松本まりか、SNSの長文投稿に込めた“24年分の思い”「私は簡単な言葉で片付けられない」

2024年4月28日(日)10時0分 マイナビニュース

●デビュー24年、近道は考えなかった
現在放送中のABCテレビ・テレビ朝日系『ミス・ターゲット』(毎週日曜22:00〜)で、ゴールデン・プライム帯連ドラ初主演を飾った松本まりか。「15歳でお仕事を始めて、思うようにできてこなかったという24年分の思いや経験があるから、一つひとつのお仕事をいただけることは、当たり前ではない」——そう語る松本にとって初めてのこのポジションは「じんわり、感慨深い」喜びがあるという。
松本演じる結婚詐欺師・朝倉すみれが本気の婚活を始め、それを機にジレンマだらけのラブストーリーが繰り広げられていく今作。27日放送の第2話では、自分の幸せのカタチを肯定され、村松宗春(上杉柊平)に興味を抱いた朝倉すみれ(松本まりか)は、「あなたの幸せ、どんなものか見てみたいんです」と宗春に告げ、再び会う約束を交わす……という展開に。
今回のインタビューでは、改めてゴールデン・プライム帯連ドラ初主演の喜びと共に、今作のテーマの一つでもある“幸せ”を感じること、そして度々話題を呼ぶSNSの長文投稿に込められた思いについて話を聞いた。
○「近道しようと思ったことはありません」
15歳で女優デビューを果たし、24年後につかんだ、ゴールデン・プライム帯連ドラ初主演。ドラマ発表時に「『ことの大きさ』が如何なるものか、よく理解をしているつもり」とコメントしていた松本に、改めて大役がめぐってきた心境を聞いた。
「『わーい』という喜びではなくて、じんわり、感慨深いというか。『そういえば、夢見ていたな』と思い出しました。20年以上前に思い描いてから時間がかかったけど、こうやって巡ってくるものなんだなって。『連ドラの主演がやりたい』と、目標に掲げ続けてきたわけじゃないんです。『思い返せば、そういえば』というぐらいで。若いうちから主演を張れる俳優さんもいる中、私はここに至るまでに24年かかってしまいましたが、近道しようと思ったことはありません。自分に足りないものや未熟なものを知って、人を知って、世の中を知って、ぶつかって。かけがえのない経験ができた24年でした。ここがゴールだとは思ってはいませんが、ただ自分に必要なものを追い求めてやっていたら、『ゴールデン・プライム帯連ドラ初主演』という場所にもたどりつくんだなと、そんな感慨深さがありました。もっと早くたどりつける道もあったかもしれないけれど、甘んじなくてよかった、変な道にそれなくてよかったと思います」
○「人は皆、抗えない運命を何かしら背負っている」
松本が演じているのは、その美ぼうと巧みなテクニックで数々の男を手玉に取ってきた結婚詐欺師の朝倉すみれ。悪事で荒稼ぎする男たちにターゲットを絞り、狙った「的」を決して逃さない“ミス・ターゲット”として暗躍するダークヒロインが、突然、結婚詐欺から足を洗って本気の婚活を始めると宣言。お金があれば幸せになれると考えているすみれと、お金がなくても幸せになれると考えている宗春。そんな反対の価値観を持つ2人が、不器用ながらにピュアに惹かれ合う様子が描かれている。これまでの打算的な疑似恋愛と本気の恋との違いに直面しながらも奮闘するすみれの姿は、チャーミング。松本は、視聴者に、すみれをどう受け取ってほしいと考えて演じているのだろうか。
「人は皆、抗えない運命を何かしら背負っていると思うんです。すみれは、その生い立ちや環境から、結婚詐欺をするしかなかったという運命をたどったわけですが、悪人だけをターゲットにしていたりと、彼女なりの正義感や“心の清潔”は汚されていないまま。悪環境の中でも、正しさを持って生きていれば、人はきっと魅力的に見えるし、幸せをつかめるようになる。すみれが皆さんにとって、大切なことに気付かせてくれる存在になれば」
○「何の武器も持たず真っ裸で勝負している、潔いドラマ」
数々の作品でインパクトを求められる役も多数演じてきた松本が演じる、ピュアなダークヒロイン。作品自体も、昨今では珍しいほどの王道ラブストーリーとなっているが、その魅力とは。
「本当にひねっていなくて、恥ずかしいほどに王道を貫いています。今の時代、視聴者の皆さんのドラマを見る感度が高くなっていて、世の中のエンタメとしては「普通じゃないもの、新しいものを作ろう」という流れがありますが、『ミス・ターゲット』は、往年のラブストーリーを貫くかのように、ド直球。でも、王道の作品だからこそ、普遍的に人の心を打つことができるんじゃないかと。時代が流れても五感が変わらないように、うれしいと思ったり、悲しいと思ったり、感動したりする心もまた、変わらないと思うんです。肩肘張らずに見られるドラマでありながら、知らないうちに泣いたり笑ったりできて、もはや一周回って“新しさ”さえ感じます。何の武器も持たず真っ裸で勝負している、潔いドラマです」
●SNSの投稿に数日かかることも
○「人とのつながりがいかに幸せなことなのか実感」
