流れ星☆ 『ゴッドタン』ガチゲンカから5年 たきうえ「見せちゃダメだった」 ちゅうえい「あってよかった」
2025年4月19日(土)9時0分 クランクイン!
■『THE MANZAI』敗退で味わった挫折 売れるために信念曲げたあの日
——今年でデビュー25周年ということで、これまでの芸人人生でターニングポイントとなった出来事をお聞かせください。
たきうえ:僕は2012年、まだ賞レースだった頃の『THE MANZAI』(フジテレビ系)です。脂の乗り切った同世代のコンビが続々と決勝進出を決める中、僕らだけ行けませんでした。毎年挑戦し続けた『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)も決勝には一度も行けなかったですが、『THE MANZAI』が始まったときは下馬評で「次は流れ星☆だ」なんて言われていたのに、予選すら通過できなかった。その時、僕の心が一度完全に折れちゃったんです。
それで「もう賞レースで結果を残すより先にシンプルに売れよう!」と、思い切って方針転換を決断。敗退した次の日にはちゅうえいをマクドナルドに呼び出して「今日から俺の漫才にちゅうえいのギャグを入れようと思う」「これからはネタ4分間を“ちゅうえいプレゼンショー”にしよう」と伝えたんです。
そこから風向きが変わりました。「渋谷La.mama」(東京・渋谷にあるライブハウス)のライブを見に来てくれたスタッフさんの目に止まり、『ぐるぐるナインティナイン』(日本テレビ系)の「おもしろ荘」に呼ばれて優勝。さらに2013年の『THE MANZAI』では決勝まで進むことができました。
それまで自分が作ったネタという作品の中にちゅうえいという異物を入れるのが本当に嫌だったんですけど、その信念を曲げたことが結果につながったので、僕にとっては大きなターニングポイントです。よく「流れ星☆って昔から芸風が変わらないよね」って言われるんですけど、全然! やってる自分たちからしたら、ネタについては途中で180度変わりました。
■ 先輩から言われた「流れ星☆のコント本当に面白くない」が転機に
ちゅうえい:もっと前、デビューしてすぐにも一つ大きな出来事があります。僕らはもともとコントしかやってこなかったんですけど、「バカ爆走!」(プロダクション人力舎が開催する若手芸人主体のライブ)に出演したときに自信のあるネタをかけて、マジでその日群を抜いてスベったんです。追い打ちをかけるように、そのライブ終わりに楽屋まで来たMCの田上よしえさんに「ちゅうえい君、流れ星☆のコントって本当に面白くないね」って言われ、それが自分たちのネタを見つめ直すきっかけになりました。
その直後、コンビがそれぞれ2本ずつネタをやるライブに呼ばれたときに「コントはウケないし、もう1本は2人で最近あったことでもしゃべってみようか」と試しにやってみたら、漫才もやったことなかったのに、コントよりウケたんです。
——え、それまで漫才やったことなかったんですか?
ちゅうえい:やったことなかったです。浅井企画に入る前に路上で活動していたときもコントしかしたことなかったのに、そのしゃべりがコントよりウケたもんだから、「自分たちって漫才の方が性に合ってるのかも」となって、そこから漫才をやり始めたんです。そしたら『爆笑オンエアバトル』(NHK総合)で結果が出せたし、他の事務所のライブで優勝もできました。だからあの田上さんの言葉がターニングポイントですね。
たきうえ:それはターニングポイントじゃなくて、たーのうえ(田上)ポイントだね!
ちゅうえい:…いい話してるのに変な加工するのやめてくれる?
