産学官連携によるICTを活用した健康づくり・見守り支援事業家庭の電力データの活用が健康を見守り、行動変容を促すのに有効なことが判明

2023年5月16日(火)13時0分 @Press

奈良県立医科大学発スタートアップ企業、MBTリンク株式会社(奈良県橿原市、代表取締役社長:梅田 智広)と、東京電力グループの株式会社エナジーゲートウェイ(本社:東京都港区、代表取締役社長:酒井 正充)が北海道沼田町で約3年間にわたり実施したICT(情報通信技術)活用による地域住民見守りシステムの実証実験の結果、生体データではなく家庭の電力データ※の活用が、健康を見守り、行動変容を促すために有効であることがわかりました。
※家庭の電力データとは、エアコン、電子レンジ、洗濯機などの家電の電力使用データを示します


■実証実験の概要
2019年から約3年間、北海道沼田町のミドル・シニア(主に50代〜60代)約25名の住民が参加し、実証実験を行いました。ICTデバイス等の活用により、個人の健康、生活、行動、嗜好等に係るデータを収集し、医学的知見を生かしながらデータ相互の相関関係や意味を解析。それらが沼田町民の健康増進及び予防の促進に寄与することの検証を行いました。更に、ICTデバイスの使用が自身の健康づくりへの動機づけの手段となるかどうかについても検証を実施しました。

実証実験では家庭の電力データをライフスタイルスコア(LSS)※1 として以下3つのカテゴリーにわけ、1分単位でスコアを計測しました。
・生活スコア(エアコン、テレビ、待機電力など)
・食事スコア(電子レンジ、冷蔵庫、炊飯器、IHなど)
・活動スコア(洗濯機、掃除機、高電家電など)
※1 ライフスタイルスコアとは、電力消費データをもとに、生活、食事、活動、その他の4群にわけ、それぞれのライフスタイルスコアを評価。発生頻度、行動周期性、実施時間帯など過去実証データをもとに客観的評価を行い、スコア化したもの。LSSは0-100点からなり、スコアが大きいほど規則正しい健康的なライフスタイルであることを意味します。


■実証実験を行うきかっけは、これからの健康社会づくりで重要な「未病対策」
「未病」とは、病気を発病しているわけではないものの、健康でもない状態です。これからの健康社会づくりには「未病」の状態になる前に予防していく「0次予防」が重要となります。そのためには、年に一度の健康診断や人間ドックだけでなく、日ごろから体調の変化を把握しておく必要があります。
日本では、体温計をはじめ血圧計やスマートウォッチなど、生体データをとるための機器を容易に手に入れることができます。しかし、毎日、計測している人の割合が多くないのが現状です。例えば、60歳以上の家庭用血圧計の所有率は90%を超えています(2020年・日本医療機器工業会調査結果)が、高血圧患者を除いては、ほとんど使われていません。
大学発のベンチャー企業・MBTリンクでは、「0次予防」の知見の社会実装をめざして、地域での実証実験を企画しました。ちょうどそのタイミングで、厚労省の研究事業にて健康管理や見守りのリソースを探していた一般社団法人北海道総合研究調査会(以下:HIT)と出会い、実証実験のパートナーとして、HITが研究を行っており、町ぐるみでICTを活用した健康見守りに取り組む、北海道・沼田町と提携。2019年より同町での実証実験がスタートしました。


■日常生活のなかで抵抗なく計測できるデータとして「家電データ」にたどり着く
実験がスタートした当初は、生体および環境計測器など活用し、400項目ものデータを収集して、蓄積していきました。さらに、その分析から必要な項目が絞り込んでいきました。しかし、健康づくりに対する意識の高い沼田町の町民でさえも、日常的に生体データを取ることがむずかしく、抵抗なく計測できるデータを探索したところ、「電力データ」にたどり着き、2020年より電力データを軸としたサービス開発・提供に取り組むエナジーゲートウェイが実証実験に加わりました。