松本の魅力を感じられる場所の一つが、インスタグラムだ。出演作やファッション誌の美しいオフショットのほか、思いを込めた長文の投稿も人気を呼んでいる。そんなインスタグラムで、松本は昨年9月の誕生日、「幸せというものにも初めて感じることができたかもしれません」と投稿していた。「幸せを初めて感じた」という言葉が気にかかり、松本が初めて感じた幸せの正体を聞くと、“人とのつながり”だと教えてくれた。
「こうやって取材を受けていることも、ただのお仕事ではなく、心と心を交わし合う時間だと思っているので、“幸せ”なんです。何かを人と深く理解し合えたり、一緒につらいことを乗り越えたり、喜びを分かち合えたり。人とそういう思いを共有できることを、すごく幸せだと感じます。これまで、人と関わる前に、まず自分自身を成長させなきゃいけない、世の中のいろんなことを理解しなくちゃいけないと思っていたから、とにかく一人でやっていこうという思いが強かったんです。でも、長い時間、孤独を体験したおかげで、今、人とのつながりがいかに幸せなことなのか実感できています。そう思えるようになったのは、突然でした。もしかしたら、じわじわと変化していたのかもしれないけど、ヘレンケラーが水にふれて『Water』と叫び、物に名前があるという概念に気付いたように、いろんなピースが一気にぶわっと重なる瞬間があったんです。本当に最近のお話です」
○「やっぱり私は簡単な言葉で片付けられない」
松本のインスタグラムでは、出演作や出演CMの告知も、長文で投稿されることがある。松本が一つひとつの仕事にどんな情熱を持ち、どう向き合ったのかが伝わる、エッセイのような投稿も見どころの一つだ。「そんなふうに言っていただけて、本当にうれしいですし、報われます」と深々と頭を下げながら、松本は、仕事への姿勢、投稿へのこだわりについて語る。
「インスタグラムは、短い言葉でいいとか、長いと読まないとか重いと言われることもあります(笑)。確かにそうかもしれませんが、やっぱり私は簡単な言葉で片付けられなくて。15歳でお仕事を始めて、思うようにできてこなかったという24年分の思いや経験があるから、一つひとつのお仕事をいただけることは、当たり前ではないと思っているんです。長文を書くにはものすごく労力がいるし、時間がかかる。私にとって、言葉はすごく大切なもので、こうやってインタビューをさせていただいたあとも、自ら原稿を確認します。誰かに影響を与えてしまう、誰かを傷つけてしまうかもしれない、責任のあるお仕事であると自覚しているので、一語一句、なるべく語弊のないように、誤解のないようにしたいんです。そうすると、インスタグラムの投稿一つするにも、何時間どころじゃなく、何日もかかることがあります(笑)。だから、あまりたくさんは更新できなくて。言葉や表現に対してこだわりすぎて、時間がかかってしまったり、お仕事をご一緒する方々にご負担をかけてしまうことは悩みでもあります」
○「3話までは、騙されたと思って見てください」
最後に、ドラマに出演する俳優に対する最も王道でド直球な「ドラマを楽しみにしている方へメッセージを」という質問を投げかけると、「この質問にお答えするのが、一番難しいんです」と、変化球の答えが返ってきた。「一つひとつのお仕事をいただけることは、当たり前じゃない」——つい先ほどの言葉が、上辺だけじゃなく、心からそう思っていることが実感できた瞬間だった。松本は、考えながら、ゆっくりと言葉を紡いでくれた。
「『ミス・ターゲット』は、回を重ねるごとに面白くなっていくドラマです。私は、実は『愛の不時着』を見始めたとき、『こういう王道、別に好みじゃないんだけどな』と5話まで耐えられなかったんですけど(笑)、『騙されたと思って、見続けてみて』と言われて見たら、6話から一気にドはまりしちゃって。『ミス・ターゲット』は、1話・2話ももちろん面白いのですが、お話がドライブしていく3話までは、騙されたと思って見てください。ピュアな大人の純愛が見られる貴重なドラマだと思うので、日曜の夜に楽しんでいただきたいです」
■松本まりか
1984年生まれ、東京都出身。2000年に『六番目の小夜子』(NHK)で連続ドラマデビューし、2018年『ホリデイラブ』(テレビ朝日)で注目を集める。近年はドラマ『向こうの果て』(WOWOW)、『それでも愛を誓いますか?』(ABCテレビ・テレビ朝日系)、『東京、愛だの、恋だの』(Paravi)、『雨に叫べば』(Amazonプライム・ビデオ)で主演を務め、ドラマ『トクメイ! 警視庁特別会計係』(カンテレ)、映画『キリエのうた』などに出演。現在、ゴールデン・プライム帯連ドラ初主演となる『ミス・ターゲット』(ABCテレビ・テレビ朝日系)が放送されている。公開待機作に、映画『湖の女たち』(5月17日公開予定)がある。
■スタイリスト:後藤仁子
■ヘアメイク :AKEMI KIBE(PEACE MONKEY)

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