【インタビュー】「M 愛すべき人がいて」プロデューサーが狙った懐かしさ×一周回った新しさ

2020年4月27日(月)8時0分 シネマカフェ

「M 愛すべき人がいて」(C)テレビ朝日/ABEMA

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テレビ朝日とABEMAの初の共同制作で作られた土曜ナイトドラマ「M 愛すべき人がいて」の盛り上がりが熱い。平成の歌姫・浜崎あゆみが誕生するまでを綴った同名本を、ドラマならではのオリジナル要素を加えて製作された。ジェットコースター級のめくるめく展開と派手な演出が、視聴者の心をつかんでいる。

90年代、激動の音楽業界を駆け抜けるアユ(安斉かれん)とマサ(三浦翔平)の愛と絆を中心に描かれる「M」。スターダムに上り詰めていくアユと、支えるマサというふたりの才能を目の当たりにして、嫉妬に狂った人々が壮絶な嫌がらせ、裏切りで、彼らを追い込んでいく側面もドラマティックだ。


この激しい愛のドロ沼劇は、テレビ朝日×ABEMAの共同制作で作られた。初めての取り組みに、懐かしさと一周回った新しさを埋め込んだ、気鋭のテレビ朝日プロデューサー・服部宣之さんと、ABEMAアソシエイトプロデューサーの川島彩乃さんに、それぞれの強みを生かしたドラマ作りの極意、これからのエンタメ業界の可能性について聞いた。

90年代を生きた人には懐かしく、若い世代には新しい“ジュークボックスドラマ”

——「M」は劇的なシンデレラストーリー要素や派手な演出が、視聴者から注目を浴びています。狙ってやられていったところですか?

服部:どう作ろうかと考えたときに、脚本の鈴木おさむさんと打合せをして最初に思い浮かんだのが現代版のスチュワーデス物語でした。歌姫・アユとプロデューサー・マサ、その関係はいわば師弟関係。そこから、いろいろなものを派生させるように考えました。あとは音楽業界の光と影、スケール感も描けているので、そこが今までのドラマとはちょっと違うところじゃないかな、と思います。


川島:90年代に青春を謳歌していた方にとっては「懐かしい! カラオケ行きたい!」と思ってもらえるドラマに、逆に、ABEMAを見ているような若い方には、「こんな歌や文化があったんだ! 新鮮で面白い!」と感じるドラマになっているんじゃないでしょうか。

服部:若い世代には、一周回って新しいものに見えるんじゃないかなと思いますよね。80年代のドラマの懐かしいテイストだったり、トレンディ・ドラマ的な演出手法も、このドラマの世界にはとても似合うんじゃないかと…トライしています。僕らにとっては懐かしいけど、若い世代にとっては「ちょっと変わってるけど新しい!」みたいに見えたら面白いですよね。

——第1話だけでもTRFさんの「BOY MEETS GIRL」、や篠原涼子さんの「愛しさと 切なさと 心強さと」など、90年代を代表するヒットナンバーがかかっていて、毎話、どんな曲がかかるかだけでも楽しめそうです。

服部:ABEMAの藤田社長やABEMAチームの皆さまと打ち合わせをしていた頃は、いろいろなジュークボックスムービーが流行っていたんです。「M」も、ジュークボックスドラマのようにしたら、すごく面白いんじゃないかと思いました。いろいろな時代を彩った曲が流れてきて、いろいろな人の琴線に音で触れる、ということをポイントに置いていきましたね。


——W主演の安斉かれんさん、三浦翔平さんという取り合わせ、キャスティングの経緯も教えてください。

服部:三浦さんに関しては、ABEMAの「会社は学校じゃねぇんだよ」で熱演していたのが記憶に新しくて。松浦さんが持っていた、時代を切り開いていった力を、三浦さんがやったらすごく似合うんじゃないかな、と考えました。となると、対するアユは誰がいいんだろうと、いろいろな方にお会いして、結果、安斉さんにお願いしました。


