容姿で陰湿なイジメ→“超かわいい”「プリンセス」に大変身…20代の“普通の会社員”が、コスプレのために努力を続けたワケ

2025年4月19日(土)12時0分 文春オンライン

 ディズニープリンセスのコスプレで話題の食用かぐやさん。自身の中学時代の卒業アルバムとコスプレ写真を並列し、「努力型のプリンセス」としてSNSで発信、メディアにも取り上げられた。


 そんなディズニープリンセスとコスプレ好きの食用かぐやさんに、コスプレのきっかけからプリンセスの魅力、そして“努力”の裏話を聞いた。(全2回の1回目/ 続きを読む )



学生時代の食用かぐやさん


◆◆◆


「努力型のプリンセス」と名乗る食用かぐやさん


——「私は努力型のプリンセス」としてビフォア・アフターの写真をSNSで上げていました。もともと、プリンセスに憧れがあった?


食用かぐやさん(以降、かぐや) 子どもの時からディズニーで育ってきていたので、プリンセスへの憧れはずっとありました。ディズニーだけじゃなく美少女系のアニメも見たりとか、かわいいものに対しての憧れがとにかく強かったですね。


——憧れから、実際にコスプレを始めるようになったきっかけは?


かぐや 中学時代は容姿に強いコンプレックスがあって、人前に出るようなことは一切したくなかったんです。その時ちょうど「にんにく鼻」という言葉が出始めた時期で、自分に当てはめてしまって、鏡を見て泣いたりしていました。


 あと、私は本当にディズニー大好きって感じの子だったので、当時流行っていたJ Soul BrothersとかK-POPとかの話題にまったくついていけなかったんですね。


——容姿に対するコンプレックスと、趣味の違いで孤立するような感じになっていた?


かぐや そうですね。あと、小学校からの友だちが場面緘黙症(ばめんかんもくしょう)になってしまって、自分以外とはほとんど話ができなくなってしまったので、自然とお世話係みたいになったんです。そうすると、学校ではさらにのけ者扱いになってしまって。


 でも、知り合いが誰もいない高校に入ったんですね。偏差値の低いギャル校みたいなところだったんですけど、過去の自分を知られていない安心感もあったし、自分のクラスはゴーイングマイウェイな子ばっかりで。


涙袋を描いてドキドキしながら学校に行ったら、隣の席のギャルは授業中に…


——ギャルから学ぶことも多かった?


かぐや 中学からスマホは持ってたんですけど、高校入学と同時に親がネットを見られるようにしてくれて、スマホでメイク動画とかコスプレイヤーの存在を知ったんです。


 それで、ドキドキしながら当時流行っていた涙袋を描くメイクをして学校に行ったら、隣の席のギャルは授業中に鼻ピアスを開けていて。


——隣の席の子はさらに上を行く自己表現をしていたというか。


かぐや 隣のギャルからしたら、私の涙袋メイクなんてちっちゃな冒険でしたね(笑)。


 そんな感じでクラス全体が、「自分がいいんならいんじゃね?」みたいな、互いに干渉し合わない環境だったのがすごく楽でした。


「うちのクラスでいじめは絶対に許さない」といってくれた高校の担任


——自分のメイクについていろいろ言われたら嫌ですよね。


かぐや それこそ中学の時は、絶対これ私のことじゃん、みたいな似顔絵が黒板に描かれていたり、裏でクスクス笑い合っているような陰湿ないじめに遭ったんです。


 でも高校の担任は、「うちのクラスでいじめは絶対に許さない」ってしっかり言い切ってくれる先生で。先生がちゃんと宣言してくれたこともあって、これでもう大丈夫なんだっていう心強さもありました。その先生は目に障害があって、そのせいで自分も昔いじめに遭っていたと聞きました。


——高校からメイクに目覚め、それが受け入れられる環境もあり、コスプレの世界へ入っていった?


かぐや 地元でコスプレイベントがあることを知って、参加したのがコスプレの始まりです。その時のコスプレは初音ミクでした。


 でも、メイクも覚えたてだし、本当にヤバい出来で(笑)。その頃ちょうどお母さんにも、「やるならやり方をちゃんと勉強しなさい」って言われたんですね。高校を卒業した時には初めてデパコスを一式買ってもらったこともあって。


「勉強してきれいにやりなさい」と言ってくれた母


——メイクやコスプレを止めるのではなく、お母さんはむしろ、やるならちゃんとやれ、と。


かぐや 当時のメイクはおてもやんみたいになってたんですけど、そんな私を見たお母さんは、「汚いからやめなさい」じゃなくて、「勉強してきれいにやりなさい」って言ってくれたので、「じゃあやります」って(笑)。


 その時はお小遣いしかなかったので100均とかキャンメイク、マジョマジョで安いコスメを買ってたんですけど、使うと腫れるタイプの湿疹が出ちゃって。今はめちゃくちゃ100均のコスメも質が高いですけど、当時は命がけで化粧してました(笑)。


——そこからプリンセスの仮装にチャレンジしたきっかけは?


かぐや 高校時代にコスプレイベントで出会った年上のお友だちから、「ディズニー・ハロウィーン行こうよ」って誘われたのがきっかけです。


 普段のディズニーランドは子どもだけしか仮装できないんですけど、毎年ハロウィン期間だけは特別に大人もコスプレできるんですね。


 当時は名古屋に住んでいたし、大学を卒業したばっかりでお金もなかったんですけど、この機会を逃したくないと思って、その時はじめて憧れのディズニーコスプレをしました。


初のプリンセスコスプレは『美女と野獣』のベル


——なんのプリンセスになったんですか?