エナジーゲートウェイの家電分離技術は、1台の電力センサで主要家電の使用状況を把握することができます。メーカーや年式に捉われず見える化が可能で、設置は30分程度で完了。リアルタイムでデータを取得することができます。


■「家電データ」を見守りにどのように活用したか
1分単位で家庭の電力使用量をモニタリングすることで、その住民の日常行動が見えてきます。例えば、朝は何時ごろ起床しているのか、睡眠時間はどのくらいか。掃除機を使っている時間、洗濯機を回している時間は。夜中に電子レンジを使っていれば、夜中に食事をしていることが分かります。

このように、電力データは、住民が計測器を装着していなくても、その住民の「素」の生活データを取ることができます。そのデータの変化を見ることで、「未病」や「認知症」の兆候を捉えて、その住民に通知することで「行動変容」を促すことができました。また、この電力データからは、健康見守りだけでなく、節電対策のヒントも得られることが分かりました。
3年間にわたる実証実験により以下のような結果を得ることができました。

(1) 不調に向かう人の予兆観測が可能に
・食事スコア、活動スコアに影響が出た後に、生活スコアに不調が及ぶ。
そのため、食事スコアと活動スコアの日常数値から逸脱に注意が必要。
・特に活動、食事スコアの急激な低下、低スコアが続く方にはとくに注意。
寝たきり、認知傾向が進んでいる可能性があり、本人・家族への通知が必要。
・活動スコアが常に一定数より低い方は衛生面のサポートが必要で、第三者の介入ベター。
体調不調傾向、自宅にゴミが多い、掃除が出来ていない、衛生面で問題ありの状況で、自治体との連携が必要。
・ライフスタイルスコアの上昇、3ヵ月継続の方は体調回復、健康改善、不調改善傾向が強い。

画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/355489/LL_img_355489_1.jpg
スコアの事例

(2) 対象者の健康意識・行動の変化など(参加者アンケートより)
・自分でも気が付かなかった季節によるライフスタイルへの影響、変化を知れ、自分の生活改善点が分かった。
・ライフスタイルスコアに加え、食事、活動、生活スコアが知れ、スコアの低い行動においては、規則正しい生活をより心掛けるようになった。
・スコアが良いことを知れ、日々の生活に自信が持てた。日々の生活の積み重ねが健康にいかに重要か痛感している。これからも良き習慣は継続したい。成果に対し、ポイント※2 もいただけありがたい。
※2 「沼田町行政ポイント」。町民2000人以上が加入し、町民は町商工会が発行するポイントカード(Numaca)を所持している。Numacaは商店で買い物をした時に購買ポイントが付くシステム。町行政と連携しており、町主催の様々な健康事業や介護予防事業、健診、ボランティア、イベント等に参加したインセンティブとして町が「行政ポイント」を付与する。ポイント(1ポイント=1円)は商店で利用可能。
・継続評価していただき、ライフスタイルの変化を把握、改善出来るため行動が変えやすい。アドバイスもありがたい。
・電力料金も気になっていたので、機器の配置場所、買い替えの参考になり有用。
・生活が見られている気がするがカメラよりは良く、家族にも自分の状態をリアルタイムで知ってもらえ安心し生活出来る。特に、冬は家族ですらなかなか来れない地域であり、これらデータの活用は便利、ありがたかい。
・設置するだけでその後は普段通りの生活、簡単、手間いらずでサポート面でも優れているサービス。

(3) 町や関係者への有用性(実証実験に対するご意見)
— 遠方に住んでいる家族より
・高齢者の家族が、アプリを通じて親のライフスタイルを確認することが出来て安心する。
・認知傾向を心配しているが、客観的に各スコアを通じ影響度を把握できるため大変参考になる。
それによる対応策も練りやすい。
・手術後など独居生活の親のライフスタイルを知れ、サポート面においても無駄が省け非常に助かる。
素晴らしいサービス、普及して欲しい。

