「社運を懸けた」くりぃむしちゅー冠番組 熊本県民テレビ、地元スターの“熊本愛”を感じて全国へ勝負

2024年3月29日(金)6時0分 マイナビニュース

●最高のキャスティングでゴールデンのバラエティを
お笑いコンビのくりぃむしちゅーが、地元のテレビ局・熊本県民テレビのバラエティ番組『くりぃむしちゅーの熊本どぎゃん!?』(4月12日スタート、月1回金曜19:00〜 ※放送後TVer配信、10月から毎週放送)に出演する。東京で自慢できる熊本の人・モノ・場所を、10代で故郷を離れた2人が「いまの熊本、どぎゃん?(どう?)」と探っていくロケバラエティで、くりぃむしちゅーにとって初めての熊本でのレギュラー冠番組、熊本県民テレビとしても初めての自社制作ゴールデンレギュラー番組となる。
27年にわたり愛されてきた名物情報番組を終了させてスタートする、まさに社運を懸けたプロジェクトだが、どのような思いから実現したのか。それをくりぃむしちゅーはどのように受け止めて臨んでいるのか。熊本県民テレビ取締役(コンテンツ戦略担当)の平田毅氏と、番組プロデューサーの東美希氏に、熱い気持ちとともに話を聞いた——。
○単発特番で世帯視聴率24.5%を記録
熊本県民テレビとくりぃむしちゅーの関わりは、2017年にさかのぼる。前年の熊本地震を受け、くりぃむしちゅーが各地でチャリティートークライブをニッポン放送主催で行ってきたが、熊本での開催を熊本県民テレビがサポートすることに。これをきっかけに、2人が熊本を巡る特番『くりぃむしちゅーのぎゃん!行って ぎゃん!行って ぎゃん!!』が、18年10月に放送された。
今回の新番組と同様、金曜19時台に放送されたこの番組は、自社制作番組として歴代最高の世帯視聴率24.5%を獲得(ビデオリサーチ調べ・熊本地区)。「我々としても初めて大物タレントさんをローカル番組でキャスティングできた上に、このような数字を叩き出して、エポックメイキングになりました」(平田氏)といい、続編も期待したが、2人がさらに多忙を極めて頓挫していた。
そんな中、熊本県民テレビは自社制作番組の大幅改編に着手。27年にわたり放送してきた平日夕方の情報番組『てれビタ』を終了し、17時台にキー局・日本テレビの『news every.』のネットを受けることで、『てれビタ』に集中してきた制作費と人材を分散させる方針を打ち出した。
「いろんな番組を作れる局に体質を変えたいという思いがあり、若いクリエイターたちにどんな番組をやりたいかを考えてもらいました」(平田氏)という結果、上がってきたのが、「最高のキャスティングでゴールデンタイムのバラエティ番組を作る」という構想。この最高のキャスティングこそが、地元出身の大スター・くりぃむしちゅーだった。
○日テレのヒットメーカーが全面協力
このオファーや企画の成立にあたって大きな役割を果たしたのが、日本テレビ執行役員の高橋利之コンテンツ制作局専門局長。『行列のできる法律相談所』『人生が変わる1分間の深イイ話』『有吉反省会』『絶対に笑ってはいけないシリーズ』などを手がけてきたヒットメーカーで、くりぃむしちゅーとは『世界一受けたい授業』『スター☆ドラフト会議』などで仕事をしてきた。
「30代の社員による検討チームで企画を考える中で、当社の宗田英成社長(日本テレビ出身)と高橋さんのつながりから相談に乗ってもらい、最初は無理だろうという話だったんですが、昨年の秋から交渉を重ねて当たってもらうと年末には事務所さんのOKが出て、具体化していきました。“くりぃむしちゅー”に改名してから地方で冠番組を持つのが初めてということもあり、高橋さんも入れ込んで全面協力してくださり、実現につながりました」(平田氏)
東氏は「念願のくりぃむしちゅーさんと番組をすることができて、社内は本当に信じられないという感じでした」と振り返るが、さらに、地元出身のバンド・WANIMAがテーマ曲を書き下ろすことも決定。平田氏は「我々が想定していたよりも、もっとステージが上がってくという、なかなかない経験をしているところです」と心境を打ち明ける。
●くりぃむ側が地元ロケ希望「英気を養う機会にも」
くりぃむしちゅーが今回の企画に乗ったのは、やはり地元への思いもあるようだ。多忙なスケジュールを考え、企画の初期段階では、今の熊本を取材したVTRをくりぃむしちゅーが東京で見るというスタイルを提案したが、「くりぃむさん側から“月1回でもロケに来てやりたい”と言われて、すごく熊本愛を感じました」(東氏)と受け止めた。
本来であれば、4月から毎週放送でスタートしたかったところだが、「3月いっぱいまで夕方の情報番組をやりながら準備してきたので、さすがに現場も対応できない」(平田氏)ということで、まず半年間は月1回ペースで放送することに。
この形態を聞いたくりぃむしちゅーは、自分たちのスケジュールの都合だと思っていたそうで、東氏が真相を説明して、「すみません。半年間トライアルを一緒にやってください(笑)」とお願いすると、「そっちの都合かい!」とツッコまれたそうだ。そんなやり取りからも、この番組を心待ちにしている心境が伝わってくる。
