別れの準備をしていく“サンドラ”レア・セドゥのアザービジュアル『それでも私は生きていく』
2023年4月27日(木)19時0分 シネマカフェ
本作は、ミア・ハンセン=ラブ監督自身の父親が病を患っていた中で脚本を書いた自伝的作品。親の死を意識したときに誰もが感じる無力感や恐れだけでなく、新しい情熱が生まれる可能性も描くことで、人生を愛したくなる映画に仕上げ、第75回カンヌ国際映画祭でヨーロッパ・シネマ・レーベル賞を受賞した。
解禁となった3種類のアザービジュアルは主人公サンドラの劇中見せる様々な表情を切り出したもので、35ミリフィルムで引き立つ強い色味も印象的。
大きなリュックを背負ったサンドラがドアに耳を当てる姿を捉えたのは映画のオープニングシーンで、父ゲオルグの家を訪ねた彼女は、開け方が分からず混乱しているドアの向こうの父の言葉に慎重に耳を傾けながら、優しく促していく。
頬づえをつきながら柔らかな表情で真っすぐ前を向き、うつむく彼女の視線の先には彼女が慕う老いた祖母がいるカット。
また、父の見舞いに来た施設の屋上で物思いにふける表情を浮かべる背景には、パリの曇り空が広がっている。
これらのビジュアルを通じて、物語の中で“別れ”の準備をしていくサンドラの姿も感じ取ることができるが、監督は、本作が描く“父親との別れ”について、「誰かが生きているうちから、哀悼の気持ちを感じるのがどんなことかを、この映画で伝えようとしました。ゲオルグはもうサンドラの知っている父親ではなくなっているけど、まだ生きている。精神が消えてしまっていても、彼の感性、存在といった部分は残っている。消失と存在が同時にあり得るという矛盾した動きは、私の心を大いに揺さぶる源であり、それを皆さんに感じてもらいたかったんです」と語る。
このビジュアルのうち、レア・セドゥの表情を大きく写した頬づえバージョンは、新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座ほか一部の上映劇場にて公開日初日より本作を鑑賞した方にアザービジュアルチラシとして先着プレゼントされるという(数量限定/なくなり次第終了)。
また、本作をいち早く鑑賞した各界で活躍する著名人からのコメントも到着。
『ケイコ目を澄ませて』の三宅唱(映画監督)は、「冒頭、レア・セドゥが道の向こうからやってくる。その時点でもう、彼女はすでに人生でいくつかの嵐をくぐり抜けてきたように見える」と語り、山崎まどか(コラムニスト)は、そんなレア・セドゥに「普通の女性の困難を描いたこの作品で、今まで一番柔らかくて優しいレア・セドゥに会えた。それだけで救われた気がした」とコメント。
「主人公の憂鬱な表情が素敵」という岩井志麻子(作家)は「憂鬱は分類すれば“幸福ではない”という状態だが、“幸福を求めている”状態でもある」とコメント。坂本安美(アンスティチュ・フランセ日本 映画プログラム主任)は「場所から場所、人から人へと移動する彼女の姿は、孤独と出会いの中で織り成される生のリズムをしっかりと刻んでゆく」と言い表し、劇中サンドラが見せる様々な表情や、それを演じたレア・セドゥ、さらに現代を懸命に生きようとするひとりの女性の人生を真摯に描き出した監督に対して、それぞれの言葉で賛辞が寄せられた。
『それでも私は生きていく』は5月5日(金・祝)より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座ほか全国にて順次公開。