印章の伝統を守りつつ、次世代への生き残りをかけて、ハンコの新たなカタチを生み出す「HANKO KIAN®」誕生ストーリー

2023年12月18日(月)18時16分 PR TIMES STORY

三田村印章店では、印章の文字デザインの美にこだわって印章製作をしてきましたが、押し寄せるデジタル化の大きな波は、明らかなハンコへの需要の減少を招き、数多くの同業者が廃業の危機にさらされています。

印章は、唯一無二が求められ、その印影はむやみに開示するものではありません。

しかし、この状況に至って、三田村印章店ではお客様のために、文字の美にこだわった製作をしてきたけれど、それを伝える努力はしてこなかったことに気づかされました。

そこで、三田村印章店では、この現状から脱却するために、最も精魂を傾けてきた区切られた円の中に文字を美しく描く技術を他の用途にもご利用頂くためのアピールをして行くことにしました。そのために、立ち上げたのがおそらく世界でも初の印章ブランド、「HANKO KIAN®」です。

このストーリーでは、今なぜ、印影デザインをブランド化しようとするに至ったのかについて紹介します。

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印鑑を使用する機会が減っている今だからこそ、手描きデザインで印章の美を発信しようという試み

はじめまして。大阪のはんこ屋で、三田村印章店の店主 三田村煕菴(きあん)と申します。

実用印章の世界で小さな印面にいかに美しく文字をデザインするかという試行錯誤を長年繰り返してきました。

業界内では、同業の技術者に教え、技術競技会の審査をする立場にあり、印章製作技術の継承に努め、技術者のための教科書「印章教科書」(公益社団法人全日本印章業協会)の編纂にも携わってきました。

平成26年に現代の名工、平成29年に黄綬褒章を受章しています。

私は、はんこの世界でも、特に技術畑一筋の人間です。

以前、当店の看板を付けてくれた若い職人さんに「え、はんこって手で製作するのですか?」と聞かれました。

その人は、はんこはすべてパソコンで製作するものと思われていたようです。

デジタル化の波に翻弄され、押印する機会が急激に減少している現在、印章の製作に国家検定があることや、小さな印面にいかに美しく文字をデザインするかに試行錯誤している職人がいることなど、ますます世間からは忘れさられていることのように感じます。

私は、印章において最も大事なことは、使用者の意志表明として残り続ける唯一無二の印影であると考えて製作してきました。

しかし、印を使用する機会がどんどんと削られている今、印章の美をこれまでどれだけ世間の皆様に発信することが出来ていただろうか?

はんこの印面はお客様のものだから、作品ではなく発信できないという思いに囚われていたのではないだろうか?

その思いが起点となり、印章の文字デザインを手描きで表現してみようと思いました。

仕事を休んでいた最中に出会った、印章の美。製作に没頭するうちに心の病が癒えた

私はもともとハンコ屋を生業としていたわけではなく、ハンコとの出会いは、30数年前、最初の仕事が合わず、うつ病にかかって3年余りが経ち、仕事も出来ずに暗中模索をしている時でした。

そんな中、訪れたのが、妻の実家のハンコ屋でした。

妻の実家は印章の卸売りが主軸で、小売店も併設していました。

そこで初めて、印章の作品集というものを見たのです。

それまでは、はんこに全く関心があるわけではなかったのに、その作品集を見たときにこんな小さな空間にでも美があることに驚きを感じ、その技に魅せられたのです。

振り返ってみると、幼少の頃は絵を描くことが好きな子供でしたが、中学生の頃ラファエロの優美で人を包み込む優しさを持った画風を見た時、自分にはとても表現できないと衝撃を受け、自信を失くした私は絵を描くことを止めてしまいました。

しかし、妻の実家のお店で印章の美に魅せられた時、私の心の奥深くで眠っていた何かがむくむくと目覚め、それがきっかけで印章の職人としての人生を歩むことになりました。

当初は、妻の実家の店舗を任され、遅まきながら、先輩職人の手解きを受けながら印章の製作を覚えていきました。

製作すること自体が楽しく、仕事が終わっても家で夜遅くまで印章についての知識を無我夢中で吸収していきました。

そうこうしているうちに、不思議なことにたったの数か月で、すっかり心の病が癒えてしまったのです。

私にとって、はんことは人生を変えてくれた大切なものでもあり、美を求める私にとって今でも課題を突き付けてくるものです。

私の人生を変えた美の印章秀作集

フリーハンドで描き出される「HANKO KIAN®」のデザイン

ハンコの文字デザインには美があることを広く知って頂くこと、ジャパニーズカルチャーとしての印章デザインを世界に広めて行き、先人から受け継いできた印章製作の技術や文化を次世代に残していくために立ちあげました。