■『ゴッドタン』ガチゲンカから5年 たきうえ「見せちゃダメだった」 ちゅうえい「あってよかった」
——お2人の25年を語る上で欠かすことができないのは、やはり『ゴッドタン』(テレビ東京系)※だと思うのですが…
(※2020年放送の『ゴッドタン』に出演した際、2人に修復不可能レベルの不仲が発覚。収録中にガチゲンカに発展する模様が放送された)。たきうえ:複雑ですよね…。正直、いま思えばあんな姿は見せちゃダメだったと思います。
たしかにあの放送の反響はすさまじかった。いまだにその件でイジられて僕らも芸人の性で不仲を否定せず乗っかっちゃうし、今までは『ゴッドタン』や『水曜日のダウンタウン』(TBS系)みたいな番組が好きな層を笑わせることも大切だと思ってたんです。
でも、そういうところで笑ってくれる人って、流れ星☆の単独ライブには来てくれません。反対に僕らのライブに来てくれたり、ファンクラブに入ってくれたりするファンの方は、ああいう姿は見たくなかったと思います。だからいま振り返ってみたら、テレビを通して2人でケンカするところを見せたのは、あんまり良くなかったですね。
正直な話をすると、現在のコンビ仲は普通です。夫婦みたいなもんで、ケンカする時期もあれば、普通の時期もあるって感じです。
ちゅうえい:でもね、俺は『ゴッドタン』のあれがあってよかったと思うんです。あれが、お互いそれまで溜め込んでいた不満や怒りを吐き出す場所になった。もしやっていなかったら本当に解散していたかもしれない。ああいう風になるべくしてなったんだろうなって思います。ただ、やらなくて済むならやらないに越したことはない(笑)。
■失敗しようがネタにできるのがお笑いの強み
たきうえ:ああいう姿を見せたのは失敗だったと思う。でも、お笑い芸人のいいところは、そういう失敗もネタにできるところ。あのケンカから、お互いにいろいろ思ってることを言い合うネタが生まれました。僕の副業もそうですけど、失敗しようが何しようがネタにできるんです。
——副業のお話が出ましたが、あれもお笑いに還元できるものなんですか?
たきうえ:もちろん。いま不動産オーナーをやってますが、トラブルだらけでネタにはことかきません。新築のときには14部屋中たった3部屋しか入居が決まらなくて、とんでもないストレスでした。イライラしてちゅうえいにも当たり散らしていました。
ちゅうえい:とんだとばっちりです。ムカついてコイツもろとも物件を燃やしてやろうかと思いました。
たきうえ:副業は不動産のほかに太陽光発電所もやってるんですが、発電できない雨の日はストレスを感じますね。天気が悪くてもコイツへの当たりが強いです。
ちゅうえい:そのせいで俺だけ他の人と違う視点で天気予報を見てますからね。「今日は晴れだからマシか」みたいな。
■単独ライブが今年でなぜ「FINAL」なのか理由を聞くと…
——10回目の単独ライブツアーとなる今回は「FINAL」と銘打たれていますが、これはどうしてなのでしょうか?
たきうえ:2014年に単独ライブツアーを作ってくれたお偉いさんが定年退職されるんです。「おじさんがいなくなるなら、一区切りつけようか」となりました。僕らが今年ちょうどデビュー25周年ということでキリもいいですし。
それから僕が夏休みがほしいというのもあります。全国ツアーをやってると、ネタ作りの時間まで含めてなんだかんだ1年中稼働することになります。そういうのをいろいろ加味して「FINAL」にしました。
ちゅうえい:たきうえの周りでは「『FINAL』ってことは、やっぱりお前ら解散するのか?」と言われてるらしいです。
たきうえ:そういうネガティブな意味は全然ないです! 安心してください!
「FINAL」ということでネタの作り方も原点回帰します。今まではかもめんたるの岩崎う大や、ピン芸人の赤嶺総理に協力してもらっていたんですけど、今年は久しぶりに僕1人で、みんなが最初に流れ星☆を知ってくれたときのイメージの「ザ・流れ星☆」が見てもらえるようなライブにしたいと思っています。
■流れ星☆にとって単独ライブは「港」
——今回10年目となる単独ライブツアーですが、お2人にとってどういった場所でしたか?
ちゅうえい:やっぱり、お客さんの前でしっかりネタを見せるという意味で、「自分はお笑い芸人なんだ」ということを再確認できる場所です。
たきうえ:単独ライブツアーは僕らにとって「港」みたいなものだと思っています。ちゅうえいとたきうえが1年間、いろいろなところに船出しているけど「単独ライブツアー」はその2隻が戻って来る港みたいなものです。「FINAL」ということで今回はその港を一度爆破します。
ちゅうえい:閉鎖でもいいんですけど爆破します。
——最後に、単独ライブツアーを楽しみにしている方にメッセージをお願いします!
たきうえ:なんと言っても今回で全国をめぐるツアーは一旦最後ですから、絶対来てください。「昔流れ星☆好きでした」って人もぜひ。あの頃の流れ星☆で待ってます。ちょっと老けましたが、ネタはパワーアップしてます!
ちゅうえい:とにかく生で見る流れ星☆は本当に面白いので、ぜひ会いに来てほしいです。あと、本当は仲良しなんで安心してください!
たきうえ:「仲良しなんで(取材日3/25現在)」って書いておいてください(笑)。
(取材・文:前田祐介 写真:松林満美)
「流れ星☆単独ライブツアーFINAL〜大炎回〜 supported by ナガセスッポン養殖場」は7⽉26⽇、東京・全電通労働会館を皮切りに全国9箇所で開催。チケットはローチケほかで発売中。