道を聞かれたら大チャンス…元プルデンシャルのトップ営業が初対面の数分間を契約につなげた"秀逸な話し方"

2025年4月30日(水)16時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/bee32

目標を達成するには何をすればいいか。キーエンスとプルデンシャルでトップの成績を残したSales Navi 代表取締役の田中大貴さんは「目標達成マインドを持ったことで、私は道を聞かれた人からも保険契約を預かったことがある。ポイントは逆算である」という——。

※本稿は、田中大貴『売れる組織 売れる営業』(実業之日本社)の一部を再編集したものです。


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■意志に頼るのではなく、目標を逆算し仕組み化する


営業パーソンには目標があります。ただ、それは一般的に、企業として達成すべき今期の数字でしかありません。そこから逆算し、半期、四半期、月次、週次にこれくらいの数字を達成したいというのが、支社、支店、部署、チーム、個人に割り振られているだけです。


個人に目標が定められていても、それは自分が達成したいと考えて決めた目標ではなく、与えられた目標にすぎません。


人間は、目標がなければ頑張れません。それをよく表しているのが、次の言葉です。


「なんとなく散歩をしていて、気がついたら富士山の頂上に着くことがありますか?」


富士山に登るのであれば、富士山の頂上に立つという明確な目標があるからこそ登れるわけです。それほど、目標を持つことは重要です。


ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手が高校生のときに書いた「マンダラチャート」が有名ですが、大谷選手は明確な目標を持ったからこそ、それに向かって努力し、成功を勝ち取ったのです。


いくら才能に恵まれていても、目標が曖昧なままでは大きな成果をあげることはできないでしょう。


しかし、私も含めて人間は弱い生き物です。誰でも大谷選手のようになれるわけでもなければ、頑張れるわけでもありません。だからこそ意志に頼るのではなく、目標を逆算して分解し、仕組み化してしまうことが大切なのです。


■目標は宣言することで達成しやすくなる


プルデンシャルには当時「3W」という目標がありました。毎週3件の契約を預かり続けるという、かなりハードな目標です。


私もそれを目標にしていましたが、達成しなくても困るわけではありません。私はこれを利用し、「3Wを達成できなければプルデンシャルを辞める」と宣言することで、目標の達成を自分に強制しました。


しかし、1週間などあっという間に終わります。気づけば水曜日、木曜日になっていることがほとんどで、慌て、焦り、胃がわしづかみにされるような緊張を味わいました。


それでも何が何でも目標を達成しないといけない状況に自分を追い込んだからこそ、実績をつくることができたのです。


このように、目標を達成しなければいけない状況に自らを追い込むと、不思議といろいろなアイデアが湧いてきます。いまとなっては笑い話ですが、私は道を聞かれた人からも保険契約を預かったことがあります。


大阪駅は、人種の坩堝とも言えるほど、さまざまな人が歩いています。観光に来ている人も多いので、よく道を聞かれることがありました。


「○○にはどう行けばいいですか?」


私はこれをチャンスと思い、こう伝えます。


「ちょっとわかりにくいので、ご案内しましょうか」


そう言って、一緒に歩き始めます。場所によっては10分ぐらいかかるところもありますが、基本的にはほんの数分で着くところです。その間、その人と会話を交わします。


写真=iStock.com/seven
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/seven

当然ですがお互いのことをまったく知らないので、不信の壁はかなり高い。それでも、そこから最終ゴール、つまり「その話、別の機会に聞かせてもらえませんか」と言っていただけることを目指して道案内し、保険契約にたどり着いたのです。


■街に出れば全員が見込み客に見える


この話のポイントは、逆算です。目的地に着くまでの時間から逆算し、どのような構成でストーリーをつくるかが重要なのです。もちろん、目的地までの距離によって話の内容も変わっていきます。


「ここは着くまでには時間がかかるから、少し無駄話をしてもいいな」
「ここは近くて早く着いてしまうから、早めに切り出さないとダメだな」


そこまで考え、ストーリーを構成しました。いまとなっては、こんなことは二度とやりたくありませんが、当時の私には3Wを絶対にやりきるという強い目標があったからこそ、この発想が湧いてきたのです。


生命保険の面白いところは、健康な人全員が見込み客である点です。その人が健康であるかどうかは見かけだけではわからないので、街に出れば全員が見込み客に見える。当時はそんな心境でした。


このエピソードを話すと、同じ保険業界の人からも驚かれます。しかし、達成マインドさえ持てれば、手段はいくらでもあることをお伝えしたかったのです。


■小さな目標を設定し、毎日少しずつ達成していく


組織に与えられた目標は、無味乾燥でそれほど情熱を傾けられないのが普通です。自分で立てた目標でさえも、なかなか達成できないことのほうが多いでしょう。だからこそ、目標達成のマインドを持つためには、自ら宣言することが重要なのです。


そして目標を達成するためにもうひとつ大切なことが、最終的な目標を分解して小分けにし、その小さくした目標の達成を積み重ねることです。


写真=iStock.com/markfinal
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/markfinal