私の雅号である煕菴(きあん)がいつか海外にも通じる名称になればという想いから「HANKO KIAN®」と名付けました。

印章ブランド『 HANKO KIAN®︎ 』のデザインは、三田村煕菴自身が篆書体をベースにしてフリーハンドで描いた文字デザインです。

篆書体は、一つの漢字に対して複数の形状がある文字です。そのため、同じ文字でも「完全オリジナルの篆書体印章」を作ることが可能です。

そこで印章という既成概念から離れて、「区切られた輪郭の中で文字が生き生きと舞うデザイン」として捉え直してみようと思うことができました。

これまでのようにセキュリティを守るための印影デザインではなく、もっと多くの人に見せたくなる【 魅せるデザイン 】を追求して印章ブランド『 HANKO KIAN®︎ 』を育てていきたいと思っています。

すべて篆書体の「大山」さん

デジタル化により激減する印章店と技術者。伝統を繋げるためにTシャツ販売や個展開催で印章の世界をアピール

デジタル化の波が押し寄せる中、印章店とその技術者は、2003年の2478件から2023年777件へと(全日本印章業協会の会員数より)激減しています。

使用用途がどんどん減っているので、致し方無いこととは、思うのですが・・・。

当店では、このままでは、印章製作というこれまで培ってきた技術もやがてなくなってしまうのではないかという危機感から、印章の文字デザインを「HANKO KIAN」と名付け、禅語をデザインしたTシャツを2020年に企画販売しました。

まず、最初に製作したのは、2019年に製作した、禅語「心外無法」(幸せ不幸せを決めるのはあなたの心)をモチーフにデザインしたTシャツでした。

こちらは、印章講習会の課題で製作した作品の意味に深く共感したことからデザインしました。

その翌年の2020年2月には、毎日放送の「明石家電視台」のサウスポーを特集した企画にご縁があって出演をさせて頂くことになりました。その際に、初めて直接お会いする明石家さんまさんが座右の銘とされている「生きているだけで丸儲け」に対応する禅語を調べたら、「無一物」という言葉に行き当たり、Tシャツにデザインさせていただきました。

これらの禅語のTシャツは、2020年の大阪市魅力発信事業にも選出して頂いたのですが、Tシャツという商品が全くの異分野であったこと、コロナ真っ最中でインバウンド需要も見込めなかったこともあり、厳しい状況でした。

その販売方法等を公的な機関に相談していたところ、ブランドデザイナーの小山啓一さんから「三田村さんの印章文字には、女性的な美しさと繊細さがあり、丸く仕切られた空間を宇宙に帰る物語性がある。ぜひ個展をしましょう。」と言って頂きました。

とは、言うものの初めてのことで、迷いや不安を持ちながら、なんとか開催にこぎつけたのが、本年5月の個展「はんこと大阪の文学〜職人技から表現者へ〜」でした。

結果は、朝日新聞、読売新聞やテレビ大阪、月刊文具、現代印章などにも取り上げて頂き、200名以上のご来場を頂きました。

作品は、文学作品の一部分をパネル化して、その文章の一部を「HANKO  KIAN®」のデザインで、紙に直接アクリル絵の具を用いて手で描くという手法で展示しました。