かぐや 実は最初は、ショーのダンサーさんの格好で行きました(笑)。プリンセスのコスプレをしてはじめてディズニーに行ったのはその2年後くらいで、『美女と野獣』のベルです。それも、ドレス姿じゃなくてベルの普段着みたいな格好ですね。


——ディズニープリンセスの中ではベルが一番お気に入り?


かぐや いえ、『眠れる森の美女』のオーロラ姫です(笑)。オーロラ姫をやってみたかったんですけど、あまりに自分にとって神聖な存在過ぎて、最初のプリンセスコスプレとしてはちょっと無理でした。


 あと、ドレスを着ることも自分の中ではハードルが高かったので、まずはベルの普段着で……という感じです。


——普段着とはいえ、ベルでプリンセスになった時、気分は上がった?


かぐや それがもう、「怖い怖い」ってずっと震えてて。


——プリンセスゆえのプレッシャーでしょうか。


かぐや 自分の姿がプリンセスとしてはダメ過ぎて、周りの人から後ろ指をさされるんじゃないかと、怖くなったんです。だからパークについてもずっと下を向いて歩いていて。


 でも、実際にはキャストも遊びに来ている人たちも手を振ってくれたり、声をかけてくれたりして、めちゃくちゃ優しかったんですよね。


プリンセスでいるときは「常に上を向いて、周りを見るように」


——周りは他の人のコスプレをそこまで気にしていないというか。


かぐや ディズニー・ハロウィーンという皆が仮装して楽しんでいる場で、「あのシンデレラ変じゃない?」とか、「今のベル、ヤバくない?」みたいに、特定の個人を悪く言うような人はいなかったんです。


 それこそ高校に上がった時と同じで、周りに自分を悪く言う人なんかいないし、そこまで人は他人に興味がないってことに気づけたのは大きかったです。


——プリンセスのコスプレをしたことで、所作とかも気にするようになった?


かぐや それはありますね。特にディズニーは子どもがたくさん来ているので、そういう子たちの夢を壊したらどうしよう、みたいな恐怖はずっとあります。


 それこそ、はじめてベルのコスプレをした時、周りの人が手を振ってくれているのに、私がずっと下を向いていたせいで気づかなかったことがあって。友だちから「手、振ってもらってるよ」って言われてはじめて「え?」みたいな。でもそれってプリンセスとしてどうなんだろうと思って、それからは常に上を向いて、周りを見るようになりました。


 あと今は、スマホもあんまり触らないようにしてますね。


——スマホでずっと動画見ているようなプリンセス姿は見せないようにしていると。


かぐや 自分の場合は、ですけどね。触る時は道の端っこに移動したり、堂々とはやらないようにして。なので、ショーとかの待ち時間用として文庫本を持って行ってます。


ミッキーに「襟にカレー付いてるよ」と指摘され


——ドレスだとボリュームがあるので、食事やトイレが大変では?


かぐや ボリューム的に人の邪魔になってしまうので、お手洗いはすごい気を遣いますね。


 あと、ベルの襟とか、よく見たらカレーをこぼしてたりとか。ミッキーに「カレー付いてるよ」って指摘されました(笑)。


——プリンセス姿だと汁物も注意が必要になると。


かぐや コーヒーのシミをつけちゃったりとか、ありますね。


 私は食べるのが大好きなのでドレスでもバクバク食べちゃうんですけど、緊張して食べれない子もいますし、コルセットを締めているとそもそも食べれない、動けない、飲めないみたいなこともあります。


 暑くなる夏なんかは特に、水分も栄養もとってほしいんですけどね。


——プリンセスが倒れてしまったら悲劇ですよね。


かぐや 1人でパークに行くとそばで介助してくれる人もいないし、コスプレ姿で倒れてしまうと、余計に誰かわからないっていうこともありますしね。


コスプレをしてるからと、楽しめないのはもったい


——ドレスは家から着ていくんですか?


かぐや 昔はディズニーが更衣室を出してくれていたんですけど、今は近隣のホテルで着替えてタクシーで向かったり、イクスピアリは有料ですけど更衣室があったりするので、そこを取ったりして行ってます。


 それでもパークを歩くって運動量が多いから自然と汚れるし、着れば着るほどどんどんドレスがくたびれていくんですけど、そういう空間で着る以上、汚れても仕方がないし、それも思い出として持っておこう、という感じですね。


 どうしても行動が制限されてしまう部分もあるんですけど、楽しめないのはもったいないので、自己管理をちゃんとしつつ、限定フードも食べて、その場を楽しもうよって思ってます。お手洗いも、邪魔にならないような広いところもあるし、見た目を優先して何か諦めるようなことはないようにしたいですね。


——人前に出るのも嫌だったという中学時代の写真を公開し、プリンセスとして表に出るまでのご自身の変化をどのように感じていますか。


かぐや 普段の自分はちっともプリンセスじゃないですし、そもそも中学時代のこともずっと隠して生きてきたんです。

〈 容姿に自信のなかった会社員→美しすぎるプリンセスに…“劇的イメチェン”に成功した20代女性が明かす、コスプレを始めて変わった心境 〉へ続く


(小泉 なつみ)

文春オンライン

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