同窓会への出席回数は100回以上…83歳の野口悠紀雄さんが「高校の同窓会」で避けている「2つの話題」

2024年4月23日(火)17時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hispanolistic

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人生を楽しく過ごすためには、何が必要なのか。一橋大学名誉教授の野口悠紀雄さんは「私の場合、定年退職のタイミングで高校の同窓会が増えた。シニア世代こそ学生時代の友人と関わることが大切だが、集まりでは避けたほうがいい『2つの話題』がある」という——。

※本稿は、野口悠紀雄『83歳、いま何より勉強が楽しい』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。


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■コロナ禍をきっかけに「Zoom同窓会」が始まる


高齢者は、人との関わりを、どのような形であれ、持ち続けることが非常に大事です。人間とのコミュニケーションが精神衛生の上で最も優れたものであることは間違いありません。勉強ということだけを考えても、一人で勉強するだけでなく、話し相手があるほうがよいことは、間違いありません。


ところで、いま、Zoomなどのテレビ会議を用いて、簡単に話し合うことができるようになっています。これは、在宅勤務の手段としてだけでなく、高齢者のコミュニケーションについても、重要な意味をもっているのです。


メタバースがもっと手軽に使えるようになれば、それを使うことも考えられます。ただし、漫画のキャラクターのようなアバターになるのは気が進みませんが……。


私は、高校同期生の集まりをZoomで続けています。この集まりは、もともとは月に一回、私が早稲田大学でやっていた公開特別講義に同期生にも来てもらって、講義の後に食事会をやっていたのですが、コロナ禍で公開講義ができなくなったので、Zoomに移行したのです。


■「隔週土曜、30分間」だから100回も続く


頻度は、リアルミーティングの時より増えて、隔週土曜となりました。19時から30分間やっています。すでに100回を超えました。1時間になるとかなりの負担ですが、30分だから参加できます。参加は10人ぐらいです。あまり多いと、議論ができなくなるので、この程度の規模が適当かと思います。


実際に集まるよりは、ずっと簡単に集まることができます。われわれのグループのミーティングの頻度がリアルなミーティングの時よりも増えたのは、そのためです。ただし、Zoomミーティングでは、会議を設定する運営役が必要です。


会場を準備したりする必要はありませんが、定められた時間に必ず開催しなければならないので、大変です。実際やってみればよく分かりますが、例えば急に体の調子が悪くなったとしても、予定されていた時間に会議を開く必要があります。


幸いなことに、われわれのグループには、そうした仕事を進んで引き受けてくれるメンバーがいるので、集まりを継続することができています。


最初は私もやっていましたが、彼が引き継いでくれました。彼が忙しいときは、もう一人の友人が担当します。これは、とても有難いことです。


なお、私の高校の同期生では、他にもグループができています。こちらは、海外に在留中のメンバーも含めて、全世界的な集まりをやっています。海外メンバーとの時差の調整が大変なようです。こうした集まりは、つい数年前までは、想像もつかないものでした。


■話すテーマは時事問題がいい理由


あとで述べるように、同窓会は高齢者にとって重要な役割を果たしていますが、実際に集まるのはそれほど簡単なことではありません。会場の設定などが大変な手続きです。少人数で集まるにしても、実際の集まりでは、そう簡単なことではありません。


Zoomのミーティングは、こうした面倒な手続きがなく気軽に集まれるものです。ぜひ実行されることをお勧めします。


オフラインの会合はもちろんよいのですが、それはなかなか難しいものです。しかし、オンラインは比較的簡単に行え、自由に進められ、時間もあまり必要としません。ですから、まずはオンラインでのつながりを何とか形成することが大切です。


私たちの集まりでは、テーマを決めているわけではなく、その時々のことを、思いつくままに話し合っているだけです。


ただ、時事問題がテーマになることが多く、リアルなミーティングのときよりも、時事問題を話すことが多くなったように思います。


ここでの会話のために、時事問題を勉強することもあります。話題になったことについて何も知らないと恥ずかしいので、新聞を読んで事前に学習するようにしています。30分だけでは議論が終わらず、延長戦をメールでやることもあります。これも、なかなか楽しいものです。


■シニア世代は「ミディアムコミュニケーション」を心がける


こうした集まりを持つことは、シニアにとって大変重要だと思います。一人で勉強していてもつまらない。人間は、どうしても「聞き手」が必要な動物です。聞き手がいれば、勉強するのに目的ができます。誰かが賛同してくれたり、感心してくれたりすれば、もっと勉強する意欲が湧きます。


われわれの世代は、体質的にSNSに馴染めません。しかし、友人同士のオンラインでの連絡は、われわれに合っているようです。一対一のメールではなく、またマスメディアでもなく、「ミディアムコミュニケーション」といえるものが形成されたのです。


私は、1968年に刊行した『21世紀の日本』(東洋経済新報社:共著)で、「ミディアムコミュニケーション」という考えを提唱しました。大規模なマスコミュニケーションでなく、ミニコミュニケーション(家族などのコミュニケーション)でもなく、中規模なコミュニティが重要であるという考えです。