一番決め手になったのは「M」はある種、ドラマ的にもドキュメンタリーだな、というところでした。福岡から上京してきた無名の女の子が、あっという間にマサの力によってスターになっていくお話なので、実際、このドラマの中でも、初ドラマ、初出演、初主演の安斉かれんさんが、三浦さんと出会うことで成長していく姿を全話を通して描けたら、すごく面白いな、そこに賭けてみようと思いました。安斉さんの意志の強い瞳も凄く印象的でした。

川島:おっしゃる通り、安斉さんというひとりの女性が成長していく過程は、観ていてもすごく感情移入するポイントだと思います。ドラマのアユがスターになるまでの過程を見守り、応援する気持ちになりながら、観てくださる視聴者の方がいたらいいなと思います。何より、安斉さんの歌っているときのカリスマ性のある圧倒的オーラも見どころです。



テレビ朝日×ABEMAという取り組みによる効果の最大化

——今回、地上波のテレビ朝日と、ネット配信のABEMAを掛け合わせた取り組みになりました。互いに期待していた効果は、どのようなところにありましたか?

川島:今、テレビ朝日(以下、テレ朝)さんで「アベマの時間」というABEMAの番組を放送させていただく取り組みをしているのですが、オンエアがあると地上波からABEMAにきてくださる方が増えるなど反響がすごく大きく、地上波のテレ朝さんの影響力の大きさを、凄く感じていました。


服部:一番大きい点は、持っているターゲット層が圧倒的に違う気がしています。テレ朝のドラマは、上の世代の方が中心になるので、ABEMAさんが抱えていらっしゃる若い層に見てもらえると、お互い補完できて、そこが強みになるんじゃないかなと。あとは、普段できない宣伝的なシナジーで、いろいろな展開ができるところも、すごく楽しみなところでした。

——具体的に、どのような宣伝を仕掛けていかれたんですか?

服部:普段、テレ朝だけだと、SNSや広告の展開がどうしても1パターンになりがちなんです。けど、今回はアユとマサのインスタをやっていたり、avexでの特設サイトがあったり、ABEMAさんの公式もあったりして、いろいろな方向からアプローチができています。

川島:ドラマ内に「オオカミ」シリーズなど恋愛リアリティーショーに出演していた人気メンバーが登場したり、地上波放送を見ながら「ABEMA」でのコメントが盛り上がったり、Twitter企画がトレンド入りするなど、ABEMAでこれまで蓄積された効果的なSNSやPRのナレッジを多角的に活用できていることもあり、相乗効果が生まれているのではないかなと思います。

テレ朝さんのほうは、地上波番宣や、演者さんに人気バラエティ番組に出演していただくなど地上波でしかできないことも沢山仕掛けてくださって、私たちとしてもすごくありがたく感じています。


今後のエンタメは「自分自身のタイムテーブルで見られる時代」に

——テレビ黄金時代があり、ネット主流の時代があり、今後は5G時代と言われています。目まぐるしく変わっていく中で、この先のエンタメの可能性など、どのように感じていますか?

服部:今まで、僕ら地上波は、局が編成したタイムテーブルに沿って視聴者の皆さまに見てもらっていましたけど、これからは皆さんが自分自身のタイムテーブルでいろいろなコンテンツを見られる時代です。そのときに、どういう見られ方をするか、僕らはもっともっと研究しないといけないなと。ただ、僕らは60何年もテレビというコンテンツメーカーでやってきているので、コンテンツメーカーとしての自負や誇りは持ち続けてやっていかなきゃダメだなと思うんです。ドラマ、報道、バラエティ、スポーツ、幅広いジャンルの番組をたくさん作って来た…、そのノウハウだけは、まだどこにも負けない自信があります。


川島:今は、自分で動画配信しているYouTuberなど、動画コンテンツがどんどん増えています。私たちはとにかく面白くてクオリティが高いものを提供していくことが必要かなと思っています。ABEMAは今年4周年を迎えましたが、ただ“尖ったもの”を提供するのではなく、時流に沿ったクオリティが高いものがたくさん出せている状態を、5G時代を見据えて、目指していきたいです。

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