友近 どちらかといえば「火サス」より「土ワイ」派だった私。『乱歩好き』を公言し続けたことで得た素晴らしい経験とは

2024年2月14日(水)12時30分 婦人公論.jp


友近さん「子どもが観てはいけない大人のドラマを観るのが好きだった」(写真提供:Photo AC)

NHK朝の連続テレビ小説「ブギウギ」にも出演のお笑い芸人の友近さん。芸歴50周年の演歌歌手 水谷千重子、ピザ屋で働く中高年プロアルバイター 西尾一男など、鋭い洞察力と表現力で数々の役を演じ、お茶の間に笑いを届けています。今の友近さんを作り上げた、お笑いの原点とは。友近さんいわく、「子どもが観てはいけない大人のドラマを観るのが好きだった」そうで——。

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大きな影響を受けた「土曜ワイド劇場」


子どものころから、子どもが観てはいけない大人のドラマを観るのが好きでした。

なかでも取り分けて大好きで、大きな影響を受けたのが「土曜ワイド劇場」です。

「2時間ドラマ」「2時間サスペンス」は、全盛期は民放各局で制作されていたし、時代、時代に、いろいろなシリーズがありました。

そんな一大勢力を誇った2時間ドラマ枠のなかでも、老舗中の老舗といえば、テレビ朝日の「土曜ワイド劇場」、通称“土ワイ”と、日本テレビの「火曜サスペンス劇場」、通称“火サス”でした。

「火曜サスペンス劇場」は主題歌である岩崎宏美さんの「聖母たちのララバイ」「家路」など、大ヒットソングが流れるなかで、エンドロールが上がっていくメジャー感がありましたね。

それに比べて「土曜ワイド劇場」は画面も暗く、圧倒的に淫靡(いんび)な作品が多かった。

でも、私はそういうところに惹かれてしまうわけで、「土曜ワイド劇場」派となったわけです。

この派閥意識はいまだに強く、「2時間サスペンスみたいやね」とたとえるとき、「♪ちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃーらー」と「火曜サスペンス劇場」のテーマを口ずさむ人がいると、「あ、そっちか」と、と思っちゃいます(火サスも好きですよ!!)。もちろん、心の中だけで口にはしませんが、そこは厳しくやらせてもらってます!

江戸川乱歩の美女シリーズ」


それくらい「土曜ワイド劇場」への思い入れが激しい私が、特に惹かれたのが「江戸川乱歩の美女シリーズ」でした。

天知茂さん演じる眉間にシワの明智小五郎に、小川真由美さんの妖艶な黒蜥蜴。


『ちょっとここらで忘れないうちに』(著:友近/徳間書店)

豪華な調度品があしらわれた洋館の中で、三ツ矢歌子さん、叶和貴子さん、夏樹陽子さんといった絶世の美女たちがおどろおどろしい猟奇殺人事件に巻き込まれていくあの世界観!

本当に見てはいけないものを覗き見るような背徳感で、ドキドキワクワクしながら観ていたものです。

コントライブツアー「友近ワイド劇場 黒蛙の美女」


そんな「美女シリーズ」への憧れと、昭和の「土曜ワイド劇場」への愛とオマージュをあますところなく注ぎ込んだコントライブツアーを開催したこともありました。

タイトルは、「友近ワイド劇場 黒蛙の美女」。

黒蜥蜴ならぬ、黒蛙に扮するのはもちろん私。セットや小道具、登場人物の造形や衣装に加え、セリフの言い回しや、事件のトリックまでも徹底的に、昭和の「土曜ワイド劇場」風にこだわりました。

それをバッファロー吾郎Aさん、ずんの飯尾和樹さん、ロバートの秋山さん、ハリセンボンの近藤春菜ちゃん、シソンヌのじろうくん、渡辺直美ちゃん、ゆりやんレトリィバァちゃんという芸達者なメンバーがまじめにふざけて見事に演じ抜いてくれました!

観ているお客さんもその世代の方は共感してくれるし、一体感というか仲間感の強いライブでした!!

ツアーは全国6カ所7公演、1万人以上のお客さんに来ていただき、のちにYouTube チャンネルで公開すると、合計で400万回以上も再生。

それだけ多くの人が、共感して笑ってくれている。そう思うと、本当に元気が湧いてきます。

「友近がまた何かやってるわ」


ちなみに、江戸川乱歩好きを公言していたら、名古屋で続く伝統芸能、西川流四世家元の西川千雅(かずまさ)さんにお声をかけていただき、「名古屋をどりNEO傾奇者」にゲスト出演させていただくことにもなりました。

名古屋をどりは、終戦直後から名古屋宝塚劇場、中日劇場、御園座など、名古屋の中心地で会場を移しながら公演を続けている伝統の舞台。

私が出演するのは和楽器の生演奏とオーケストラによる音楽が奏でられる和風ミュージカルのような舞踊劇で、「女の恨み」をテーマに、明智探偵や小林少年などが出てくるミステリー作品です。

歌も踊りもちゃんと習ったことはないけど、それっぽいことをやって「友近がまた何かやってるわ」で楽しんでもらうのが、アタシのやっている芸!

「土曜ワイド劇場」が好きだったおかげで、また一つ、素晴らしい経験をさせていただきました。

※本稿は、『ちょっとここらで忘れないうちに』(徳間書店)の一部を再編集したものです。

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