【インタビュー】岩田剛典、新田真剣佑は「闇を匂わせる」親友同士を演じて物語の秘密を共有
2021年1月27日(水)12時0分 シネマカフェ
ラスト20分の真実。この世界の終わりに、あなたは心奪われる——。
こんなキャッチコピーからも分かるように、『名も無き世界のエンドロール』は実に巧妙で厄介な作品だ。友情と恋心がもどかしく交錯する青春映画かと思えば、衝撃をはらむサスペンスの香りも。そのため、初共演の岩田さんと新田さんも、プロモーションに四苦八苦!? 親友同士を演じた親密さを漂わせつつ、物語の秘密を共有する者同士の“共犯感”を匂わせつつ、作品やお互いのことについて語った。
岩田剛典「まっけんは本当にいい具合に闇を匂わせる」
──キダとマコトは幼なじみであり、同じ女の子に想いを寄せる者同士でもあります。
岩田:キダの立場から言えば、マコトのような親友がいること自体は幸せなことだなと思いました。人生のいろいろな出来事を同じ目線で共有してきた唯一の人間ですから。キダにとってのマコトは他に変えることのできない、すごく大切な存在なんです。
新田:ただ、キダがマコトを思うほど、マコトはキダを思っていないのかもしれなくて…。
岩田:そう考えると、切ないよね(笑)。
新田:はい(笑)。でも、マコトにとってはヨッチが“世界の全て”だから。キダのことも大切に思ってはいるけど、やっぱりヨッチが一番なんです。
岩田:そこがマコトとキダの違いで、マコトは真っ直ぐなんですよね。その点、キダはもっと受け身。ヨッチへの想いがありつつ、マコトも大事で。現状に抗う気持ちと寄り添う気持ち、その間で生まれる葛藤を常に抱えながら生きているんです。
──恋心すら内に抱える点には共感できましたか?
岩田:でも、親友と同じ人を好きになったら僕も引くと思う。キダと同じですね。
新田:引くんだ!
岩田:うん、引く引く(笑)。
新田:僕もです。
岩田:僕もかい(笑)。
新田:争いは嫌いなんで(笑)。それに、マコトの場合はキダの気持ちを知りませんでしたから。知っていたらどうなっていたか、そこはちょっと分からないですよね。
──そんな親友関係を初共演にして演じ、お互いにどんな印象を持ちましたか?
岩田:マコトって、難しい役だと思っていたんです。やることはストレートだけど、そこには闇があって。闇の出し方が難しいだろうなと。でも、まっけんは本当にいい具合に闇を匂わせるんです。匂わせ過ぎてもサスペンスとして成立しないし、匂わなければ表面的な役になってしまう。それを、実は意識して調節しているんですよね。表情も、話すスピードも、トーンも。まっけんがそうやって早い段階からマコト像を示してくれていたので、僕もキダになりやすかったです。
新田:マコトも正義感の強い人ではありますけど、キダは正義そのもの。正義を貫くキダがいて、ちょっと矛盾しているマコトがいて。しかも、マコトのことを誰よりも考えてくれている。物語上、実は一番つらい役目なんですよね。そう思えたのは、岩田さんがキダを繊細に演じていたからだと思います。それに応えるお芝居を僕もできるように臨みました。
──その“つらさ”を岩田さんは自覚していましたか?
岩田:そうですね。ただ、確かにつらい役ですけど、ある意味客観的な役どころでもあるので。観客と同じ目線で物事を受け止めていくというか。そのせいか、キダのつらさに飲まれるようなことはなかったです。むしろ前向きな気持ちでいられたような(笑)。地方ロケで集中できる環境だったのも、作品と健全に向き合えた理由かもしれない。
人生において「目的を達成する」こととは?
──地方ロケで、お二人の距離も縮まりやすかったですか?
岩田:うん。それは絶対にあります。まっけんは正直なんですよね。心の中をダイレクトに伝えてくれるから気持ちがいい。天真爛漫で、子ども心をまだまだ忘れていなくて。そんなまっけんに、現場で沢山の元気をもらいました。
>新田:そう言ってもらえて、うれしいです。だから、ありきたりな言葉で返したくないけど…。岩田さんは例えるなら…。
岩田:例えてくれるんだ(笑)。
新田:ものすんごくいい表現をしたいんですよ。
岩田:してみてよ。(笑)
新田:いや、そう言われると…(笑)。でも、岩田さんこそ裏表が全くなくて。きっと、ファンの方々が知っている岩ちゃんのまんま! イメージ通りです。「みんなが思っている通り、岩田さんはかっこいいよ!」と僕は伝えたい。
岩田:伝えてくれるのね(笑)。
新田:はい。これからも大きな声で伝えていきます。
──イメージ通りで、闇などもなく?
新田:闇ですか? それはまだ見せてもらえていないです。でも、絶対にないと思う。だって岩田さんだもん。
岩田:あるかもよ。ブラックホール並みの底知れないやつが。
──(笑)。さて、ネタばれをしないよう気をつけなくてはいけませんが、この作品は人生の優先事項についての物語とも言えると思います。キダとマコトにとっては目的を達成することが第一で、そのために長い時間を過ごしてきたのですから。
岩田:確かに。彼らの場合は、それが難しいことでもあった。その目的を知ると、尚更そう思います。でも、目的に向かう熱量の大きさに関しては、ある意味羨ましくもありますね。僕自身、人には遠い目的と近い目的があると思っていて。遠い目的を達成するためには、近い目的を次々とこなしていくことが一番の近道なのかもしれない。そもそも、先々の目的を具現化できる人って少ないと思いますし。いろんな経験、いろんな出会いが影響してくることも少なからずあるはず。結局、自分の目の前にあるミッションをこなすのが人生だと思うと、彼らの明快な生き方に惹かれる気持ちもあります。
──岩田さん自身の目の前のミッションは?
岩田:僕ですか? この映画を上手くプロモーションしていくことです。
新田:難しいですもんね。言っちゃいけないことが多過ぎて(笑)。
岩田:そうなのよ。
──気持ちはすごく分かりますが、目の前過ぎます…(笑)。新田さんはキダとマコトの人生をどう思いましたか?
新田:彼らはいつからそうなってしまったのか…。可哀想だなと思いますし、けれどそれを生きがいにしているのであれば、決して否定できるものでもないのかなと。演じた人間として、僕はマコトの一番の理解者でいたいので。目的を達成させてあげたいなと、一番近くで思ってきました。だからこそ、先々まで考えなくてはならない彼らとは違い、目の前のことに集中できる人生が幸せだとも感じました。