人が辞めていく組織は「社外にある情報」に目を向けようとしない。では、人が辞めない組織はどうしている?
2024年12月11日(水)6時0分 ダイヤモンドオンライン
「あなたの職場は、社外からも積極的に情報を得ているでしょうか?」そう語るのは、これまでに400以上の企業や自治体等で組織変革の支援をしてきた沢渡あまねさん。その活動のなかで、「人が辞めていく職場」に共通する時代遅れな文化や慣習があると気づきました。それを指摘したのが、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』。社員、取引先、お客様をうんざりさせる「時代遅れな文化」を指摘し、現場から変えていく具体策を紹介。「まさにうちの会社のことだ!!」「これって、おかしいことだったの!?」と、多数の反響があり話題に。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、「社内の情報しか見ない職場」の問題点について指摘します。
限られたインプットで何とかしようとしていないか?(イラスト:ナカオテッペイ)
閉じた世界のインプットしかない組織
よい仕事をして、よりよい成果を出すには、情報の有効活用が欠かせない。しかし一言で情報と言っても種類はさまざまである。
・異常や異変を知らせるための情報
・仕事の生産性や効率を上げるための改善や工夫を促すヒント
・新たな発想を得るためのネタやヒント
・仕事のやり方や組織のあり方を評価するための、利用者や関係者の声
加えてこれらの情報入手経路も組織によってさまざまだ。あなたの組織やチームでは、このような情報をどのように入手しているだろうか。
・チームのマネージャーやメンバーとやり取りされる情報のみ見ている
・たまに業界紙を眺める程度
このように内や中に閉じてはいないだろうか。
情報やヒントを得るためのリソース、すなわち入手元が限られれば限られるほど、それだけ課題解決や発想のバリエーションも限定される。目先の仕事を回す分には問題ないかもしれないが、新たな着眼点や発想は得にくい。
また、自分たちだけで何とかしようとする体質は他者との共創による課題解決や価値創造を遠ざける。それが組織のリスクを高めることは、ここまで何度も強調してきた。
多様性(ダイバーシティ)7つの着眼点
社内だけを見る姿勢は内向きな体質を助長する。そうならないためにも多様な情報に触れることが大切だ。 筆者はダイバーシティ&インクルージョンを、下記の7つの着眼点で企業組織に問うている。
2 専門性のダイバーシティ:職種や専門能力のバリエーション
3 経験・体験のダイバーシティ:異なる組織・業界・地域での経験。さまざまな体験
4 インプットのダイバーシティ:知識の引き出し、着眼点のバリエーションなど
5 ライフステージのダイバーシティ:育児や通学、介護、通院しながらなど
6 働き方のダイバーシティ:成果の出し方、組織との関わり方(時短・副業・複業・兼業・週3日勤務)、仕事に対する向き合い方
7 目的・用途のダイバーシティ:組織や仕事の目的、場や施設の用途など(を多目的に捉え解放する)
「属性のダイバーシティ」は比較的わかりやすいであろう。性別や国籍、または障がいなど、さまざまな特性を持った人を受け入れて活かす。日本でもすでに多くの企業が施策として取り組んでいる。「専門性のダイバーシティ」も、組織によりけりだが進んできている。たとえばマーケティングやデザインなど、今までその組織になかった能力を有する人を取り入れて新たなビジネスモデルや「勝ちパターン」を実現する。ITエンジニアを起用または専門職種を組織に創設し、アナログ一辺倒だった仕事のやり方を変革する。DX(デジタルトランスフォーメーション)の後押しもあって、今までとは異なる先進的な能力を持った人を採用または育成する取り組みも各所で進みつつある。
インプットの多様性はあるか?
しかし、それだけではダイバーシティ&インクルージョンは十分とは言えない。意外と見落としがちなのが「経験・体験のダイバーシティ」「インプットのダイバーシティ」「ライフステージのダイバーシティ」、そして「働き方のダイバーシティ」である。
ここで目を向けたいのが4つ目の着眼点。インプットのダイバーシティだ。情報の入手元、すなわちインプット経路の多様性が、私たちの発想を豊かにする。日々の仕事の生産性や効率はもちろん、新たな「勝ちパターン」を創出しやすくする。
「仕事のやり方がマンネリ化してつまらない」「新たな発想が得られない」「いいアイデアが浮かんでこない」
このようにモヤモヤしている人ほど、情報の入手元、すなわちインプットを得るための接点が限定されすぎていないか疑ってみよう。