— 町の担当者より
・ライフスタイルスに季節、地域性が反映され、集団データからその特徴、新たな気づきがあった。データの蓄積をすることで地域に役立つ情報になることは間違いないと確信した。また、個々へ起こり得ることへの事前アドバイスが可能。、コメントの質が高まり、個の理解も進み、結果的に行動変容が期待出来、良いスパイラルが生まれた。


■沼田町 横山 茂町長のコメント
この取り組みが更に発展していき、医療費の削減や要介護認知者数の減少により減った費用を、地域住民へ還元できる仕組みなども検討を進めていきたいと考えております。
また、現在の取組みを活かして、電力の削減など見守り以外への展開も出来るのではないかと期待をしているところです。
画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/355489/LL_img_355489_7.png
梅田先生動画データ

■今後の展開
本年より積極的に見守り支援事業の展開を実施。自治体だけでなく、民間企業や他大学との共同研究も予定しいます。

<本年度実施予定>
□自治体
北海道沼田 高齢者住宅 実装
北海道更別 デジ田連携
福島県UDC伊達 連携
長野県売木村、ねづくりや連携
福岡県、奈良県、埼玉県、沖縄県他 にてサービス展開

□民間
住宅メーカー連携
オリジナルセンサ導入・PF連携および他データ基盤との連携
JLSA(全国地域生活支援機構)後見人連携、保険連携 他

□学術
複数大学との共同研究、連携


■実験で利用した電力センサと家電分離のしくみ
電力センサは分電盤に収納でき、30分程度の簡易工事で設置することが可能。

電力センサで取得されたデータは、Wi-Fiを通じてクラウドにデータが転送され、AIによってどの家電が、どれぐらい使用されているのかをリアルタイムに把握することができる。
電力データは専用アプリに送信され、家族ともデータ共有が可能。

画像3: https://www.atpress.ne.jp/releases/355489/LL_img_355489_4.png
センサー

画像4: https://www.atpress.ne.jp/releases/355489/LL_img_355489_5.png
電力データ

【MBTリンク株式会社について】
奈良県立医科大学の大学発ベンチャー企業として、ICTを活用したオリジナルの健康管理システムを開発し、利用者の健康リスク、医療費予測を行い、行動変容を導く取組などを行っている。


【株式会社エナジーゲートウェイについて】
2018年創業以来、電気のノウハウ、家電分離をはじめとしたAI技術、IoTプラットフォームを活用し、主に住宅事業者への、電力データを軸としたサービス開発・提供に取り組む。また、近年世界的な潮流である脱炭素、自然災害や高齢化などの社会課題に対し、ステークホルダーと協業しながら、電力データ・知識・技術・人財を最大限活用し、カーボンニュートラルに貢献するより賢い電気の使い方、また防災や予防を支えるサービス実現など社会課題の解決に向け、積極的に取り組んでいる。


【北海道沼田町について】
2017年10月に、「沼田町暮らしの安心センター」を設立。
町ぐるみでICTを活用した健康見守り事業に取り組む。
住みたい田舎5年連続No.1 <出典:「田舎暮らしの本2023年2月号」(株式会社 宝島社)>
面積 :283.35平方キロメートル
人口※ :2,847人(世帯数1,478戸)※2023年3月現在
町長 :横山 茂
アクセス:札幌から車で約120分(一般道使用の場合)

画像5: https://www.atpress.ne.jp/releases/355489/LL_img_355489_6.png
北海道沼田町

【一般社団法人北海道総合研究調査会(通称:HIT)について】
HITは、1975年の設立以来、独立系の総合地域シンクタンクとして、豊かな地域社会づくりのための政策や事業、プロジェクト等に関する調査研究、企画提案、情報発信等の各種事業を推進している。
地域が直面する課題を分析し、将来の姿を描きながら、地域とともに対応策を検討・試行しており、近年、そのフィールドは、北海道のみにとどまらず、全国、そして世界へと広がっている。


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