「普通の男性でいいんです」という婚活女性が一番ヤバイ…お見合い写真では隠し切れない33歳派遣社員の本性
2025年5月16日(金)16時15分 プレジデント社
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/shironagasukujira
※なお、本稿は個人が特定されないよう、相談者のエピソードには変更や修正を加えている。
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■「結婚は夢」という33歳女性
「結婚」に夢を抱くのは、誰にもある。小学生の夢が「お嫁さん」だった昭和の少女がたくさんいた時代は、遥か彼方の昔の話とはいえ、女性はいつだって素敵な配偶者と運命的な出会いを期待している。
仕事場で、週末の合コンで、通勤途中の電車の中で、いつも行くコンビニで……。もしかしたら生涯寄り添う男性と出会い、雷に打たれたように恋に落ちて、結婚する。
そんなことは皆無とは言わないが、現実は厳しい。だからマッチングアプリや結婚相談所といった、男女の出会いの場を利用することとなる。
結婚相談所のハードルはここ数年ぐんと下がってきており、明確に「結婚」を目的としている結婚相談所の利用者は、年々増えている。結婚相談所に入会すれば、「自分の希望通りの相手を紹介してもらえる」。そんな妄想を抱く人は少なくない。だが果たして、結婚相談所に入会すれば、希望通りの相手とのご縁は手に入るのだろうか?
私の相談所に訪れたのは、33歳の女性。専門学校卒で、現在は派遣社員だ。「結婚は私の夢なんです。一日も早く結婚がしたいんです」。そう言って入会してきた。
■求めているのは“普通の男性”
話を聞くと、どうやら過去には恋人に騙されて多額のお金を貢ぐことになったり、マッチングアプリで好きになった人が既婚者だったりと、いくつかのつらい恋愛体験を持っているそうだ。現在も懲りずに、マッチングアプリに登録中だそうだが「いい人がいないんです」と言う。
どんな人と結婚したいのかを問うと、「普通の男性でいいんです」と謙虚に答える。ハイトーンボイスがチャーミングで、このタイプを好きな男性はたくさんいるであろう。ごく普通の男性でよいなら、ご縁にめぐり合う可能性は極めて高いのが結婚相談所である。何しろ、登録している人は決して安くない入会金や、月会費を支払っているし、1日も早いご縁を探しているのだ。
結婚相談所に入会すると、新規入会会員の30代の女性のほとんどが、少なからず「入会バブル」と呼ばれる、男性からのお申込みラッシュがやってくる。魅力にあふれる方だとその数は100人をゆうに超えることはよくあるし、たいがい数十人の男性からお申し込みをいただける。
この入会バブルのタイミングで、会ってみても良いかなと思えるかたとお見合いし、交際して、結婚まで行きつくのが、結婚相談序の最速の成婚退会パターン。早い人は3〜4カ月で婚約者を見つけて卒業していく。
■10人の男性と会うことになった
彼女にも入会直後に50人以上の男性からお申し込みが来た。お見合い写真の専門家に撮影してもらった写真からは、とても良い印象が伝わってくる。
彼女へのお申込みは、年齢が近い人から一回り以上年上の男性もおり、バラエティ豊か。高卒、専門卒、大学院卒で、年収は300万円台から2000万円くらいの方まで多彩な顔触れである。彼女はその中から、10人の男性のお見合いを受けることにした。
彼女がこの10人の男性を選んだ基準は、「年収と学歴」。結婚相談所では、「写真、年齢、年収、学歴、身長」ほか、たくさんの項目で異性がずらりと並ぶ。そんな環境にいるのだから、お見合いを申し込まれた方の中から学歴や年収を重視するのは当然の心理である。
申し込んできた男性の中には、18歳年上の東大卒もいた。年齢も学歴も彼女とはアンバランスだが、彼女が会ってみたいというお見合いを止める必要はない。会ってみなければ、フィーリングが合うかどうか、結婚相手に考えられるかどうかはわからないのだから、可能ならまずは会ってみるのが、婚活成功への道である。
■“同時にこなす”のは大変
だが、初期の入会バブル時のお見合い調整は、簡単ではない。お見合い時間は、基本的には1人1時間という暗黙のルールがあるとはいえ、お見合いが決まった相手に、日時の候補を3日程ずつ出す。その中から、相手が選んだ日程でお見合いを組む。
場所は申し込まれた側が指定をできるので、同じ場所で2時間おきに組んでいけば理論上は可能だが、相手から日程を承諾してもらえるまでは、提案した日程はすべて空けて待たなくてはならない。
それに、よくお見合いが行われるホテルのラウンジはどこもお見合い真っ盛りで入るまで1時間並ぶということも少なくない。その負担を考えると、お見合い場所は出来るだけ予約もしておきたい。事実、ラウンジに入れないままお見合い開始時間になり、ラウンジの外で1時間立ち話して終了するというカップルもいる。予約する場合には、同時に予約条件のケーキセットをつけなくてはならないホテルラウンジもある。
写真=iStock.com/Arx0nt
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もし同じホテルでうまく調整できれば移動に追われずありがたいのだが、3連続お見合いとなると、ケーキを1日に3個も食べることになることもある。そして、10人の男性のお見合いを受けた彼女には、お見合いをたくさん受けるのは構わないが、仮交際はできたら2人までにしてほしいことを伝えていた。
■全員に「仮交際希望」
理由は、お見合いしただけでは結婚に至らないからでもある。結婚に行き着くには、交際するなかで結婚相手としてこれからともに生きていけるかを確認する必要があるからだ。
普通に働いているかたであれば、通常休みは週に2日程度。となれば、交際相手とデートするにも、同時進行できるのは2人くらいなのだ。結婚していくカップルのほとんどが、週に1度は欠かさずデートをしている。となると、10人と仮交際をすることになれば、デートする時間が取れるはずがない。だから2人、多くても3人が限界と言ったところだ。
写真=iStock.com/itakayuki
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なのに、彼女はお見合いしたすべての方に仮交際希望を出してきたのだ。これには正直私も驚いた。中には18歳年上の東大卒の大学の先生もいた。話が合うのであろうか?
