“死”が未来に向かって“生きる”ことに…『続・続・最後から二番目の恋』“何も起こらない”ドラマでも沁みる理由

2025年4月23日(水)9時41分 マイナビニュース


小泉今日子中井貴一が主演を務めるフジテレビ系ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』(毎週月曜21:00〜 ※TVer、FODで配信)の第2話が21日に放送された。
鎌倉の古民家へ越してきたテレビドラマプロデューサーの千秋(小泉)が、その隣家に住む市役所職員の和平(中井)と出会い、和平の家族とともに恋や友情を育んでいく大人のロマンチック&ホームコメディ。第3シーズンとなる今作は、還暦間近の千秋に定年を迎えた和平という、さらに円熟味を増した彼らの“今と未来”が丁寧に描かれていく。
今シリーズ最大の特徴は“何も起こらない”ことだろう。そんな物語の中でも、かなり異質であり、だからこそ良心にもなっているのが、長倉家の次男・真平(坂口憲二)だ——。
○真平の存在がリアリティーを高める
真平は幼い頃に脳腫瘍が見つかり、再発の可能性もあっていつ倒れてもおかしくないという“爆弾”を抱えている。そんな彼を当初は、何も起こらない物語において一定の緊張感を与えるギミック、もしくは緩やかなままのストーリーでは“引き”が足りないため、クライマックスに展開されるであろうドラマティック要素なのではないかと、ある意味“嫌な予感”の存在として思っていた。
しかし第1シーズンでは、その病のせいで自分のために生きてこられなかった真平とは対照的な、自分に正直に生きていく千秋へ惹かれていくのとともに、彼女の魅力がより浮き彫りとなる様を描いた。そしてシーズンを通して、どんな年齢でもどんな境遇でも“死”とは身近にあるもの…を象徴する存在として真平がいることが分かってきたのだ。
もし真平の病がいやらしく強調されていたり、物語を盛り上げるドラマティックな要素として消費されていたりしたら、今作はここまで多くの視聴者を巻き込むことはできなかっただろう。真平という存在は“何も起こらない”今作にとって異質でありながら、その異質さが常にさりげなく描写されることで、余計にリアリティーを帯びてくるという、視聴者をこのドラマを信頼してもいいと思わせてくれる良心でもあったのだ。
○今後の展開が気になる要素が続々
この第3シーズンでは、初期に担っていた真平の“死”のにおいが、千秋や和平の年齢が上がったことでより現実味を帯びてくるのとともに、通常であればラブコメディと食べ合わせが悪く、唐突にも思える“死”をすんなりと受け入れさせる効果を生んでいる。
だからと言ってその“死”は決して悲観的なものではなく、“死”=未来に向かって“生きる”ことであり、そんな彼らの“生き方”に勇気づけられる…だから“何も起こらない”ドラマでも沁みる仕上がりになっているのだ。
とはいえ今回の第2話も第1話同様に、長倉家の騒がしい朝食の様子に始まり、千秋と和平の夜の“さし飲み”で幕を閉じるという、一見相変わらずな“何も起こらない”物語にも思えるのだが、千秋とかかりつけ医になった千次(三浦友和)との過去には何かあるのか? 和平が勤務する鎌倉市環境協会に新たなスタッフとして加わった律子(石田ひかり)はどんな波乱を起こすのか? “熟女グラビア”にスカウトされた長倉家長女の典子(飯島直子)の行く末は? “月9”で最高傑作を作ると意気込む千秋のドラマ作りは?と振り返ってみると、今後の展開が気になる要素=ドラマがいくつも隠されている。
月曜夜の晩酌相手にも丁度いいまったりな作品もあるのだが、その実まだまだ奥深い“何か”がたっぷり待ち受けている。
「テレビ視聴しつ」室長・大石庸平 おおいしようへい テレビの“視聴質”を独自に調査している「テレビ視聴しつ」(株式会社eight)の室長。雑誌やウェブなどにコラムを展開している。特にテレビドラマの脚本家や監督、音楽など、制作スタッフに着目したレポートを執筆しており、独自のマニアックな視点で、スタッフへのインタビューも行っている。 この著者の記事一覧はこちら

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