「絶対に食いっぱぐれることのない」組織になる方法とは?

2024年4月18日(木)4時0分 JBpress

 ビジネスパーソンであれ、企業組織であれ、ビジネスでは「一回切り」「たまたま」「まぐれ」の成功は通用しない。顧客が欲するサービス・商品を「継続的に」「必然的に」「狙い通りに」提供し続けて、初めて「仕事」といえる。つまり、仕事とは「人の心を捉え続けること」であり、それを実現するために必要なのは、顧客の「真のニーズ」を的確に捉えるためのマインドセットと仕組みづくりだ。本連載は、『いつでも、どこでも、何度でも卓越した成果をあげる 再現性の塊』(田尻望著/かんき出版)から、内容の一部を抜粋・再編集。キーエンス出身の経営コンサルタントが体系化した「ニーズの捉え方」の考え方とノウハウの一端を紹介する。

 第5回は、営業・販売促進・商品企画・開発の各部署が役割分担して、組織全体で「ニーズの裏のニーズ」を追求する仕組みについて解説する。

<連載ラインアップ>
■第1回 “仕事ができる人”が捉えている顧客の「ニーズの裏のニーズ」とは?
■第2回 法人顧客の「ニーズの裏のニーズ」を知るために押さえたい6つの価値とは?
■第3回 人間関係が悪化し、5人の営業が辞めたことで失われた売上を考える意味とは?
■第4回 「社内コミュニケーションをよくしたい」の裏に隠された重要なニーズとは?
■第5回 「絶対に食いっぱぐれることのない」組織になる方法とは?(本稿)
■第6回  “卓越した成果”を再現し続ける組織は、なぜ「ひし型」になるのか?

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組織全体で「ニーズの裏のニーズ」を追う仕組み

 それぞれの従業員が、バラバラに「ニーズの裏のニーズ」を追うのではなく、「組織体」として追う仕組みを今からお伝えしていきます。

 みなさんは、「営業」「販売促進」「商品企画」「開発」は別々の部署として認識されていると思いますが、それぞれのやり方で、お客様の「ニーズの裏のニーズ」を追い続けることができるのです。

 営業という組織は、お客様が欲している「ニーズの裏のニーズ」を一番近くで追うべき役割です。

 ですから、「この会社はなぜ欲しているのか」というポイントを「虫の目」のように細かに見ることができます。

 だからこそ、営業としては、新たな課題やお客様のニーズを、他の役割(販売促進、商品企画、開発)に一定周期(月に一度ほど)でフィードバックするべきなのです。

 フィードバックの内容は、商品企画、販売促進、開発などの関係者が読み、次の商品や新しい市場へのアプローチの示唆を得ます。

 営業が直接お客様の課題を聞いてニーズカードに書き、本部がそれを理解し、活用する商品企画の仕組みが大事だという考え方から、キーエンスでは創業のときから直販システムを構築していたのだと思います。

 この仕組みによって、顧客の「ニーズの裏のニーズ」を本社に上げることが可能になります。

 販売促進では、「マイクロマーケティング」と呼ぶのが適切なほど細かなマーケティングを実践することが求められます。

 営業の成功事例、競合打破事例、競合に負けた事例、これまで取れなかったお客様を取ってきた事例、それらを「ニーズカード」や営業実績から吸い上げて、「なぜ売れているのか」「なぜ競合に負けたのか」を分析し、お客様が買っている理由を営業メンバーに横展開するのです。

 そして、成功事例や競合打破事例が出てきたときには、営業へフィードバックするのはもちろんのこと、メールマガジンやダイレクトメールを通して、「私たちはこのような価値が提供できていますよ」とお客様にも伝達します。

 つまり、「ニーズの裏のニーズ」の解決策を、お客様にも横展開するのです。このように、社内・社外の両方に価値の横展開を進めることで、最も効率的で、効果的なマーケティングの最適化を担うのが、販売促進の機能の一つなのです。

 商品企画では、ニーズカードから「ニーズの裏のニーズ」や、潜在ニーズのきっかけになりそうなものが見つかったら、プロダクトアウトレベルの価値提供仮説をもとにして、商品企画者自らがお客様にヒアリングに行くべきです。なぜなら新商品にリアリティを持ってヒアリングをできるのは商品企画者本人しかいないからです。

 また、数多くいるお客様の中でも、とくに「業界の意見を決めるような人」にヒアリングすることはとくに重要です。

このお客様が認めたとしたら、他の会社も買うだろう」と判断できる方のところに、新商品のコンセプトを持って、「それが本当に買いたいと思うか」を聞きに行くのです。

 例えば、業界最先端の会社の生産技術者が認めたものであれば、その他の工場の生産技術者も同様に認める可能性が高いはずです(もちろん、そんなオピニオンリーダーが認めたからといって、必ずしも他社の技術者が認めるわけではありません。「中小企業では、そんな技術はないからできないよ」という場合などがその例です)。

 商品企画だけでなく、開発もまた、「自分たちの開発力がどこに活かされるべきか」を知るために、市場の声を聞きに行く「営業同行」を行うことは重要です。

 ただし、営業に同行して開発が売る、ということではありません。

 営業に同行することで、市場のお客様の声を現場で体感するのです。

 あくまで、自分たちの技術、つまり「シーズ」がお客様にとってどのように役立つのかを知るために同行するのです。

 このような役割分担をすることで、「営業」「販売促進」「商品企画」「開発」、4つの役割すべてが、お客様の真のニーズである「ニーズの裏のニーズ」に向かうことができるのです。

組織全体で、お客様のニーズの裏のニーズを捉え、理解し、叶えることが、市場原理を理解した企業としてあるべき姿である」ということを、キーエンスでの経験と、その他の会社の組織の仕組みを比べることで学びました。

【まとめ4-2】
キーエンスは従業員全員が「ニーズの裏のニーズ」を追求する組織体の構造になっており、その設計が抜群に秀逸である。

<連載ラインアップ>
■第1回 “仕事ができる人”が捉えている顧客の「ニーズの裏のニーズ」とは?
■第2回 法人顧客の「ニーズの裏のニーズ」を知るために押さえたい6つの価値とは?
■第3回 人間関係が悪化し、5人の営業が辞めたことで失われた売上を考える意味とは?
■第4回 「社内コミュニケーションをよくしたい」の裏に隠された重要なニーズとは?
■第5回 「絶対に食いっぱぐれることのない」組織になる方法とは?(本稿)
■第6回  “卓越した成果”を再現し続ける組織は、なぜ「ひし型」になるのか?

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筆者:田尻 望

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