽が提供されています。私たちのゲームも、99%以上が海外ユーザーに利用されています。

市場の変化を最前線で体感し、世界に向けてチャレンジしてきた経験は、何ものにも代えがたい財産となりました。

Facebookインスタントゲーム

アクアポニックスとの出会い

しかし、世界に向けてコンテンツを提供してきたことから、事業の危うさを痛感することがあります。異常気象や感染症の流行、貧富格差や軍事衝突、そして食糧危機など…。人々が余裕を持って生活できなくなったとき、娯楽が最初に削られる現実があります。世界のこうした問題は、私たちの課題ともなりました。

飯沼は、以前から国内の食料自給率や少子高齢化について考えており、この先の世界を少しでもよくするために何ができるのか、何から始めるべきかと模索していました。その中で彼は、「アクアポニックス」という新しい農法に出会います。

アクアポニックスは、水産養殖を意味する「アクアカルチャー」と、水耕栽培を意味する「ハイドロポニックス」を組み合わせた、新しい形の農業・水産業を指します。

この農法では、魚の排泄物が微生物の働きによって分解され、それが野菜の栄養源となることで水が浄化されるという、天然の循環サイクルを施設内で再現します。また、生きた魚を育成しているため、農薬や化学肥料の類も使うことがありません。

飯沼は、エンジニアになるよりずっと以前、小学生のときから熱帯魚の飼育経験があったため、魚と野菜を一緒に育てるアクアポニックスに強く興味を持ちました。

アクアポニックスの循環図

「人にも環境にも優しいこの農法を自社のIT技術で発展させることで、一次産業の困難さを改善できるのではないか?」

「持続可能な未来に貢献できるのではないか?」

そんな思いを込めて、私たちは山間部の小さなビニールハウス内でアクアポニックスの実証実験を開始しました。

日本最大級となるアクアポニックスの商業農場「マナの菜園」

そして2021年末には、日本最大級のアクアポニックス農場の開設に着手しました。

私たちが作業着に着替えて向かったのは、名古屋市から車で約1時間半の岐阜県中南部にある、加茂郡八百津町。木曽川と飛騨川の間に位置し、昔ながらの田園風景が残る美しい町です。

岐阜県加茂郡八百津町

今回お借りすることになったのは、築40年の古いビニールハウス。

約2,800平方メートルにもおよぶ広大な敷地は長らく放置され、ジャングルのような密度で雑草に覆い尽くされていました。数メートル先も見渡せない状況で、刈りながら奥へ進んでみると、雑草どころかしっかり根付いた木まで生えています。

また天井を見上げると、天井の鉄骨に蔓が絡みついており、引っ張ると謎の白い粉が雪のように舞い散ります。農業経験者はわずかしかおらず、ときには悲鳴が聞こえることもありました。

整備前のビニールハウス


清掃作業の大半を自社で実施

ビニール張り替えや電気工事などは業者に依頼しながら、大部分の整備、清掃作業は私たち自らが行いました。

また、収穫から出荷の動線を考慮したエリア配置、配管の計算や各設備の設計、その組み立てに必要なパーツの製作なども、可能な限り社内で行なっています。

そして2022年12月、日本最大級のアクアポニックス農場が稼働します。

日本の古語でおかずを指す“真魚”“真菜”、あるいはメラネシア語で神秘的な力を意味する「マナ」などにちなみ、農場名は「マナの菜園」と付けられました。

リノベーション後の園内

「マナの菜園」として営業開始

この農場は、地元の公共機関や農業関係者から多くの見学者を迎えています。また、メディアからも注目されており、NHKや小学館、名古屋テレビなどに取り上げられました。

メディア取材歴

2023年3月31日 NHK「おはよう日本」

2023年4月27日 小学館「@DIME」

2023年5月5日 「全国農業新聞」5月5日号中日本版

2023年5月23日 名古屋テレビ「アップ!」

地元PR商品「おいしい八百津推奨品」に採用

マナの菜園では、2023年4月より野菜の出荷も行っていますが、農産物の販売に関してはゼロからのスタート。知名度や販路の確立には苦労しました。

近隣の道の駅での販売から始めましたが、当初は1日の販売数が10袋に届かない日もあり、販売担当者は頭を抱えました。

潮目が変わったのは、2023年8月末。

菜園で生産したリーフレタスとバジルが、マナの菜園がある八百津町の「おいしい八百津推奨品」という制度に採用されたことで、認知度が上がりました。

地元ケーブルテレビで認定式が放送されたのち、直売所からもレタスを取り扱いたいという申し出が、すぐさま私たちのもとに届きました。

また飲食店では、セット品のサラダに使うだけでなく、店先でも私たちのレタスを直接販売してくれるお店も現れました。

私たちは、町内で行われるイベントに積極的に出店していますが、最近では長い行列ができ、持参した野菜が完売したこともあります。

私たちは菜園を通じて、雇用創出や子ども食堂への食材提供など、地元・八百津町への恩返しを続けていきたいと考えています。

八百津町のイベントに出店

完売御礼

地元飲食店のサラダに採用

こども食堂の活動に食材を提供

農場や養殖場をリモートで見守れる「マナシステム」

アクアポニックスでは、野菜の栽培だけでなく、魚の養殖もセットで行います。

マナの菜園では、イズミダイという和名で美味しい白身魚の「ティラピア」と、キャビアが取れる「チョウザメ」を育てており、これらの魚は野菜の栄養供給元として重要な役割を果たしています。彼らが元気に暮らすため、通常の水耕栽培よりシビアに環境を管理しなければなりません。

