友近 いかつい「ミナミの帝王」ネタで人生が激変…「自分がおもろいと思ったことをやる」スタンスが固まったきっかけとは
2024年2月15日(木)12時30分 婦人公論.jp
友近さん「しょっちゅうレンタルビデオ店で借りて観ていた作品が『難波金融伝ミナミの帝王』シリーズでした」(写真提供:Photo AC)
NHK朝の連続テレビ小説「ブギウギ」にも出演のお笑い芸人の友近さん。芸歴50周年の演歌歌手 水谷千重子、ピザ屋で働く中高年プロアルバイター 西尾一男など、鋭い洞察力と表現力で数々の役を演じ、お茶の間に笑いを届けています。今の友近さんを作り上げた、お笑いの原点とは。友近さんいわく、「Vシネマというジャンルを、『ミナミの帝王』で知った」そうで——。
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ミナミの帝王
Vシネマというジャンルを、「ミナミの帝王」で知ったかな? 愛媛にいるころからハマって、しょっちゅうレンタルビデオ店で借りて観ていた作品が「難波金融伝ミナミの帝王」シリーズでした。
主人公は、大阪・ミナミでトイチ(10日で1割)の高利貸し業、「萬田金融」を営む萬田銀次郎。貸した金は10円でも絶対に回収する、ついたあだ名は“ミナミの鬼”。
これが実に魅力的な男なんですよ。
物語の構成は、だいたい毎回こんな感じです。
(1)銀次郎の債務者が逃亡。(2)しかし、実はその債務者も悪党に騙(だま)されていたことを知り、法律や金融知識を駆使して悪党を追い詰め、大金を奪い返す。(3)その金で債務者の借金をチャラにして、人生をやり直させる。
つまり、“ミナミの鬼”でありつつ、困った人を助けるダークヒーローでもあるわけです!
実写版なのに漫画よりも漫画
そんな銀次郎を竹内力さんが演じるんですが、表情からセリフ回しからもう漫画から飛び出したようなリアル感! 実写版のはずなのに漫画よりも漫画! いかつくて面白いんです。
毎回、最初の5分くらいは本編と関係ない、銀次郎と債務者とのやりとりがあるんですが、この債務者役でよく出てたのが吉本芸人たち。バッファロー吾郎Aさんも出てたな〜。
『ちょっとここらで忘れないうちに』(著:友近/徳間書店)
「萬田はん、あんたは鬼や……!」
「借りたゼニを返せへんやつのほうがよっぽど悪人でっせ」
「夜逃げゆうんは、まだまだ余裕があるやつがするこっちゃ」
言いたくなるセリフたくさんあるでしょ!
「水は高いところから低いところへと流れるが借金の金利だけは、低いところから高いところへと流れるんやで〜」(アタシの好きな名言)
こんなコテコテの関西弁の方言指導をしていたのが、愛媛県今治市出身の宇野ポテトさんなんですよね。なんで愛媛の人が関西弁の指導してんの!?というのも好きなポイントです。
他にも、素敵なキャストさんが!
金融知識も豊富で、銀次郎の秘書のようなことも務める探偵役の竹井みどりさんに憧れて、こんなセリフがスッと出てきたらカッコいいなぁと思って、ものまねをするようにもなりました。
人生を変えるネタ
「不況が続くなかで銀行は相変わらずの貸し渋り。特に中小企業のつなぎ資金の融資なんて門前払いや。その点、商工ローンは大した審査もせず、簡単に数百万単位で融資してくれる。そりゃ流行るやろ、銀次郎さん」
そう、今も私がよくやるネタです!
愛媛のローカルタレント時代からの持ちネタでしたが、NSCに入った後、バッファロー吾郎さんの目にこのモノマネが触れたことで、在学中からバッファローさんが主宰するイベントに呼んでいただけることになり、先輩芸人やお笑い感度の高いお客さん、スタッフさんたちに私のことを知ってもらうきっかけになった。
いわば「人生を変えるネタ」となったのがこれでした。
もっと言うと、自分が憧れていた先輩芸人や、そのお客さんたちにウケたことで、自分の感性を信じられる自信もついた。
私の「自分がおもろいと思ったことをやる」という芸人としてのスタンスが早々に固まったわけですね。
最初はただ憧れて真似をしていただけなのに……人生はホントにわからない!
ロケ地巡り
大阪に来た当初は、一人「ミナミの帝王」のロケ地巡りもやりました。
「あ〜、最後のおちゃらけシーン、ここの橋や!」「このビル、見たことある!」と興奮して「大阪来たな〜!」と喜んでいたけど、その4年後、シリーズ28作目「ミナミの帝王恐喝(おどし)のサイト」で、なんと銀次郎たちが訪れるクラブのホステス役で出演させていただきました。
さらにフジテレビの「ものまね王座決定戦」では、“ご本人登場”で竹井みどりさんと共演もさせていただきました。
自分が面白いと思うこと、やりたいことをやってきて、こうして夢と現実が交わるような出来事が起きるのは本当にありがたいことだと感謝しています。
ただ……竹井みどりさん、川島なお美さん、岩崎ひろみさんが歴代やってきた萬田銀次郎の秘書役、やりたかったなぁ〜〜〜〜。
竹内力さんのシリーズが今も続いてたら、絶対、自分で売り込んで営業してたのに〜!
あの役に対して私ほど思い入れを持っている人はいないと思う多分。シリーズが再開するときは、何卒よろしくお願いいたします!
※本稿は、『ちょっとここらで忘れないうちに』(徳間書店)の一部を再編集したものです。
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