こんな人は体も脳も見た目も加速度的にヨボヨボになる…医師・和田秀樹「高齢者がしてはいけないNG行動」
2025年5月30日(金)16時15分 プレジデント社
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Pekic
※本稿は、和田秀樹『どうせあの世にゃ持ってけないんだから 後悔せずに死にたいならお金を使い切れ!』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
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■子どもへの教育に「我慢」を教える理由
「我慢」というのは、いまを楽しむのではなく、「いまは我慢して、あとにいいことを取っておくこと」なんですね。
1960年代にスタンフォード大学で心理学者ウォルター・ミシェル博士が行った「マシュマロ・テスト」という有名な心理実験があります。
4歳の子どもの前にマシュマロを一つ置く。「いま食べてもいいけれど、15分待つことができたら、マシュマロを2個あげるよ」と言って立ち去り、我慢できるかどうかを見る。
すぐに食べた子と我慢できた子とでは、その後アメリカの大学進学適性試験で、我慢できた子のほうが総合スコアで平均210ポイントぐらい高かったという。
さらに10年後、20年後の追跡調査でも、社会的な成功の度合いが違ったという結果もあって、子どもは我慢できるように育てたほうがいいという話になったのです。
このように日本人に限らず、私たちは幼い頃から、我慢することを教育やしつけによって教えられてきたので、多くの人たちは「いま我慢すればあとでいいことがある」と信じているわけです。
■「高齢になって我慢」は大損する
しかし、「我慢することは美徳である」と思い込んでいると、高齢になったら損をすると思います。高齢になってくるとあれやこれや我慢しているうちに病気になってしまったり、足腰が弱って歩けなくなってしまったり、ボケたりしてしまいます。
若いうちは、どんなことでも我慢すれば何かしらの見返りが得られたかもしれませんが、高齢者の場合、人生の残り時間を考えれば、「いま我慢すること」は割に合いません。
我慢ばかりしていると、幸福を感じられないばかりか、自ら「老い」を早めることにもなりかねません。
年を取ると記憶力の衰えを気にする人は多いですが、脳の中では記憶を担う「海馬」よりも、人間的な感情や行動を司る「前頭葉」から、真っ先に縮み始めることがわかっています。
前頭葉の機能が衰えてくると、だんだん意欲がなくなってきます。年を取ったときに意欲が落ちるというのは、かなり怖いことです。歩く意欲が落ちると歩けなくなりますし、頭を使う意欲が落ちるとやはり知能が低下してきます。
我慢ばかりの生活をしていると、なおのこと前頭葉が刺激されないので、ますます機能が衰えて、体も脳も見た目もすべてが加速度的に老化してしまうことになるのです。
■「お金を何に使おうか」と考えるだけでも前頭葉は働く
前頭葉は、美味しいものを食べるときや好きなことをしているときに活性化します。実は、「お金を何に使おうか」と考えるだけでも前頭葉は働きます。
ちょっと奮発してグルメを楽しんだり、欲しかったものを買ったりしたときに気分が高揚して、「よーし、明日からも頑張るぞ!」と活力が湧いてくるでしょう。これが前頭葉が刺激されている証拠です。
とりわけ新しい経験は、前頭葉を活性化させる最強の老化防止法です。行ったことのないところへ旅行したり、袖を通したこともないような派手な服を着たり、入ったことのない喫茶店でコーヒーを飲むだけでも前頭葉が刺激されて働きが活発になります。
これまでの自分とは違うこと、やりたかったけれど二の足を踏んでいたこと、憧れていたけれどできなかったことなどをどんどんやってみてください。
写真=iStock.com/JohnnyGreig
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「ワクワクドキドキ」することにお金を使うのは、とても有意義です。周りの目が気になるかもしれませんが、ちょっとだけ勇気を出してみる。私は「実験」と呼んでいるのですが、「試しにやってみる」ことです。
試しに少しずつやりたいことをやってみて、周りの反応がどうかを見てみる。自分が思うほどには人は自分を気にしていないものです。案ずるより産むが易し、という経験をすることも多いと思いますよ。
■高齢者の「キャバクラや推し活」は脳も体も若返る
実は、「試してみないとわからない」と思う人のほうが前頭葉が若いのです。「試しにやる」ことができて、毎日が実験だと思って生きていたら、老後も退屈せず、けっこう楽しめます。
和田秀樹『どうせあの世にゃ持ってけないんだから 後悔せずに死にたいならお金を使い切れ!』(SBクリエイティブ)
高齢になるほど、より強い刺激が必要になるので、そうやって新しい世界に踏み出して感動が得られたなら、脳の若さを保つことができると思います。
ワクワクドキドキと言えば、キャバクラに行ったり、推し活したりするのもおすすめです。周りから「年甲斐もない」とひんしゅくを買うかもしれませんが、ここでもちょっと勇気を出すことです。
年甲斐もないことをすると、ホルモンの分泌も活発になり、脳も体もうんと若返ります。
前頭葉の機能は、心のありようで大きく変わるものです。心がウキウキしていると、前頭葉の働きは活発になりますが、どんより沈んでいると、停滞します。
そこで私がおすすめしているのは、「嫌なことはなるべくしない」「いまを楽しむ」ということです。行き当たりばったりでいい。そのときそのときいいと思ったことに飛びついて心から楽しむ。
年を重ねれば重ねるほど、いまを楽しく幸せに生きることを大事にしたほうが、我慢などするよりも、その先の幸せにつながっているということです。
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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。国際医療福祉大学教授(医療福祉学研究科臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)、『60歳を過ぎたらやめるが勝ち 年をとるほどに幸せになる「しなくていい」暮らし』(主婦と生活社)など著書多数。
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(精神科医 和田 秀樹)