しかしゲーム開発を行う本社は愛知県名古屋市、マナの菜園は岐阜県八百津町。

「どうしてこんな離れた場所で、別の業務を並行できるの?」と疑問に思われる方もいるかもしれません。

この課題を解決するため、私たちは菜園の準備と並行し、アクアポニックス向けIoT機器「マナシステム」を開発しました。

マナシステムは、水槽や栽培ベッドの環境をリアルタイムでモニタリングできるIoT機器で、温度・湿度、二酸化炭素濃度、照度、水温、PH、EC・TDS、溶存酸素量などの環境データを取得し、クラウド上に蓄積します。そのデータは携帯端末などから簡単に見られます。

また、異常が発生した場合にはアラート通知も行えるほか、カメラを通じて施設の映像も確認できます。

このシステムを導入することで、菜園から約40キロ離れた本社からでも、安心して魚と野菜を見守ることができるようになりました。

IoT機器「マナシステム」

システムイメージ図

実証実験を始めた当時、アクアポニックスは日本で知名度がある農法とは言えませんでしたが、2025年大阪・関西万博に出展される地元館「大阪ヘルスケアパビリオン」でアクアポニックス設備の展示が決まるなど、少しずつ知名度が上がってきました。

おかげさまでマナシステムも、アクアポニックスを始める個人・法人の皆様から問い合わせをいただくようになり、日本各地の施設に続々と導入されています。

愛知県・つなぐファーム様。2万株を生産できる大規模農場にマナシステムが導入

兵庫県でいちご農園を運営されている、株式会社わさび様のアクアポニックス施設

静岡県・エスペックミック様。海水魚のタツノオトシゴ養殖場でもマナシステムが活躍

アクアポニックスの本場、アメリカから評価

そして2023年末、私たちのゲームおよびスマートアグリ事業は、思いもよらぬ形で評価を得ることとなりました。

アメリカの技術誌「CIOReview APAC」において、「日本のテクノロジー企業トップ20」に選ばれたのです。

■Super Appli, Inc. | Top Japanese Tech Company-2023

https://www.cioreviewapac.com/super-appli-inc

「CIOReview APAC」誌においては次のような選評をいただいています。

一部を以下に抜粋、和訳します。

Super Appli pioneers a sustainable future, seamlessly blending AI innovation in gaming and smart agriculture. With the MANA system's IoT magic, it empower farmers and engage millions, proving technology can harmonize humanity, nature, and progress for a better world.

【訳】スーパーアプリは、ゲームとスマート農業におけるAIイノベーションをシームレスに融合させ、持続可能な未来を開拓している。マナシステムのIoTマジックにより農家に力を与え、何百万人もの人々を引き入れ、技術がよりよい世界のために人類、自然、進歩を調和させることができることを証明している。

(選評終わり)

和訳にある「スマート農業」を簡単に説明すると、ロボットやドローンなどの科学技術、あるいは他の情報技術を農業に活用して、厳しい農作業の一部を自動化する試みを指します。

名古屋の小さな会社に過ぎない私たちが、アクアポニックスの本場であるアメリカで、権威ある技術誌に高い評価をいただくとは想像もしていませんでした。

事業の柱がゲーム開発と農業という企業はあまりないと思います。その珍しさが目に止まったのかもしれません。

人間と自然の調和に向けて

マナシステムの開発を通して、私たちは最先端の技術を追究していますが、一方で自然と調和する生き方も探したいと考えています。

以前からアクアポニックスの実証実験を行っていた場所で、私たちは2ヘクタールほどの山林を管理しています。

そこでは自然栽培や水田を開墾して、すべて手作業で栽培を行うといったことも実践しています。事業として行う「スマートアグリ」とは異なり、効率や利便性とは程遠い、昔ながらの農業です。

自然界は厳しい先生のように、多くの課題をつきつけてきます。

スマートアグリ事業での活動こそが世界をよくするための第一歩と考えていましたが、まだまだやるべきことは多いようです。

人間と自然の調和に向けてどのように取り組んでいくべきなのか、“タイパ”と対極にある環境の中に身を置くことで、答えを探していきたいと考えています。

苗を手植え


自作のウッドデッキで休憩


株式会社スーパーアプリについて

2010年6月設立のPC・スマートフォン向けゲーム制作会社です。

昨今の世界情勢の不安定化に伴い、食糧危機や物価上昇が危ぶまれる中、私たちの強みであるITを活かし、持続可能な循環型社会の創造に寄与します。

同時に、日本の就農人口の減少対策や、食料自給率の向上も目指してまいります。

■株式会社スーパーアプリ | アグリテック事業

https://www.super-appli.co.jp/agritech

■マナの菜園の商品購入ページ|食べチョク

https://www.tabechoku.com/producers/25690


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