コシノヒロコ「三姉妹、と言葉にできるようになったのは最近のこと。全員独立心が強いけど、50年以上も現役デザイナーとして仕事をするのは、ちょっとした奇跡」

2025年2月23日(日)12時30分 婦人公論.jp


「ファッションショーの演出もそうですが、私は空間すべてをプロデュースするのが楽しくて仕方ないのです」(撮影:鍋島徳恭)

〈発売中の『婦人公論』3月号から記事を先出し!〉
再放送中の朝ドラ『カーネーション』が話題です。ヒロインのモデル・小篠綾子さんの長女・コシノヒロコさんは、88歳になる今も現役のデザイナー。そのパワーの源は?(構成:篠藤ゆり 撮影:鍋島徳恭)

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「絶対に負けたくない」が
モチベーションに


1月15日に88歳の誕生日を迎えました。その4日後に京都のホテルで米寿の記念パーティーを開いたところ、参加したいと言ってくださる方が多くいらして、お客様はなんと300名を超えるまでに。ここまで盛大なものになるとは想像していなかったので、びっくりしています。

ファッションショーの演出もそうですが、私は空間すべてをプロデュースするのが楽しくて仕方ないのです。

ですからこのパーティーでも、サプライズをいっぱい仕掛けてみなさんをあっと驚かせたかった。私の美的感性をギュッと詰め込んだ演出をしようと、半年かけて準備しました。

オープニングでは、ピーッと笛が鳴ると、長唄の人間国宝・杵屋東成(とうせい)さんたちとともに私が登場して三味線を弾きます。大薩摩(おおざつま)といって、超絶技巧の速弾きを披露し、鳴り物も入れて、大勢で「鏡獅子」を演奏するという流れにしました。

パーティーには、妹のジュンコ、ミチコも参加。でもジュンコは最初、「私は行かへん」なんて言っていたんです。

そうしたら末の妹のミチコが、「お姉ちゃん、そんなこと言わんと、米寿のパーティーなんやし、集まろうよ」と声をかけてくれて。「なら、行くわ」と、ジュンコも参加してくれることになりました。ジュンコはなぜか、ミチコに対しては素直なの。

小さい頃から私とジュンコはライバル関係でしたから、私が注目を浴びる姿を見たくないんでしょうね(笑)。それがこの年齢まで続いているんですから、もう、一生のライバルです。

でも、身近にライバルがいたおかげで「絶対に負けたくない」というモチベーションに繫がり、この歳まで現役のデザイナーとしてやってこられたのだと思っています。

ジュンコと2人で銀座小松ストアー(現・ギンザコマツ)に店を出し、デザイナーとしてスタートしたのが1961年ですから、この仕事を始めてもう64年になるわけです。

講演やイベントなどで地方に行くと、みなさん私の体を触りにくるの(笑)。「パワーをもらえそう」なんておっしゃって。

これまで一生懸命走り続けてきたからこそ、そう思ってくださるのだとしたらとっても嬉しいですね。

山あり谷あり、
波瀾万丈の人生


実は、「コシノ三姉妹」と言葉にできるようになったのは、ここ最近のことなのです。私だけでなく、ジュンコもミチコも同じでしょう。なにせ全員、独立心が強いし、意地っ張り(笑)。

一人ひとり別々にデザイナーとして活動しているんだから、《三姉妹》なんて括られたくないと、3人ともに主張していましたから。

でも考えてみたら、3人合わせると250歳を超える年齢になり、姉妹揃って50年以上も現役デザイナーとして仕事をしているわけです。これってギネス記録ものだし、ちょっとした奇跡なんじゃないかしら? 我がことながら《めでたい》感じすらします。

こうなったら開き直って、「3人でなにかやってやろうじゃないの」という気分です。それはどうやら妹たちも同じみたい。

そのひとつのかたちとして、年明けには、初めての3人の共著『コシノ三姉妹 向こう岸、見ているだけでは渡れない』を出版しました。


『コシノ三姉妹 向こう岸、見ているだけでは渡れない』(著:コシノヒロコ・コシノジュンコ・コシノミチコ/中央公論新社)

ファッションの仕事は常に未来を見て、年に2回のコレクションを続けていかなくてはいけない世界なので、普段は過去を振り返ることはありません。でも、本を作るために改めていろいろ思い出す作業は楽しかったですね。

本ができ上がって、さっそくジュンコとミチコの章を読みました。初めて知ることも多くありましたし、2人ともにガチャガチャと賑やかな人生を歩んでいて面白かった。

それに比べて私の章は「ちょっと真面目な話が多かったかしら?」とも思いましたが、根が真面目だからこそ、「HIROKO KOSHINO」というブランドをここまで引っ張ってくることができたのだとも思っています。とにかく3人とも山あり谷あり、本当に波瀾万丈です。

本には書ききれませんでしたが、私の人生にも面白い逸話がたくさんあるので、そのなかのひとつをご披露しますね。つい面白さを張り合いたくなるのは、関西人だからかしら。(笑)

<後編につづく>

婦人公論.jp

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