「貯金だけでなく、計画に従って資産運用に回していくことが人生を豊かにする」…みずほ証券・浜本吉郎社長

2024年10月8日(火)9時40分 読売新聞

みずほ証券の浜本社長(東京都千代田区で)

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 政府が掲げる「資産運用立国」の実現に向けて、みずほ証券は、家計の貯蓄から投資への動きを支援している。企業向けビジネスも組織の見直しや米国企業の買収で成長を図っている。浜本吉郎社長に戦略を聞いた。(聞き手・市川大輔)

貯蓄から投資へ

 ——政府が資産運用立国を推進している。

 「すべての証券会社、金融機関が一緒になって、資産運用立国、そして、貯蓄から投資への誘導をどんどん進めていきたい。

 もちろん、証券会社としてお金もうけしたくないと言えば、うそになるが、それが本丸じゃなくて、日本の家計が勤勉に仕事をしながら、汗水たらして得たお金を貯金だけでなく、人生計画に従って資産運用に回していくことが人生を豊かにする。

 年金など、社会保障の不安が若い方にある中で、自分の資産、将来は自分で守るというリテラシー、カルチャーみたいなものを醸成して、国頼みではなく、自分で積み立てて運用することが大事だ。

 結局、日本を豊かにして消費にも企業にも回って株式市場が活性化する。ひいては、年金への財政負担が減って少子高齢化も乗り切っていける。日本が持続的な成長を遂げられる。やっぱり、貯蓄から投資というのはやらなければいけない。

 それぞれのお客様にとって、最適な金融機関がふさわしい商品を適切に説明していくことが求められている。そのため、みずほ証券だけでなく、みずほ銀行や連携する楽天証券などと一つの経済圏を作っている。

 たとえば、若い世代を含む現役世代で、自らインターネットで情報を得て、物事が考えられるお客様に対しては、手軽で使いやすい楽天証券が向き合うべきだ。楽天証券でも、ある程度、資産が形成されてきたお客様で、対面でしっかり相談したいというニーズがあれば、みずほの担当者が応じた方が良いかもしれない。

 富裕層で、多様な提案やプロフェッショナルな相談を求めたいというお客様は、みずほ証券が機関投資家向けのノウハウも交えて対応すべきだろう。適切な金融機関が対応できるような仕掛けを磨いていきたい」

増える物言う株主

 ——企業向けビジネスは。

 「物言う株主が増えている。資本戦略や株主対応に関する相談が大企業だけでなく、地方を含めて中堅、中小企業からも増えている。株主対応を手がけてきたみずほ信託銀行と協働し、活動を増やしている。

 当社の調査では、東証プライム市場の上場企業約1600社のうち、物言う株主が5%以上の株式を保有している企業が200社以上ある。5%に達していない企業は、その何倍にもなるだろう。上場する企業の多くが株主との向き合い方に悩んでいる。

 そのため、(企業の新規株式公開や資金調達を支援する)投資銀行部門で、株主対応のために資本戦略を助言する部署を強化している。以前は、企業の新規株式公開を支援することが中心だったが、そんな時代はとっくに終わった。株式公開の逆で、経営陣による自社株買収(MBO)による株式の非公開化もあれば、外部に対する合併・買収(M&A)をすることもある」

 ——投資銀行業務は、みずほフィナンシャルグループとして、2023年の手数料ランキングで初めて世界10位に入った。今後の方針は。

 「引き続き、米欧の一流投資銀行に続くような、アジアナンバー1、グローバルトップ10のポジションをしっかりキープしたい。そのためには、(昨年買収した)米投資銀行グリーンヒルとの連携が何よりも大事だ。

 世界中の企業がAI(人工知能)やエネルギー安全保障、人手不足などに対応して企業価値を向上させる課題に向き合っている。日本では、みずほ銀行やみずほ証券が企業との付き合いの中で、そうした入り口から助言し、最終的にM&Aを提案したりするが、米欧では足りないピースだった。

 グリーンヒルが入ることで、米欧企業にも上流から付き合って助言できるようになるだけでなく、みずほとしてその後の買収資金の融資や、株式や債券発行、それらの投資家への販売など、下流までのサービスを一気通貫で提供できる可能性が増えた。

 日本企業に対しても、これまでの当社では制約があった。海外での投資や売却案件を案内できるようになり、貢献の幅が広げられる。例えば、この前は、スペインにいて、欧州の再生可能エネルギー事情に詳しいグリーンヒルの担当者が来日し、日本の電力やエネルギー関連企業に現地の事情や案件に関する情報を提供した。

 同じようなことを、日米欧の間でも、行ったり来たりしてやっている。こうした共同提案は、23年12月に買収してから半年間で800件を超えた。もっと積み上げていきたいし、その効果は出てきそうだ」

 ——スタートアップ(新興企業)への支援は。

 「長期的に成長資金を取り込むために、どのような投資家に入ってもらうかという株主作りが中心だ。海外の長期目線の投資家に引き合わせている。

 先日は、約300の海外投資家を招き、日本企業約200社が参加するイベントを開いた。海外投資家の関心は高く、本社のビルで、1週間に約1500件、1対1の面談をやった。参加した約200社の中には、上場前の企業も約20社いた」

◆浜本吉郎氏(はまもと・よしろう) 1990年慶大経卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。米ペンシルベニア大経営大学院修了。2019年みずほ証券執行役員(アジア・オセアニア地域戦略担当)、20年常務執行役員グローバルマーケッツ部門長を経て、21年4月から現職。神奈川県出身。

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