ロッキングチェアに怯える猫? 猫にまつわる英語イディオム (7)

2025年5月19日(月)16時16分 財経新聞

 猫が緊張して落ち着かないときの様子は、見ていてこちらまで、そわそわしてしまうものがある。尻尾をピンと立て、耳を動かしながらキョロキョロと周囲を警戒するその姿は、英語圏でも神経質さの象徴として定着しているようだ。

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 今回紹介する「as nervous as a cat in a room full of rocking chairs」という表現も、そんな猫の姿をユーモラスに切り取ったイディオムのひとつである。

■As nervous as a cat in a room full of rocking chairs
 「as nervous as a cat in a room full of rocking chairs」を直訳すると、「ロッキングチェアだらけの部屋にいる猫のように神経質な」となる。実際、このとおりの意味のフレーズだ。

 ロッキングチェアは、前後にゆらゆらと動く構造だが、もしそんなものだらけの部屋に猫がいたらどうなるだろう。長い尻尾を持つ猫にとって、いつどの椅子に踏まれるかわからず、終始落ち着かないに違いない。

 そのイメージから、「非常に緊張してそわそわしている人」をたとえる表現として生まれたのがこのフレーズだ。

■由来と変遷
 この言い回しが最初に記録されたのは、1953年のとあるアメリカの新聞のコラムである。

 それに、「Next to living on the side of a volcano, the most hazardous existence we can think of is that of a long-tailed cat in a house full of rocking chairs.(火山のふもとに住むのに次いで危険なのは、ロッキングチェアだらけの家にいる長い尻尾の猫だ)」という一節がある。

 その後1956年、アメリカ南部出身の歌手でありテレビ司会者だったテネシー・アーニー・フォードが、自身の番組でこの表現を用いたことから、南部英語として広く知られるようになった。

 なお、「as nervous as a cat」という簡潔な形での比喩は、口語的な表現として以前から使われていたと考えられる。つまり昔から、「神経質な動物=猫」という認識があったうえで、それを視覚的に強調する舞台装置としてロッキングチェアが加わったというわけだ。

 このイディオムは現代でも口語表現として生きており、特にアメリカ英語、なかでも南部の話し言葉に多く見られる。やや古風な印象もあるが、あまりにもわかりやすい比喩のため、誰しも耳にすれば意味はすぐに伝わる。

 またこの表現には、いくつかバリエーションも存在する。たとえば、「As nervous as a long-tailed cat in a room full of rocking chairs」と、尻尾の長さを強調したパターンもあれば、似たような比喩として、「As nervous as a cat on a hot tin roof(熱いトタン屋根の上の猫のように神経質)」というイディオムもある。

 こちらはテネシー・ウィリアムズの戯曲『Cat on a Hot Tin Roof(邦題:熱いトタン屋根の猫)』で広く知られるようになった。

 例文
 ・I get as nervous as a long-tailed cat in a room full of rocking chairs whenever I speak in public.
 (人前で話すときは、いつも長い尻尾を持った猫がロッキングチェアだらけの部屋にいるような気分になる)

財経新聞

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