麻生久美子(46)、松たか子(47)、板谷由夏(49)…“アラフィフ女優×年下男性”の恋愛ドラマが今ウケる「納得の理由」《過激なラブシーンも…》
2025年4月25日(金)8時0分 文春オンライン
近年の晩婚化や未婚率上昇の影響を受けてか、恋愛がテーマに扱われるドラマでも、もはや主演は20代であることの方が珍しく、30代が中心となっているが、そんな中でアラフィフ女優が恋愛ドラマのセンターに配役されることも増えている。
麻生久美子が“禁断の恋”に溺れる弁護士を熱演
4月18日に始まった金曜ナイトドラマ『魔物』(テレビ朝日系)もそんな作品の一つで、ヒロインに麻生久美子を起用し、第1話から何やら危なげな色香漂っていた。

本作は韓国ドラマ『梨泰院クラス』(2020年)を手がけたスタジオ・SLLとテレビ朝日による日韓共同制作の完全オリジナルラブサスペンスドラマで、麻生演じる主人公の弁護士が、年下の危険な魅力溢れる被告人と出会ったことをきっかけに、さまざまな意味で人生を狂わせられていくというストーリー。
麻生演じる弁護士のあやめは、男性からのDV被害に悩みながらもそこから逃れられない女性を救済する活動に熱心に取り組んでいる。一方で、自立した自身への自負があるからか、男性に縋るしかない同性をどこか自分とは違う生き物で“救い出すべき対象”と認識している節も見え隠れする。
落ち着いたトーンから繰り出される堂々とした物言いで「そこからすぐに離れなさい」と諭す麻生には一切の綻びも隙もなく、「難攻不落」、「完全無欠」という言葉を地でいく。その一方で、全てを比較的思い通りに理性的に制御してこられた強者の空論にも聞こえる。
そんな麻生が第1話ラスト、法廷に弁護士としてではなく被告人として立つなんて誰が想像しただろうか。塩野瑛久が演じる被告人・凍也との出会いによって彼女の中で封じ込められていた、諦めかけていた何かが目を覚ましたのだろうか。本作内では激しいラブシーンも描かれるようで、これからますます目が離せなくなりそうだ。
麻生は『あのときキスしておけば』(テレビ朝日系)でも、松坂桃李演じる年下男性と恋に落ちる売れっ子漫画家・唯月巴役を好演。これまた仕事でも大成功していて、それでいてとんでもなく茶目っ気があり、年下男性を揶揄いながらも彼の純粋な想いに救われ、いつの間にか惹かれていくという役どころだった。
“アラフィフヒロイン”にしか出せない説得力
現実世界では「年の差カップル」、「年の差婚」というと男性が年上のケースが圧倒的に多いだろうが、ドラマ内では自立した女性の象徴として、特にバリキャリ年上女性が年下男性の恋愛相手として度々登場する。
同じく麻生が演じた『MIU404』(TBS系)での女性初となる1機捜の隊長・桔梗ゆづる役も、男性社会をサバイブしてきた女性だった。その中でさまざまな理不尽を経験しており、それがための信念と、誰かに甘えるというよりは自分だけで解決しようとする強さと共にどこか諦めも滲ませている部分があった。
そのやるせなさは、きっと同世代のみならず幅広い世代の女性に身に覚えがあるもので、そんな何とか通り過ぎてきた、だけれども許してはいないあれこれも投影できるのはアラフォー、アラフィフ女優ならではのことかもしれない。
さらに、そんな年上女性だからこそ本来交わらなかったはずの年下男性との恋愛で本来の自分や本音を取り戻していく様に大きなギャップが生まれ、物語は加速する。
『東京タワー』(テレビ朝日系)では、永瀬廉演じる大学生・透と恋に落ちる有名建築家・詩史役を板谷由夏が体当たりで熱演していた。仕事での成功、名声、理想的な夫婦像、何もかもを手にしているかに見える“完璧”な女性が、周囲には理解されないどうしようもない孤独を共有し合えたのがたった1人、年下の大学生だけだったのだ。他の人には気付かれない自分の顔を引き出してくれる人、それをそのまま見せられる人という特別な関係性、存在は年齢や理屈や常識を超えてしまうものなのかもしれない。
映画『ファーストキス』でも、松たか子が松村北斗と夫婦役を演じ話題になっていたが、長年一緒に生活を共にし離婚を決意した夫婦を演じるにあたり、否応なしに2人の間で重ねてきた時間を説得力を持って瞬時に立ち上らせられるのは、やはり松しかいなかっただろう。
離婚することを決めた夫が死んでしまう未来をどうにか阻止しようと奔走する妻の姿が、切実さや必死さだけでなく結婚のリアルと共に描かれる本作。夢見がちではない松扮するカンナが、初々しい真っさらな“好き”とはまた違う想いから、それでもまた夫に会いたいと願わずにはいられない気持ちには幾度となく鼻の奥をツンとさせられた。
惚れた腫れたではなく、それでも相手と一緒に生きたいと願うコトコトグツグツ煮込んだ気持ちや、意図せず出会ってしまいその引力に抗えないような強火の恋も、自分1人でも立っていられるだろう大人女性だからこそ魅せられる。それが人生の酸いも甘いも噛み分けてきたアラフィフ女優たちが、ヒロインとして再び脚光を浴びている理由なのではないだろうか。
(佳香(かこ))