梶井基次郎作の「檸檬」の一文より描いた作品

織田作之助作「夫婦善哉」の一文より 

個展で頂いたご感想を読んで、有難いお言葉の数々にこちらが感動しました。

また、お名前を額装したものを展示した作品を見たお客様から、こんなデザインなら家族の名前も飾りたいとのお声を頂きました。

徳川家康をインディゴブルーの画用紙にゴールドのアクリル絵具で描いた作品

ミタムラカオルをホワイトの画用紙に赤のアクリル絵具で描いた作品

そこで、現在開催中のクラウドファンディングでは、デザインを額装したリターンも加えて、来年開催予定の東京銀座で個展を目指してご支援をお願いしています。

個展ご参加者の皆様のアンケートから頂いたお声

とても美しく、芸術性を感じた

優しさと愛嬌があるような、生き物のようなものを感じた。

ルールの中に遊び心もあり、はんこには固いイメージがありましたが自由でいいと思えた。

篆書体のレイアウトの面白さに圧倒された

どれも柔らかく奇をてらわずに個性的で文字の美しさを感じた

限られた空間の中に、心地よいバランスとアンバランスのせめぎあいを感じた

手技の優しさに感動した

美・あたたかさ・円満・優しさ・品の良さを感じた

普段見ることのないデザイン性の高さに感動した

こんなアレンジが出来るのかと目から鱗が落ちた

優しく、柔らか、それでいて気品を感じる作品

穏やかな曲線、空間の取り方が素晴らしい

印の中で流れるような文字

伝統を継承しながらも、モダンな印章

清楚、都会的なセンスを感じる

固定観念に縛られず、絵画を見るように眺めるのが良いと思った 等

たくさんの有難いお言葉を頂きました。

個展会場で作品を見入るご来場者様

印の大家、藤本先生から教えを受けた先輩職人の作品に感銘を受けた事がHANKO KIAN®️の原点

「HANKO KIAN®」の元は、私がうつ病の際に出会った印章の作品集です。

この作品集は、今は亡き※藤本胤峯先生から教えを受けた名だたる先輩職人の作品集でした。

義父が印材の卸売り業をしており、藤本胤峯先生の教えに感銘を受けたことから、全国の腕利きはんこ職人に呼びかけ、先生を中心とした勉強会を立ち上げていました。

(昭和50年から60年代頃)

しかし、私が印章の技術について学び出した頃には、先生も高齢になられており、その勉強会もなくっていましたので、先生にお会いしたことはありますが直接の教えは、残念ながら受けることが出来ませんでした。

私は、義実家の店舗で印章製作や経営の仕方を学んだ後、地元大阪で独立して、開業しました。

大阪の印章業協同組合で技術講習会に参加し、様々な印章の展覧会や競技会に作品を出品し、講評を受けることで印章の技術を更に学ぶことが出来ました。

その一方で、藤本先生の教えを受けられた先輩のご指導や藤本先生が残された書籍、指導された時のカセットテープを何度も聞くことで、藤本先生の印章に対する姿勢や品格と優美さを兼ね備えた文字のレイアウトの方法などを学びました。

一見すると、藤本式の文字デザインは他の印章店での篆書体と違って見えますが、基本の篆書体の技術が身につかない状態では、決して製作できないものです。

藤本先生は、印章の極意は篆書体を良く知って、千変万化し、良き文字の配分(レイアウト)をして、初めて良い印章ができると言われています。

印章に関する知識をその源流である中国まで辿って、調べ尽くし、良い印章には、美があるという信念のもと、印章に関するあらゆる教えを体系化されたのが藤本胤峯先生です。

※ 藤本胤峯先生(1910〜2002)

著書 「印章と人生」「印章教本」「財運と印章」「運命と印章」「印章は性格を語る」など多数 

人の心を動かす文字デザインとしてのハンコで、社会の役に立つ挑戦をしていきたい

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ハンコの文字デザインに美があるというのは、おそらく大半の人にとって意外なことではないでしょうか?

ハンコがないと行政手続きが進まないことから、ハンコは日本特有の文化とも言われましたが、多くの人にとってハンコと美という概念は結びつかないものかもしれません。

しかし、私が師とする先輩職人の印章に出会って感動したように、個展を開催することで同じように感動して下さる多くの人がおられました。

その事実は、私に揺るぎのない自信と感動を与えてくれました。

心を揺り動かす文字デザインとしての可能性を感じたのです。

文字でありながら、絵のようにも見えるという特性から、心を込めて作られた製品を海外に輸出するお手伝いが出来るのでは・・・

また、チームの結束をはかるシンボルなど、思いを込めた文字を表現することで、まだまだ社会のお役に立てることがあるのではないか・・・

など様々な用途への妄想が私の頭の中を駆け巡ります。

まだ実現に至ってはいないのが現状ですが、多くの皆様に御覧頂くために下記のようなイベントやクラウドファンディングに挑戦中です。

2023年12月25日まで ハンコは魅せる時代!オリジナル篆書体の印章ブランド

「HANKO KIAN®︎」https://camp-fire.jp/projects/view/715000

2024年1月2日〜6日 東京 丸善日本橋店 丸善アート&クラフト展に参加

2024年5月15日〜18 東京 銀座ギャラリーSIACCA 個展開催

多くの皆様に作品を見て頂くことで、柔軟で斬新なお知恵を頂けましたら幸いです。

どうぞよろしくお願いいたします。



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