お見合いしたなかには、ご実家が資産家の跡取り息子もという男性もおり、「財力が魅力」という彼女の気持ちも理解できるが、彼には未婚の小姑がいるそうで、不安はないのか?
それから年収1500万円のコンサル勤務の男性もいた。超ハードワーカーで家庭人としての期待は薄そうだが大丈夫か?
だが、お見合いした相手について一人ひとり確認していくが、彼女は「大丈夫です!」と答える。何が大丈夫なのかと聞くと「私が合わせますから」との返事。
自分を押し殺して、別人格になれるというのだろうか。どんな会話にも合わせてついていけるのか。セレブ家庭に嫁いで、こちらが下に見られないとも限らない。お見合い結婚とはいえ、いや、お見合い結婚だからこそ、身の丈に合ったご縁というのが何より大事なのに、彼女は自分より優秀な人、お金持ちな人への憧れが人の何倍も強いのである。でも、私は彼女のそのお見合い返事に、何かが引っかかった。
■何を聞いても「大丈夫です」
それでも本人が10人と仮交際になっても良いと言うのだから、お見合いの返事を私が勝手にお断りすることはできない。だが、お見合いが終わって交際希望を先方に出そうとしている矢先に、彼女の場合は残念ながら、先方から次から次へお断りが入った。
理由は先方カウンセラーから知らされるのだが、実は真実かどうか定かではない。相手を傷つけるような理由だった場合には、カウンセラーの配慮により無難なお断り理由——例えばフィーリングの違いを感じたなどに書き換えられることが多いのだ。
彼女について言えば、お断りの理由は「ケーキセットのケーキを召し上がらず、健康不安があったため」や、「写真の印象と違った」や「環境の違いを感じた」などの記載があった。東大卒の年上の方のお断り理由には、「話が合わなかった」と書いてあったが、これはかなり本音に近いかもしれないと感じた。
ケーキが出ることは説明していたのに、なぜ食べなかったのかを聞くと「人前で食事をするのが苦手なんです」と言う。結婚生活ともなれば、一緒に食事をするのが夫婦の基本でもある。誰かと一緒にできないとなると、結婚生活そのものが難しい。この話を彼女にすると、「大丈夫です。慣れれば食べられるようになります」と言う。彼女は、すべてにおいて「大丈夫です」と答える。やはり何かが引っかかった。
■お金のある、頭の良い男性を求めていた
その後もかなりのお断りを受けるため、お見合い時にどんな会話をしているのか、ヘアメイクなどの身だしなみや、香水をつけすぎていないか、会った瞬間の対応はどんなふうにしているのか、会話のコツなども含めてアドバイスを何度もした。
また、彼女の考える結婚生活についても話を聞いた。どんな暮らしなら彼女が幸せと思えるのか。すると必ず「お金がある、頭の良い人と結婚したいです」と答える。彼女は、優秀な大学を卒業し、お金に余裕がある人との結婚を強く望んでいた。
「相当年上でもよいのか?」と聞くと、「う〜ん、年上でも構いませんが、できたら30代の男性が良いです」と答える。
優秀な大学を出た社会で活躍している30代男性は、自分と同じような学歴の女性を求めることが多い。特に共働きが主流の令和の結婚は、2人でバリバリと働いて、家事も育児も協力し合うというスタイルを希望される方が多いのだ。
だが、彼女は専門学校卒の派遣社員。現実問題として相手に優秀な学歴を求めるのであれば、一回り以上年上などの男性でなら、可能性はなくはない。だが、年上だとしても、高学歴、高年収の男性が、若いという理由だけで結婚相手を選ぶであろうか? では、家政婦をしてくれ、子どもを産んでくれさえすれば良い、という今の時代にかなり稀有な男性が仮にもいたとして、その相手との結婚生活は女性にとって幸せと言えるのか?
