「VHS2025年問題」耐用年数が期限…思い出映像の移し替え依頼、専門店には月100本以上
2025年5月20日(火)14時0分 読売新聞
VHSをデジタル化して編集する方法を職員から教わる体験会の参加者(3月22日、富山市の県映像センターで)
1980〜90年代の思い出がつまった「VHSテープ」が見られなくなる——。最長30年ほどとされる耐用年数が期限を迎える「VHSの2025年問題」が注目されている。大切な映像を残そうと、富山県内では中身をDVDなどに移し替える取り組みが人気を集めている。(野内凪輔)
磁気テープが劣化
VHSはアナログで映像を「磁気テープ」に記録する仕組み。国立科学博物館によると、1950年代に業務用として使用が始まり、90年代に生産のピークを迎えた。しかし、その後は画質がよいDVDに押され、2016年には再生デッキを販売していた国内唯一の企業が生産を終えた。
VHSは、磁気テープが時間とともに劣化し、徐々に映像が乱れて20〜30年程度で寿命を迎える。テープが切れたり、カビが生えたりして、再生できなくなる場合もある。
19年には国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)が、「磁気テープ記録は25年までにデジタル化しなければ永遠に失われる可能性がある」と発表。世界的にも反響を呼んだ。
カメラ店でDVDに
県内の専門店には、VHSの映像をデジタル化してDVDやUSBメモリーに移し替える依頼が増えている。写真・カメラ専門店「カメラのキタムラ富山・掛尾店」(富山市掛尾栄町)では、約1年前から依頼が増加。23年度までは最大月50本程度だったが、現在は多い月で100本以上のVHSを預かることもある。
持ち込まれるのは、結婚式や旅行、子どもの成長の様子など大切な思い出ばかり。店員の笹原直人さんは「カビが生え、伸びきったテープも復元できる可能性はある。見られなくなる前に依頼を」と力を込める。
編集機器を一般開放
県所有の映像を管理する県映像センター(富山市舟橋北町)では、学習教材や
センターでは編集機器を県民に一般開放しており、事前申込制で、職員からデジタル化と編集を学ぶことができる。2〜3月に体験会を開催したところ、募集から数日で満員になった。
3月22日の体験会には5人が参加。参加者は職員に「映像のない部分はカットしましょう」と助言を受けながら、約2時間かけてデジタル化した。
30年以上前の家族旅行の映像をDVDに移した富山市八尾町黒田の男性会社員(70)は「久しぶりに見られて、懐かしくうれしい。息子たちと一緒に見たい」と目を輝かせていた。