平田氏は「地元に帰って英気を養うという機会にもなってほしいので、なるべくガチガチにスケジュールを詰め込まず、気持ちよく熊本でロケをしてもらいたいと思います」と意向を示した。
○番組タイトルに注文「ダサくない?」
2月、くりぃむしちゅーに初めて番組名を伝えると、「まず“ダサくない?”、“本当にこれで行くの?”と言われました(笑)」(東氏)とのこと。初回のロケも、「タイトル変わってないじゃん」「ダサいままいくの?」とツッコまれながらスタートした。
番組内容については、「おふたりが今の熊本のことをほとんど知らなくて、いろんな人に“おすすめの店教えて”と言われても答えられないのがずっと悩みだったそうで、この番組で一から学び直したいとおっしゃっていました」(東氏)と企画の方向性に合致。
また、「おふたりの高校時代や子どもの頃のエピソードトークもふんだんに入ってきます。初出しの話をされて、思い出しながら語って笑っていましたね。そういうエピソードが、これからもどんどん出てきそうで楽しみです」(平田氏)と期待を寄せており、今後は熊本の人々と絡んでいく展開も想定している。
高校時代から別の学校の生徒に知られるほど有名人だったという2人。ロケで街を巡ると、「通りがかりの人たちが皆さん、“くりぃむしちゅーがいる!”という感じで見ていました」(平田氏)と、改めて地元の大スターであることが実感された。
この番組では熊本弁を積極的に使っていこうと意気込んでいた2人だが、いざロケが始まると照れくさいのか、なかなか出てこなかったのだそう。東氏は「コンビでは絶対に標準語で話すというのを決めてらっしゃるそうなのですが、番組に慣れていきながら、ちょっとずつ熊本弁を思い出してもらおうと思います(笑)」と目論んでいる。
●上田「なんでそんな背負わせるんだよ!」
27年にわたり地域密着の情報を伝え、熊本県民に愛されてきた『てれビタ』。様々な調査結果から、この時間帯ではニュースが求められている傾向が出ており、東氏は「ここ数年、一生懸命取材したものが見てもらえないというつらさがありました」と率直に打ち明ける。TVerをはじめ配信ビジネスを見据えたIP(知的財産)の活用を考えた時に、生放送の情報番組はなじまないことがあり、収録番組のコンテンツを持ちたいという方針もあった。
一方で、看板番組を改編するのは大きな決断だ。「今、金曜19時でネットしている『小5クイズ(クイズ!あなたは小学5年生より賢いの?)』も数字が良いので、そこをクリアするのは編成的にも絶対条件になります。でも、このチャンスを逃すわけにいかないんです」(平田氏)、「みんなが大好きな『てれビタ』という番組を終えてスタートするので、熊本から全国で見てもらう番組を作っていきたいと強く思っています」(東氏)と勝負に出た。
ちなみに、平田氏が上田晋也に「社運が懸かってます」とプレッシャーをかけたところ、「なんでそんな背負わせるんだよ!」と心地よいツッコミが返ってきたそうだ。
○■有田からも企画提案「こんなことやろうよ!」
命運を託されたのは演者だけでなく、熊本県民テレビや、子会社の制作プロダクションの若手社員も同様。今回の番組は『てれビタ』のスタッフが主に担当し、レギュラーのバラエティ番組制作は全員未経験だが、東氏は「今の熊本の魅力を紹介するということで、情報番組でやってきたことは決して無駄ではないと思っています。私たちが変に何か仕掛けてやろうみたいなことは考えず、真面目に熊本の自慢できるところを紹介していきたいと考えています」と意気込む。
平田氏は「ローカル局の経験値が低い制作者が知恵を絞ったところで太刀打ちできる相手ではないので、くりぃむさんに気持ちよく遊んでいただいて、彼らから“こんなことできないか?”と言ってもらい、それを我々がちゃんと受け止めて一緒になって作っていけばいいのではないかと思います」と捉えており、『全力!脱力タイムズ』(フジテレビ)では自ら総合演出を務めるなど制作者目線を持つ有田哲平からは、「すでに3本くらい“こんなことやろうよ!”とお話を頂いています」(東氏)という。
また、スタート時は日テレの高橋利之氏が監修として参加しており、「だいぶ面倒を見てもらっています(笑)」(東氏)とのことだ。
大きな被害を受けた2016年の熊本地震から8年。熊本城とともに街の復興が大きく進んでいることに加え、台湾の半導体メーカー・TSMCの巨大工場進出も相まって、熊本が大きく変わろうとしていく中で今回の番組がスタートできることに、平田氏は「今の熊本を象徴しているのではないかと思います」と感慨深く語っている。

マイナビニュース

「熊本」をもっと詳しく

「熊本」のニュース

「熊本」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