写真=iStock.com/takasuu
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■“不釣り合いな相手”に空回りしていた
「結婚は等価交換」であると思う。与えられるだけの結婚はない。こちらからも同じように与えるものが必要なのである。実際、格上婚を実現したものの、結婚相手ばかりか相手の家族も全員が優秀すぎるということもあった。その方は自分の経歴をバカにされ、相手家族からもいじめられて離婚に至ったという。
これらの話をかみ砕いてわかりやすく彼女に伝える。彼女は、理解できたというような表情をその場ではしたが、どうも彼女の婚活は、「不釣り合い」な相手に空回りしているようにしか見受けられない。
このままでは、時間ばかりを空費するのは明白である。さて、どうしたものか。彼女と釣り合いの取れた男性とお見合いし、交際を継続できなければ、結婚には至らない。そこで、待っているだけでなく、こちらから積極的にお申し込みを入れようという作戦に出ることにした。だが彼女が申し込む相手は相変わらず、東大、京大などの旧帝大卒、年収1000万円以上で、医師や弁護士、公認会計士などのいわゆるハイスペックな、年齢が近く、世間的には“イケメン”と評されるような男性ばかり。
毎日申込みを続けても、すべてが不成立となる。映画『プリティ・ウーマン』のジュリアロバーツじゃあるまいし、そんなシンデレラストーリーはまず起こらない。
■“ハイスペに選ばれれば幸せになれる”という幻想
ここまで彼女が高望みするのはなぜなのか。冒頭に過去の恋愛で辛い経験があったと書いた。彼女に深掘りしてみると、理由が明らかになった。どうやらお金を貢いで失敗した過ちから、守られたいという気持ちが強くなっているようだった。経済力のある男性に依存すれば次こそ安心できると考えていたのだ。
さらに、既婚者に振られたという経験からも、本命になれなかったことに傷ついているようだった。ハイスペックのすごい人に選ばれたら自分の価値が証明されるとでも思っている節があった。だから理想の条件がどんどん高くなっていたのだ。悪循環である。
写真=iStock.com/recep-bg
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だが、自分よがりで、自己肯定感の低さを埋めるための結婚が仮にできたとして、いっときは満たされるかもしれないが、それはただの依存に過ぎない。そこに本当の幸せな結婚はないと思う。
入会してきたときに彼女は「普通の男性でいいんです」と言っていた。彼女の「普通の男性」の基準が、完全にバグっているのはもはや言うまでもない。旧帝大卒、年収1000万円以上の30代男性は、普通ではない。ごくごく一部の最上位層男性、SランクいやSSランクである。
もちろん結婚相談所にはこんなに素晴らしい男性がいるのか……と目を疑いたくなるレベルの人が実際にいるのも事実だ。
■幸せな結婚生活の秘訣は「身の丈婚」
同時に、世間的に“才色兼備”と評されるような女性たちもいる。この戦いの中で、彼女はただ自分の自己肯定感を埋め合わせるためだけに好条件を求めている。これでは埒が明かない。
大屋優子、現代洋子『余計なお世話いたします 半年以内に結婚できる20のルール』(集英社)
結婚は等価交換なのだと書いた。であれば、「身の丈婚」は幸せな結婚生活の秘訣でもある。正直、どちらか一方だけが格上すぎるご縁はなかなか生まれないし、生まれたとしてもお互いに幸せになれる確率はかなり下がってしまう。
結婚相談所に入会したからと必ず希望条件の人に会えるわけでもないし、結婚できるわけでもない。予備校で勉強したら合格判定圏外の大学に入学できるわけではないし、ジムに入会したら、必ず痩せられるわけはないのと同じだ。
だが、彼女のように結婚相談所に入会したら、「希望の相手を紹介してもらえ、結婚できる」という間違った幻想を抱いている人が一部にいることもまた事実である。案の定、彼女は結婚相手を見つけられないままでいる。もちろんカウンセラーとして幸せな結婚ができるよう最善を尽くしてはいるが、本人がハイスペックに固執し、むやみやたらに高望みすることで、30代の貴重な時間が無駄になってしまうのは本当にもったいないと思う。
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大屋 優子(おおや・ゆうこ)
結婚カウンセラー
1964年生まれ、株式会社ロックビレッジ取締役。ウエディングに特化した広告代理店を30年以上経営のかたわら、婚活サロンを主宰。世話好き結婚カウンセラーとして奔走。著書に『余計なお世話いたします 半年以内に結婚できる20のルール』(集英社)がある。
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(結婚カウンセラー 大屋 優子)