アマゾンの倉庫、AIで不良品の判別自動化

2023年6月6日(火)16時0分 JBpress

 米アマゾン・ドット・コムが米国に持つ一部の大規模倉庫では、商品パッケージの破損状態を確認するためにAI(人工知能)を活用している。従来は従業員が目視検査で不良品を判別していたが、AIによる自動化で倉庫業務の効率化を図っている。


画像認識ステーションで不良品を判別

 米ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、アマゾンの従業員は、商品の棚入れや棚出し、梱包(こんぽう)の際に、パッケージの状態を目視で確認するよう求められている。箱や袋にへこみや破れ、こすれ痕がないかどうかを確認しているという。

 だが、アマゾン・ロボティクスの応用科学ディレクターであるジェレミー・ワイアット氏によると、ほとんどの商品パッケージは良品であるため、破損があるものを見つけ出すには手間がかかる。従業員は極まれなものを探すことになるため、集中力も必要で、骨の折れる作業になるという。

 米アマゾンによると、不良品比率は商品1000個あたり1個以下。だが年間80億個のパッケージを取り扱うアマゾンにとって、不良品の個数は単純計算で年約800万個にもなる。そこで同社は、これら不良パッケージの判別にAIを活用することにした。

 アマゾンでは、棚出し・梱包段階の商品確認作業を自動化している。例えば、個別の注文ごとに集められた商品は、それらが正しいものかどうかを確認するため、画像認識ステーションと呼ばれる装置に運ばれる。具体的には、商品を専用カートに入れ、このカートを画像認識ステーションを通過させる。新たなシステムでは、この工程でパッケージの破損状態を確認する。不良と判断された場合、カートは従業員に渡され、より詳しく調べられる。何も問題がなければ、梱包され、顧客に発送される。


良・不良の写真でAIを訓練

 英調査会社インタラクト・アナリシスのルーベン・スクリベン氏によれば、倉庫の従業員にとってパッケージが破損しているかどうかは比較的容易に判断できる。だがこれを自動化するためには、破損か否かを判別する方法を検討しなければならない。

 米アマゾンのソフトウエア開発マネジャーであるクリストフ・シュヴェルトフェーガー氏によると、同社では、良品と不良品の写真を教師データとして用い、AIを訓練した。これにより両者の違いを認識し、不良品発見時に警告を発するシステムを実現した。

  アマゾンでは現在、このAIシステムを2つのフルフィルメントセンター(発送センター)に導入している。今後は北米と欧州の計10以上の施設にシステムを導入する計画だ。シュヴェルトフェーガー氏によれば、アマゾンではこのシステムが人間に比べて3倍の効率を発揮することを確認している。アマゾンにとっては、不良品を発送してしまうリスクを軽減でき、顧客体験の向上にもつながる技術だという。


商品パッケージ仕分けるAIロボットも

 ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、アマゾンでは、複雑なサプライチェーンを厳密に管理することで、迅速かつ確実な配送を目指しており、今回の新システムはその取り組みの一環だという。

 同社は22年11月、米東部マサチューセッツ州ボストン市郊外のロボット開発・製造拠点を公開し、商品の仕分けを行うAIロボットアーム「Sparrow(スパロー)」を披露した。これは、箱の中の異なる商品の形や色などを瞬時に認識し、アームの先端で吸い上げて、異なる複数の箱に次々と仕分けていく装置だ。

 商品パッケージはプラスチック製の円筒形ボトルやDVDケースなどさまざまな形、大きさで、ロボットはそれらを個別に認識する。アマゾンによれば、このロボットアームは、同社総在庫の約65%に相当する数百万点の商品を扱える。アマゾンはそれまで、商品を梱包した段ボール箱などを、荷かごに仕分ける「Robin(ロビン)」や「Cardinal(カーディナル)」などのロボットを開発・導入してきた。だが、Sparrowは梱包箱ではなく商品そのものを認識して仕分ける。同社初のAI導入ピッキングロボットとして注目されている。

筆者:小久保 重信

JBpress

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