ITの進歩によって、この考えが現実に可能となりました。問題は、それをどのような形で実現するかです。本章で述べるようなことが、大きな可能性を示していると考えます。


■定年後、話し相手がいない状況にならないために


これは、コロナによって後押しされた側面があります。実際に会うことが難しいからです。非常にゆるいつながり、つまり、自由なネットワークが形成されていると感じています。Zoomミーティングは、コロナがもたらした唯一のよいことだったと思います。『21世紀の日本』で想像していたミディアムコミュニケーションが、実現しつつあると感じます。


人間は、さまざまな面で、一人では、あるいは家族だけでは、生きることができません。会社勤めをしている間は、会社というコミュニティに一日中浸からざるを得ないのですが、退職した途端に、急に社会とのつながりを切られてしまう人が多いのではないかと思います。


学生時代のグループが、さまざまな意味で、集まるには一番よいのではないかと思います。ただし私たちも、卒業以来ずっと同窓会を続けてきたわけではありません。これを始めたのは、退職後のことです。


働いているときは、組織内の過度なコミュニケーションの中で生活しているので、それ以上のつながりを求める気持ちはなかなか湧きません。学生時代の友人とのつながりも、それほど持ちたいという気持ちにはなりません。


退職後になって、学生時代の友人たちとのミーティングを復活できれば、最高のグループができます。


■歳をとると同窓会が増える理由


私は、「同窓会に関する2つの法則」というものがあると思っています。


第1法則は、「(ある歳までは)メンバーが歳をとるほど、同窓会の頻度が増す」というものです。


私の高校の場合について言いますと、まず、公式のクラス会が、コロナ前には、毎年開かれていました。ところが、これは10年ほど前からのことであり、それまではこれほど頻繁ではありませんでした。実際、30代から50代の年齢の頃には、ほとんどなかったのです。


このほかに、クラス会ではない同級生の集まりがあります。メンバーはクラスをまたがっているし、クラスの全員というわけでもありません。また、地域別の会というのもあるようです。


歳をとると、なぜ同窓会が増えるのでしょうか? 理由はいくつかあります。


第1は、自由な時間ができるからです。日々の仕事に追い回されなくなります。30代から50代では、クラス会に参加しようとしても、時間がない場合が多いのです。


もう一つ理由があります。それは、ライバル意識がなくなることです。仕事とのつながりをこうした集まりに求める人もいなくなります。まさに、君子の交わりになるわけです。


写真=iStock.com/blew_i
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/blew_i

■同窓会でしてはいけない「2つの話」


もう一つ、働いているときには、ある種の出世競争があります。40代、50代で選別過程が行われている途中だと、そのことがどうしても引っかかります。だから、同窓会をやりにくい面があります。


しかし、シニアになると、その話はもう過去のことになります。そういうことから解放されます。同窓生の間の出世競争がなくなるわけです。そういう意味でも、いい関係が結ばれるのではないかと思います。だから、同窓会をやりやすくなるのだと思います。


私の場合、同窓会の中でも、高校の同窓会が圧倒的に多くなっています。それは、高校は同質的メンバーの集まりだからです。友達がどういう人間かを一番よく分かっているから、一番集まりやすい。これが、「同窓会に関する2つの法則」の第2法則です。


ただ、そういう集まりで決して話してはならないことが幾つかあります。


第1は、経済的な条件のこと。経済状況の話はしないほうがいいと思います。若いときにも、収入を聞くのは、よくないことでした。相手が高過ぎて、ショックを受けるかもしれない。


■「病気の話」はケースバイケース


高齢者になっての同窓会では、年金のことは絶対話すなというのがルールです。私の同窓生には、海外、とくにアメリカで長期間で働いていた者が多く、アメリカから年金をもらっている者がかなりいる。そうすると、今、円安になっているので、彼らは非常に豊かになっています。そこで、妬みを買う可能性があります。


もう一つ同窓会で絶対話してはいけないのは、病気の話だといわれています。



野口悠紀雄『83歳、いま何より勉強が楽しい』(サンマーク出版)

ただ、われわれの会では、病気の話は時々出ます。経験談で役に立つことが多いのです。私はスロージョギングをやっていたのですが、友人の一人が、ジョギングはよくないと言いました。足に負担がかかるから。だから、歩けと。大股で歩いたほうがよいと言うのです。


そのアドバイスに従って、スロージョギングはやめにし、歩くことにしました、大股で。確かに、少し足を痛めてから、そのほうがいいと分かりました。


この類の話は時々あります。それらは、お互いに役に立ちます。いい情報交換になります。だから、病気の話は、必ずしも禁句ではないと思います。


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野口 悠紀雄(のぐち・ゆきお)
一橋大学名誉教授
1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院教授などを経て一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。著書に『「超」整理法』『「超」文章法』(ともに中公新書)、『財政危機の構造』(東洋経済新報社)、『バブルの経済学』(日本経済新聞社)、『日本が先進国から脱落する日』(プレジデント社)など多数。近著に『生成AI革命』(日経BP 日本経済新聞出版)、『ChatGPT「超」勉強法』(プレジデント社)、『日本の税は不公平』(PHP新書)、『83歳、いま何より勉強が楽しい』(サンマーク出版)などがある。
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(一橋大学名誉教授 野口 悠紀雄)

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