ミュージカル「キンキーブーツ」顔ぶれ一新…甲斐翔真「出会いで生まれる変化を丁寧に」、田村芽実「役に血を巡らせたい」
2025年4月24日(木)16時30分 読売新聞
ローラ役、チャーリー役の4人は1メートル80以上。15センチヒールのブーツを履くと2メートル前後に。「大きな4人が全員黒い服の時があって……」と田村(右)が言うと、「怖かったよね、ごめん」と甲斐は苦笑い=大石健登撮影
日本で3年ぶり4度目の上演となる人気ミュージカル「キンキーブーツ」。真っ赤なブーツを履きこなすドラァグクイーンのローラを甲斐翔真と松下優也が、靴工場で働く従業員ローレンを田村芽実と清水くるみがそれぞれダブルキャストで演じる。甲斐と田村に作品にかける思いを聞いた。(小間井藍子)
英国の田舎町で経営難に苦しむ靴工場の4代目、チャーリー(東啓介と有澤樟太郎のダブルキャスト)はローラの提案を受けてドラァグクイーンのためのブーツ「キンキーブーツ」を開発する。2005年公開の英国映画を基にしたブロードウェーミュージカルだ。
今回から主要キャストが一新され、甲斐も田村もオーディションで役を射止めた。16年の日本初演から欠かさず観劇していたという甲斐はボクシング経験者であるローラ役のために昨年から体を鍛えてきた。「好きすぎて、自分がやることはないんだろうと。今、すごく不思議な気分です」と語る。田村も自分が出るイメージはなかったという。「初演メンバーのイメージが強かった。今は別物を作るような感覚で挑んでいます」
シンディ・ローパーによる、耳になじみやすい楽曲が魅力的だ。白いドレスを着たローラが老人ホームでバラードを歌う場面は見せ場の一つ。「父親の前で思いをさらけ出す。あそこに行く前にどれだけ人生を積み上げられるかが勝負かなと思っている」と甲斐。
工場でくすぶっていたが、ブーツ開発に携わるにつれて仕事へのやりがいを感じていくのがローレンだ。「華やかな作品だと思っていたが、出演する側に回ってみるとこれは地道に生きる生活者の話でもあると感じた」と田村。「靴を作ることに高い誇りを持った工場従業員の一人として役に血を巡らせていきたい」と言えば、甲斐も「ローレンたちとは対照的に見えて、ローラもしっかり人としてもがき苦しんでいる。そうした人間味のある人たちが出会って生まれる変化を丁寧に見せていきたい」と語った。
大作への出演が相次ぐ甲斐は2月、帝国劇場(東京・日比谷)の一時休館前最後のコンサートに全公演出演した。「2代目の帝劇が幕を閉じる瞬間を見ることができた。新しい帝劇になったときに自分が貢献できるよう精進しておかなくては」と熱く語る。
映像でも活躍する田村は1〜2月、英国王ヘンリー8世の元妻6人を主人公にしたミュージカル「SIX」に出演。「男性が主役の作品が多いなかで、女性だけの作品で集客できたのが良かった」と言い、「演劇における女性の活動の場を増やすために何ができるか考えるようになった」と語る。今後のミュージカル界を引っ張っていくであろう2人に注目だ。
東京・渋谷の東急シアターオーブで4月27日〜5月18日。(電)0570・00・3337。