有働由美子、山里亮太が『セクシー田中さん』を巡り日テレに問題提起…非局アナがキャスターを務める本当の狙い

2024年2月7日(水)11時0分 マイナビニュース

●渦中の局で称賛を集めたコメント
漫画家・芦原妃名子さんの急死が報じられてから1週間あまり。ドラマ『セクシー田中さん』(日本テレビ)を巡る記事やSNSでのコメントが今なお飛び交っている。
そのなかで注目を集めたのは、同作を放送した日テレの報道・情報番組での出演者の発言。1月30日の『DayDay.』でMCの南海キャンディーズ山里亮太、翌31日の『news zero』でメインキャスターの有働由美子がコメントしたが、どちらも日テレに対する疑問や問題提起を含むものであり、だからこそ称賛を集めていた。
はたして2人は日テレの局員でないからこのようなコメントができたのか。そこには制作サイドの意図は含まれているのか。今回の報道を通して、局外の人材を報道・情報番組のMCやメインキャスターに起用する意味をテレビ解説者の木村隆志が探っていく。
○コメントにOKを出した3つの理由
まず山里は日本テレビが発表した「日本テレビは映像化の提案に際し、原作代理人である小学館を通じて原作者である芦原さんのご意見をいただきながら脚本制作作業の話し合いを重ね、最終的に許諾をいただけた脚本を決定原稿とし、放送しております」というコメントに言及。
「少し思うのは『万全な態勢をこちらは取っていましたよ』というふうに取られてしまう、そう感じられる文言だったので。そうじゃなく、たぶん日本テレビはもちろん今から徹底的に動くんだろうと思います」などと、言葉を選びながらも日テレの姿勢を問題視した。
一方の有働は、芦原さんの遺族が発表したコメントを読み上げたあと、「ご遺族のみなさまに心からお悔やみ申し上げます」と約8秒間にわたって一礼。さらに、「芦原妃名子さんの尊い命が失われたことに、本当に悲しいやるせない気持ちです。原作者の方の意思を尊重するというのは当然のことです。この件については何がどうして起きていたのか、関係各所の調査が必要です。そしてその調査は誠実に、慎重にすることが大事だと思います」と、日テレを含む各所に提言した。
生放送番組である上に、これまで培ってきた関係性を考えれば、山里も有働も制作サイドにある程度の確認を取った上でコメントしたのは間違いないだろう。つまり、制作サイドが「2人が自分の言葉で語ることにOKを出した」のだが、その理由は下記の3つが考えられる。
その3つとは、「報道・情報番組として、このニュースに触れないわけにはいかない」という判断、「局員であるアナウンサーに語らせると、そのまま局の意見となってしまう」というリスク回避、「外部の人に叩いてもらうことで一定のガス抜きが期待できる」という狙い。
○制作と出演者を分けることの効果
これらはそのまま外部の人にキャスターを任せることのメリットと言っていいだろう。外部の人のほうがメディアとしての立ち位置や、営利企業としてのリスクを考えつつ、世間の反応を踏まえたコメントがしやすいからだ。
ちなみに他局を見ると、『めざまし8』(フジテレビ)の谷原章介、『Nスタ』(TBS)のホラン千秋などは、これほど踏み込んだコメントをしなかった。これは谷原とホランというより、「自局にも当てはまりかねない問題のため、日テレを追及しづらい」という制作サイドの判断によるものではないか。
また、山里は「今このことでどうなっているかが分からないので、みなさんいろんな思いを自分のそれぞれの形で言葉にして発していると思うんですけども、感情がいろいろ乗っかっていると、自分の発している言葉が思った以上に攻撃を持っている言葉だって気付かなかったりしますし。なので、みなさんいろんな思いがあると思うんですけど、1回考えて発していただければ」とも語っていた。
この言葉も、もし日テレのアナウンサーがこの言葉を発していたら批判は避けられず、山里が外部の人だからこそ視聴者の心に響いた感がある。やはり制作と出演者を分けたほうが番組としてさまざまな角度からメッセージを発信しやすいのかもしれない。
ちなみに、『news zero』と『DayDay.』とコメンテーターに、この件でコメントする機会は与えられなかった。彼らの中には自身のSNSなどで発言した人もいることから、「制作サイドが山里と有働のコメントに集約させて終わらせた」という印象もあるが、それが可能なのは2人に人気や説得力があるからだろう。
●タレントにあって局アナにないもの
報道・情報番組に外部の人をキャスター起用する理由はまだある。
テレビ放送である以上、視聴率を獲得してCM収入につなげなければいけない。特に朝から昼、午後、夕方、深夜までどの時間帯も民放各局が横並びで報道・情報番組を放送しているため、自局を選んでもらうことが求められる。
その際、番組の顔となるキャスターの人選は極めて重要。扱われるニュースが似ていることもあって、「この人が出る番組なら信用できる」「裏番組のキャスターよりも好きだから」「この人が読むならつらいニュースも聞いていられる」などの基準で見る報道・情報番組を決める人は多い。
キャスター選ぶ基準として重視されるのが、主に信頼感、親近感、イメージやキャラクターの認知。まず「誠実」「ウソをつかない」という信頼感は当然必要だが、これだけなら局のアナウンサーでも問題ないだろう。
しかし、視聴者に親近感を覚えさせられるアナウンサーは少なく、日テレなら水卜麻美、テレビ朝日なら大下容子、TBSなら安住紳一郎、フジなら西山喜久恵など、ベテランに偏っている。そもそも局のアナウンサーは日ごろ番組の進行やニュースの読み上げに徹しているため、自分の人柄を伝え、ビジュアル以外の面で選ばれることは難しい。
加えて外部のタレントは、自分のイメージやキャラクターの認知があり、それが選ばれるきっかけになってきた。実際、自然体で飾らない人柄の有働由美子は女性層、頭の良さやコンプレックスで笑いを取れる山里亮太は若年層、さわやかさとイクメンの谷原章介は主婦層、知的さと率直な発言のホラン千秋は中高年層を中心に支持を集めている。
○局アナの存在価値を高められるか
このメインキャスターにおける親近感は視聴者との距離の近さそのものであり、イメージやキャラクターの認知は選ばれる理由に直結するもの。いずれもアナウンス技術以上に重要なものであり、だからこそ多額の報酬が必要でも外部の人を起用しているのだろう。
たとえば夕方の番組で視聴率トップを走る『news every.』(日テレ)は、コロナ禍でのコメントで株を上げた藤井貴彦(52歳)と鈴江奈々(43歳)の自局アナウンサーに、元アスリートの陣内貴美子(59歳)を加えた3人を中心に、徳島えりか(35歳)や辻岡義堂(37歳)、気象予報士の木原実(63歳)などを起用。信頼感と親近感があり、イメージやキャラクターが認知された局内外の人材をバランスよく集めて成功を収めてきた。
では今後も外部からの起用が続いていくかと言えば、必ずしもそうとは言えない。放送収入の減少は避けられない中、制作費の負担は大きく、自局アナウンサーに最適な人材がいるのなら任せたいところもあるはずだ。
一方で各局のアナウンサーたちはYouTubeチャンネルや、個人のSNSで積極的に発信するなど、番組出演以外の場でも、親近感を覚えさせ、イメージやキャラクターを認知してもらおうという動きが見られる。
なかなか外部の人と同じような支持を得るのは難しく、それが得られたとしても退職されてしまうリスクもあるが、それでもアナウンサーの地道な育成と起用は続けられていくのではないか。
木村隆志 きむらたかし コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月30本のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組にも出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』など。 この著者の記事一覧はこちら

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