生成AIに危機感、Googleが検索エンジン大幅刷新へ

2023年5月9日(火)16時0分 JBpress

 米グーグルが主力事業の検索サービスを大幅刷新する計画だと米ウォール・ストリート・ジャーナルやロイター通信が5月6日に報じた。数十年にわたって大きな変更がなかったリスト形式の検索結果を見直すという。対話AI(人工知能)を組み込んだ競合サービスや、若者に人気のSNS(交流サイト)によって、一部で起きているグーグル離れに対処するという。


対話AI導入、動画・SNS投稿も重視

 ウォール・ストリート・ジャーナルによると、グーグルは検索結果の表示方法を変更し、対話AIを取り入れる。短尺動画やSNSの投稿を対象にした検索結果もこれまで以上に多く表示するという。ウォール・ストリート・ジャーナルが入手した内部文書によると、グーグルは若年層の利用者に焦点を当てており、「よりビジュアル、スナッカブル(短くて分かりやすい)、個人的、人間的」な検索エンジンを目指す。グーグルは従来、検索エンジンを通してウェブサイトを支援してきたが、刷新の一環として音声素材を拡充し、コンテンツクリエイターへの支援も行うという。

 内部文書によると、これらの変更により「従来のウェブ検索では答えを導き出すことが難しかった検索語に重点を置く」としている。このプロジェクトは社内で「Magi」と呼ばれており、2023年5月10日に年次開発者会議「Google I/O」が開催されるのを前に、従業員がテストしていると、ウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。


脅かされる「90%超のシェア」

 グーグル検索は、年間1620億ドル(約21兆8400億円)超の収益を上げる広告事業を支える主力事業である。アイルランドの調査会社スタットカウンターによると、その市場シェアはパソコン版、モバイル版ともに90%以上で、世界で最もアクセス数が多い検索サービスだ。だが、グーグルはそのルック&フィールについてこれまで最小限の変更にとどめてきた。

 何百万人もの人々が重要な調べごとにグーグル検索を利用しており、ネットニュースメディアなどのウェブサイトは大部分のトラフィックをグーグルに依存している。これらの要因に加えて、このサービスに直結する膨大な収益があるため、同社は大きな変更を加えることが困難だったとウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。

 しかし、23年に入って状況が激変した。対話AI「Chat(チャット)GPT」を手がける米オープンAIや、同社に出資する米マイクロソフトの動き、そして若いユーザーの注目を集めるようになった動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」などの台頭だ。

 オープンAIは23年3月、大規模言語モデル「GPT-4」を発表し、これをChatGPTに導入した。マイクロソフトも自社の検索エンジン「Bing(ビング)」などにGPT-4を組み込んだ。ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、より小規模な検索エンジン企業もグーグルより素早く動くことでユーザーを獲得しようと、対話AI機能を競って導入している。


若者の40%、TikTokやInstagramで検索

 グーグルの幹部らは最近、「アクティブなウェブサイトの数が近年頭打ちになっている」と従業員に伝えたという。インターネットユーザーは、人気のある地元のレストランや仕事や生活に役立つ情報などあらゆる情報の検索に他社アプリを活用しているという。

 グーグルの幹部らは、TikTokなどのSNSもグーグル検索から顧客を奪っていると警戒している。グーグルで検索や広告などの事業を率いるプラバッカー・ラガバン上級副社長は22年7月に開催されたカンファレンスで、「若者の約40%がレストランを検索する際にTikTokや米メタのInstagram(インスタグラム)を利用していると」述べ、グーグル検索がSNSとの競争に直面していると指摘していた。

筆者:小久保 重信

JBpress

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