「小さな目標を設定し、毎日少しずつ達成していく」


これが目標達成の最大のコツです。


反対に、大きな目標というのは達成が困難です。たとえば、ダイエットをしようと考えたときに、「1カ月で10キロ痩せる」「朝と夜に10キロランニングする」という目標を達成し続けるのは、ハードルが高いことがイメージできると思います。


しかし、「甘いものを1日1回までにする」「朝と夜に腹筋を20回ずつ行う」であれば達成できそうです。そして、この目標を達成したら、次は「甘いものを2日に1回にする」「朝と夜に腹筋を30回ずつ行う」といったように、徐々に達成の難度を上げていきます。


このように「達成マインド」で重要なのは、大きな目標をいきなり達成しようとすることではなく、大きな目標を達成するための「小さな目標」を階段のように設定することです。


そして、それを毎日少しずつ達成していくことが重要です。それができたら、次の目標へとつなげていく。これを繰り返すのです。その結果、勝ち癖がついて自信へとつながり、その先に最終的な目標の達成があります。


■「今の自分はまだ道の途中だ」と思えるか


私自身、先ほどお伝えした毎週3件の目標が達成できた要因は、目標の締めを月単位で考えるのではなく、週単位で区切ったことが大きかったと思っています。


まだ2週間、1週間あるから何とかなるだろうという甘えを捨て、限られた1週間のなかでどういった行動を取るべきかという思考が研ぎ澄まされたからです。


逆に、「達成できないマインド」になってしまう場合は、無意識に「達成しにくい高すぎる目標や階段を設定」していたり、「そもそも目標を達成するための階段が見えていない」ことが多いと思います。


そうすると負け癖がつき、負のサイクルに陥りやすくなってしまいます。


どんなに小さな目標であっても、それを積み重ねて大きな成果につながれば、自信が生まれます。ただし、それと同時に気をつけなければならないのが「謙虚さを失うこと」です。


目標を達成し続けると、周囲から評価され、自分でも「登り切った」という達成感を持つようになります。その状態が続くと、人は知らず知らずのうちに傲慢になりがちです。他人を見下すような態度を取ったり、周囲の助言に耳を貸さなくなったりする。


その結果、社内でも浮いた存在となり、顧客からも応援されなくなってしまうかもしれません。常に高い山を登り続ける必要はありません。でも、たとえどんな地点に立っていても、「今の自分はまだ道の途中だ」と思える謙虚さだけは忘れないようにしてください。


■達成マインドを持つために必要なロールモデル


達成マインドを強くするためには、自分の身の回りにロールモデルを見つけることも重要です。


●仕事においてあなたがこれから伸ばしたい能力・抱えている問題は何か
●自分が伸ばしたい能力や目指す行動ができている人が周りにいるか
●その人の何が優れていると思うか
●優れている部分はなぜできるようになったと思うか
●そのなかで自分でもできそうなことは何か


こうしたことを考えながら、自分にとってのロールモデルを探してください。


ロールモデルは特定のひとりである必要はありません。この部分はこの人、別の部分はあの人という形でも構いません。全部できるような人はなかなかいません。自分がこうなりたいという項目別のロールモデルを探す形でも目的は果たせるはずです。


とくに中小企業の場合は、そもそも絶対的に人の数が足りないので、ロールモデルを見つけること自体が難しいかもしれません。


中小企業は、社員の年齢層がバランスよく分布していません。よく見る分布として、50代から60代の大ベテランがいて、間を飛ばして経験の浅い20代まで人がいない。



田中大貴『売れる組織 売れる営業』(実業之日本社)

20代の人からすると、50代から60代の先輩は大ベテランすぎて、ロールモデルとして最適ではありません。ステップアップしていく段階ごとに見るべきロールモデルが欲しいのに、完成形を見せられてもやるべきことが見つかりません。


もし自社にロールモデルがいなければ、他社で見つけてもいいと思います。ただ、他社との交流がなければそれも難しいので、そのときは営業に関する書籍やユーチューブなどを参考にするといいでしょう。


ロールモデルが見つかり、その人の真似をしているとロールモデルに近づけます。近づけば近づくほど解像度も上がるので、目線を広げることができるようになったら、その人よりも優れた人を見つけて新たなロールモデルにしてください。


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田中 大貴(たなか・だいき)
Sales Navi 代表取締役
2008年同志社大学文学部を卒業後、キーエンスに入社。連続で目標を達成したのち、2010年にプルデンシャル生命保険にスカウトされ入社。以来11期連続社長杯入賞。2017年に、当時全国最年少でエグゼクティブ・ライフプランナー(部長)に就任。2017〜2021年度には、日本の生命保険募集人登録者、約120万人のなかで上位0.01%しかいないとされるMDRT TOT会員に認定される。順風満帆な営業人生を送る一方で、「道しるべがないがために営業に悩んでいる組織や人」の存在を知り、「営業の道しるべを創る」というビジョンを掲げて2021年にSales Naviを創業。事業を推進する傍ら、ひとりでも多くの営業パーソンが抱える課題や悩みを解決したいという想いから「営業の教科書」をつくることを決意し、『売れる組織 売れる営業』を執筆。
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(Sales Navi 代表取締役 田中 大貴)

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