高畑充希「ミュージカル俳優から、朝ドラ『ごちそうさん』で注目されて。成長には天井がないと思えることがすごく楽しい」
2025年2月24日(月)12時30分 婦人公論.jp
「舞台でも、毎回、気持ちをゼロに戻してから立つようにしています」(撮影:木村直軌)
仕事も私生活も順風満帆の高畑充希さん。幼少期から志していたミュージカル俳優の夢を叶え、朝ドラをきっかけに、ドラマ、映画でもさまざまな役柄で活躍しています。進化を止めない彼女の考え方とは(構成:篠藤ゆり 撮影:木村直軌)
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うまくいかない時こそ変われるチャンス
ゲン担ぎと言っていいかどうかわかりませんが、自分の中では、「頑張らない」をモットーにしています。もちろん仕事の準備や練習はできる限りしますが、私の場合、本番ではあまり気張らずに、楽な気持ちで取り組んだほうが、いい方向に転ぶことが多い気がしているんです。
「この一回で一番いいものを見せなければ」と思うと、どうしても、そこに合わせにいってしまう。「ベスト」を目指すと、それ以下にしかならないことがけっこうあります。
でも、仕上がりのことを考えずにフラットな状態で現場に立ち、その一瞬一瞬に心を動かされることへフォーカスすると、予想以上の結果になることがあって。ですから舞台でも、毎回、気持ちをゼロに戻してから立つようにしています。
それに、「これがいい形だ」と決め込んでいると、計算式みたいになって心が固まっちゃう気がするんです。失敗してもいいから自由にやったほうがワクワクするし、この仕事を長く続けていくなら、やっぱり「楽しい」と思えたほうがいいですから。
運に関していえば、私はいいほうだと思います。子どもの頃からミュージカル俳優になりたいと願って、その夢を叶えたのですから。それだけでも幸運です。
もちろん、うまくいかないこともあります。でも、物事は捉え方次第。「自分は運がいい」と思っていたほうが、人生が好転する気がします。
たとえば、乗りたい電車に乗れなかった時、「乗り遅れた10分間に、お菓子を買ったらおいしかったからラッキー」……みたいな。「失敗したけど、逆によかったな」と考えるんです。
役者人生を振り返っても、「あの時こういう挫折があって、でもそれを糧に頑張ったから今がある」と感じることが多い。
一見マイナスと思えることも、それが経験となっていい方向に行くかもしれない。そう信じるようにしています。
朝ドラで注目されはしたけれど
14歳でデビューするまでは、舞台や芸能事務所のオーディションを受けては落ち続けていました。でも、あまり落ち込まない性格なんです。
今もそうですが、うまくいかない時には「何がダメなんだろう」「足りないところはどこなのか」と、考えたり探したりするのが好き。結果的にその時間が、自分が変わるきっかけになることが多いからです。
調子がいいと、自分のことを深く考えなくなりがちなところがあります。そういう時、変化のない自分に対して、「なんか、このままの自分だとつまらないな」みたいな気分になることもあって。
ひとつ改善してうまくいき、そのうち頭打ちになってまた自分を変化させていく——。成長には天井がない、と思えることがすごく楽しいんです。
だからうまくいかない時は、「自分がどうなりたいか考えろと言われてるのかな」と思うようにしています。
2013年のNHK連続テレビ小説『ごちそうさん』で、作中の歌唱シーンが注目された時は嬉しかったです。
それと同時に、複雑な思いもありました。いろいろな方に「運がよかったね」と言われて、たしかにドラマをきっかけに私のことを知ってくださった方も多いので、運がよかったのは紛れもない事実。
ですが、その時は実はポジティブにはなりきれませんでした。なぜなら、それまでミュージカルで主役を演じたりしてきたのに、ミュージカル俳優の認知度は低いんだ、と思い知らされたからです。
ミュージカルの舞台は、一部のファンの方々によって支えられているようなところがあります。でも、私はもっとたくさんの人に魅力を知ってもらいたい。そのためにもテレビに出て、自分自身の知名度を上げていきたいと、気持ちが引き締まりました。
その後、さまざまなドラマに出させていただくようになったら、ドラマには舞台とは違う面白さがあると実感。映画に出演させてもらえば、「映画ってこんな世界なんだ」とまた感動して——。
それまでとは違うお仕事をすると新鮮ですし、知らない自分を発見できるのも面白い。常に新しいことに出合っていたいんです。
<後編につづく>